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【相続#4】お墓について考える

 こんにちは。行政書士の大野です。
 先日、士業による市民相談会に参加してきました。
 行政書士になってから、様々なご相談を受ける中でも、やはり、相続、遺言に関するご相談は、身近な心配事として、耳にする機会が増えました。


それぞれの【お墓事情】


 その中でも、【お墓】に関するご相談は意外と多く、100の家族があれば100通りのお悩みがあるのかもしれない、と実感しています。
 
 【お墓】は誰かの所有物という意識がないことから、誰が相続するかを決めておく必要性を感じない人が少なくありません。
 そこには、【お墓は相続税のかからない祭祀財産であるから】という理由もあるかもしれませんが、お金と人間関係が複雑に絡み合っているケースが多々見受けられます。
 
 例えば・・・

 ■ 身寄りのないきょうだいが亡くなったが、自宅にご位牌を置くのには抵抗がある

 ■ 亡くなった身内のご位牌やご遺骨を握りしめて離さない親戚がいるが、その人が勝手に遺棄してしまうのではないかと心配だ

 ■ 相続財産もお墓も独り占めしているきょうだいがいる
 

 一度こじれてしまうと、もやもやした気持ちがふくらんでいき、当事者同士では解決の糸口が見つけることができないというケースが多いように思います。


お墓を引き継ぐって、誰が決めるのだろう?


 まず、お墓は誰が相続するのでしょうか?
祭祀財産であるお墓を相続する人は、祭祀継承者となった人です。
 
 次に、祭祀継承者は誰がなるのでしょうか?
 祭祀承継者を決定する際には、以下のいずれかに該当する人がいないかを確認していきます。

✅被相続人が指定した人
✅慣習でお墓を管理することになっている人
 
 このいずれにも該当する人がいない場合は、家庭裁判所で祭祀継承者を決定することとなります。(民法第897条)
 調停を申し立てて当事者同士の話し合いで解決することもできますし、最初から家庭裁判所に申し立てて、審判により指定される方法もあります。
 
 審判を申し立てた場合、家庭裁判所で承継候補者の中から被相続人との関係や居住する場所などを考慮して、審理の上で決定されます。
 
 このような役割を果たすために祭祀継承者が置かれているのですが、実際に祭祀継承者になると、かなり大変なことも多いと思われます。
 
 そして、祭祀承継者に指定されると、拒否することはできません
 

お墓の面倒をみることは、相続財産で考慮されるのだろうか?


 お墓の管理をする祭祀承継者が決まりました。
 しかしながら、お墓の管理は費用もかかるため、祭祀承継者が決まったとしても、その人に負担になる場合もあります。
 その場合、どのように考慮されるのでしょうか。
 
 まず、お墓は祭祀財産にあたるため、金融資産や不動産等の相続財産とは切り離して考えられます(そのためお墓は相続税の課税対象にはなりません)。
 
 ところが、祭祀継承者となる人が、遺産分割の際に祭祀継承者としての義務を加味するよう求めることがあります。お墓の管理費やお墓への交通費などの支払い、あるいは墓地の管理者との連絡などの手間などの負担が発生するためです。また、墓地で自然災害の被害を受ければ、お金だけの問題ではない様々な対応も必要となることが考えられます。
 
 祭祀承継者にはこれらの負担が発生するため、遺産分割の際に多めに現金をもらっておこうと考える場合があり得ます。
 もっとも、遺産分割協議の段階で、祭祀承継者が負担する費用を考慮して相続財産の分割をするということは少なくありませんし、協議の段階で考慮することは自由です。
 
 しかしながら、高等裁判所の判例(東京高裁決定昭和28年9月4日)にもあるように、祭祀料などを祭祀承継者以外の相続人が分担する義務を負うわけではないので、裁判になった場合にはそれらの費用は考慮してもらえないということに注意が必要です。
 
 また、遺産分割協議が成立する間際に、祭祀承継者となった人が遺産分割をやり直すように求めることも考えられます。一度成立しそうな遺産分割をやり直す場合、なかなか成立しないことが多いので注意が必要です。


元気なうちに、お墓のことを決めておこう!


 お墓のことが決まっていないということは、相続開始後にこれらのことが争いとして想定されるということを意味します。
 
 そのため、残された家族がこれまで通り仲良く生きていくために、そして祭祀承継者となった人が安心してお墓の管理を行っていくためには、被相続人ご本人の意思表示による指定や配慮が、とても重要になってきます。

 意思表示とは【遺言書にお墓のことも書いておくこと】です。
 
 遺言書の作成に不安がある方は、わたしたち行政書士がサポートいたしますので、安心して頼ってください。
 
 本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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