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【相続#5】負の財産を相続するとどうなるのか①「相続債権者のターン」


相続債務の承継

 こんにちは。行政書士の大野です。
 2025年が始まって2週間ほどが経ちました。この冬は9連休という企業もあった中で、またすぐに3連休だったので、生活のリズムを整えるのに少し戸惑いますよね。

 さて今回は、ある相続において、すべての財産を相続人のうちの1人に承継させるという遺言があった場合、負の財産(債務)の債権者は、誰に対して債務の履行を請求すればよいのかをみていきたいと思います。
  

民法第902条の2

 平成30年の民法一部改正において新設された民法第902条の2は、相続分の指定がある場合の債権者の権利の行使について規定されたものです。これは、最高裁判所の判例(最判平21.3.24、民集63巻3号427頁)の中で明らかにされ、その実務を改正法で明文化したものとなります。
 
 
 この判例における登場人物と背景をざっくりとみてみましょう。
 
 🔹被相続人(故人)
 🔹相続債務の債権者(相続債権者)
 🔹相続人は子2人
 🔹相続財産は、プラスの財産とマイナスの財産
 🔹遺言により、2人のうちの1人に対して、残されたすべての財産を相続 
  させるという指定があった
 
 この場合、相続債権者は、誰に対して相続債務の履行を求めればよいのでしょうか?
 すべての財産を相続した相続人の1人に対して、債務の履行を求めればいいのでしょうか?

債権者の立場だったらどうなるのか

 相続債権者としては、相続分の指定(この場合、相続人のうちの1人にすべての財産を相続させるという指定)は自分の関与なくされたものであるから、遺言により相続の指定がされたからといって、それに従わなければならないのはおかしいんじゃないかという話になりますよね。
 
 裁判官は、判例の中で、
 ▪ 相続債権者は、(遺言により相続分が指定されているとしても)
 それぞれの相続人に対し、法定相続分に応じた債務の履行を求めることが 
 できる

 ▪ 各相続人は債務の履行を求められたときにはこれに応じなければならな
 い
し、相続債権者に対して、指定された相続分に応じて相続債務を承継し
 たことを主張することはできない

ということを明確化しました。
 
 ただし、裁判官は、次のようにも判示しています。
 
▪ 相続債権者の方から相続債務についての相続分の指定の効力を承認し、各
 相続人に対し、指定相続分に応じた相続債務の履行を請求することは妨げ
 られない

 
 すなわち、相続債権者が遺言による相続分の指定があったことを承認し、その指定相続分に応じて相続人に返済を求めることはできる(影響を与えない)としました。
 

参考

(民法)第九百二条の二 
被相続人が相続開始の時において有した債務の債権者は、前条の規定による相続分の指定がされた場合であっても、各共同相続人に対し、第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてその権利を行使することができる。ただし、その債権者が共同相続人の一人に対してその指定された相続分に応じた債務の承継を承認したときは、この限りでない。
 

 本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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