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その38 人事評価における心理面での基本的な帰属のエラー

  ずいぶんとサボっていまして、3週ぶりのブログ発信となります。
今回のタイトルに含まれる心理面での基本的な帰属のエラーは、ちょっとイマイチなタイトルでして、基本的な帰属のエラーが心理学で出てくる用語なので、わざわざ「心理面での」をつける必要はないのですが、どの学術領域で使われている言葉かを明確にするために付けてみました。
 
 人事評価で明確な評価軸がある組織ではこのようなことを考える必要が無くて、例えば、A作業の担当者の評価軸が「A作業が予定通り完遂できた 〇」であれば何の疑いもなく、予定数と結果数を比較して○、×をつければ済んでしまいます。やや面倒なのが、前回ご紹介しました行動主義による行動評価のケースです。

 原因と結果の等式で 行動(顕在化)+能力(?)=スキルという不良設定問題をお示ししましたが、今回はちゃんと解の出せる 
行動(目に見える)×能力(目に見えない)=成果(目に見える) という等式のお話をします。目に見えない不定数が一つだけですので、この式であれば目に見えない「能力」の算定が出来るわけです。これだけであればそれほど悩む必要はないのです。しかし、成果A、B、Cがあった場合にはどうでしょうか。
計算結果としての能力A、B、Cがそれぞれ1点、2点、3点だった場合、皆さんが自己評価をしたときに選ぶ点数は3点(最大値)ではないでしょうか。ご自身が管理職で彼の評価点をつけようとしたときにはどうでしょうか。3つの成果A、B、Cの源泉となる能力評価は平均点の2点だろうと評点をつけることも妥当性があるように思えます。

解決しにくい問題

 これは社会的動物といわれる人間の性質に由来するもので、これらの判断が間違っているとか合っているとかいう領域では語れない、解決しにくい問題なのです。

自己奉仕傾向とヒューリステック

 自己評価の前者は自己奉仕傾向(セルフ・サービング・バイアス)といわれるもので「成功した時は自分の能力や努力が大きな要因と考え、失敗した時は環境や他者が要因と考える」傾向のことです。1点、2点、3点の点数のうち3点は自身の努力の結果ということで評点としては3点を採用して、1点2点は、「難しい作業だったからな」などの理由で採用しない。これも選択の方法としてはあり得る話です。
 後者の評価者が評点をつける時の特徴は、ヒューリステックといわれるもので、「大体はうまく物事を解決することが出来る方略や直感的で解決の道のりが早い方略を好んで利用する」傾向のことを言います。評価方法の訓練をうけたり、評価基準すり合わせ学習したりすることで、評価という多くの情報と判断が必要な作業を出来るだけ脳の負担を回避しようとします。実際の評価では評点の選択だけではなく、評点を検討する過程の中で、その成果の難易度や環境面の制限事項、当事者がその成果を出すための関与の度合いと役割などを考えなければなりません。人間は複雑な思考による脳のリソースの損耗を回避しようとします。

基本的な(原因)帰属のエラー

 このようなヒューリステックが「基本的な帰属のエラー」の一つの要因になっていると考えられています。基本的な帰属のエラーとはある事象に対する人の判断(原因帰属)は大きく内的要因と外的要因に分けられます。人はより推測が容易な人のパーソナリティや考え方にその原因を求める傾向が強く、社会情勢、集団属性など情報量が多く判断のために脳のリソースを多く消耗する外的要因には向きにくいという人間の思考の特性です。
これ以外でもアンカー効果や単純接触効果など、人事評価に影響を与えそうな要素があります。
今回は人の行動・成果を観察して、分析して、関係性を考える行動評価では、このように脳のリソースを大量に消費しながら時間をかけて評価をしているというお話をしてみました。
 
じゃあ、どうすればいいんだよという話になると思いますので、次回お話できればと思います。
 
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参考資料
森津太子. OUJ『社会・集団・家族心理学』.放送大学教育振興会.2020.
 
 

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