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【エッセイ】心中未遂をして救急搬送された日

九月、心中未遂をしました。海に奪ってもらおうと思ったのです。結局、海に入ったのは私だけだったのだけど。

その日は一日ハイプロンOD(薬を規定量以上飲むこと)をして健忘が酷かったから、あまり詳しくはかけないし、勝手に記憶が補完されている所もありそうなので話半分に聞いてくれたら嬉しいです。

事の発端は一つの電話。
「もうさ、一緒に死なない?」電話主は酷く慌てていて、言葉はたどたどしく要約するとそのような内容だった。
私は連日のアルバイトで精神を摩耗していたこともあり、その言葉を聞いて涙が止まらなかった。私にもずっとあった希死念慮が、涙となってこぼれおちて「それ以外ない、そうしよう」と返した。泣きながら電話越しに話しかけて、何を言ったかも覚えていなかったけれど、何か幸せな心地だった。
電話主は私の古くからの友人。小学生の頃中学受験をするために入った塾で出会った女の子。あの頃はその子ともう二人いて、四人で仲良くしていたっけ?苦しい家庭環境、勉強の中でも唯一四人で話してる時間が楽しかった。
もう電話主のAちゃんとしか関わりは無いけれど、苦しくて美しい時間だった。
Aちゃんとはなにか不思議な縁があった。というのも、私は家庭環境の都合上、中学受験を小学六年生の夏に辞めるに際して塾を一度やめている。それから、携帯は持っていなかったから今後会うこともないだろう、と寂しく思っていた。
だから、中学一年生の時、駅で出会ったのは運命だと思う。そして、何となく縁が切れることも無く、明日、一緒に死のうとしている。
サイレースとハイプロンをごちゃ混ぜに飲んでその日は眠った。起きてもふわふわした心地のままだった。希死念慮がおさまることもなかったし、私は死ぬって決めていた。この時、Aちゃんがもう希死念慮が収まったことに気がついてればと今でも思う。意味の無い四日間の入院は本当につまらなかったから。
Aちゃんは私が起きてすぐに電話をくれて、死ぬ前に東京のメンタルクリニックに行きたい、と言っていた。私は本当にこれから二人で死ぬと思っていたから最後に心残りを無くすための行動だと考えて快く了承した。
例え、東京から地元、地元からメンクリに行くために東京、東京からまた地元近くの海に行く羽目になろうと、死ぬんだからお金なんてどうでも良いと思っていたから。
裏切りとは思わない。ただ、死ぬ気がなかったことに気がつけなかった私が悪いと思う。Aちゃんからしたら、勝手に死のうとした身勝手なやつだと思われているだろう。
でも、少しだけ恨み言を許してくれる?
私、あなたのこと、ずっと苦手でした。
今回心中するに当たって言えることはそれだけ。私は、好きな人には生きていて欲しい、と思っている。心中できるってことは、私にとってそんなに大切じゃない、ということ。
生死の狭間は美化される。今この瞬間も美化され続けている。美化される前にここに書いておこうと思う。
私はあなたのこと苦手だった。自分勝手なところ、五万借りようとしてきたところ、死にたいというくせに私の死にたいは否定するところ。他にもいっぱい!!
だから、一緒に死のうって言葉を利用したの。だから、同じ穴の貉だねって言ったの。裏切りとは思わないよ。だってお互い利用しあっていたから、私はあなたを恨まない。

メンタルクリニックに行ったあと、すごく黙った後、海に行きたいって言っていた時、やっと死のうと思ったんだと思って嬉しかった。これで最後だと思ったから私はスマホで海までの行き方を調べて、そんなに無いお金を使って海までの電車に乗った。だから、海近くの駅について、どこに泊まろうかなんて言い出した時、本当に嫌だった。
星が綺麗だったこと以外、この時の思い出は何一つ綺麗じゃない。結局泊まる所なんてなくて、海岸で私は遺書のために原稿用紙を買ったけど、あなたは生きるための食べ物を買っていたっけ?

恨まないって言ったけど嫌味くらい言わせて。もしこれを読んでいたらごめんね。でももうどうせただの友達には戻れないもの。

私は死にたくて死にたくて、Aちゃんと話すのが嫌で別の人に電話をしたらAちゃんが、誰に、なんのために電話をするのか咎められた。私はもうその一言で、Aちゃんは私と死ぬ気がないことに気がついて、海岸に向かった。今考えると、嫌がらせだったかもしれない。Aちゃんの目の前で死んでやろう、と思った。
九月の海は生ぬるかった。海が私の体温を奪ったみたいに、海の方が暖かいような気がした。妙に冷静で、海岸からザバザバと海の奥へ誘われているような拒否されているような気がする。波が私を吐き出して、また飲み込んでを繰り返している。私を完全に飲み込みそうになった時、近くの岩が私にあたった。入院したあと足を見てみると、切れた後とアザで酷いことになっていたのも、この岩場のせいだろう。
遠くからAちゃんが警察を呼んでいる音が鮮明に聞こえた。許せなかった。自分の死ならまだしも、私の死さえ遮ろうとする傲慢さ。それよりも死ぬのが怖かったからかもしれない。私は岩場にしがみついて、Aちゃんの方に体を向けていた。波は強かったけれど、岩場を伝っていけば帰れる距離だった。死に損ないで警察に救助される恥だけは避けたかった。
結局、自力で上がったのも虚しく、私は救急車に乗せられて病院に搬送された。薄れる意識の中で胃洗浄しなきゃな、という救急隊員の声だけは聞こえていた。
結局、四日間救急病棟で入院する羽目になってそこからは面倒なことを言われまくって過ごした。
Aちゃんは親に何も知られずに過ごしたらしい。

まあ阿呆な誘いに乗った私もまた阿呆なわけで。恨みきれないのも、己への罰として受け付けなければならないという気持ちがあるから。

最後に、自殺をするな、と私は言えない。これを読んでいて、もし今から死ぬという人達がいたら、一つだけ伝えたいことがある。
死ぬなら一人の方が良い。
誰かと死ぬというのはとんでもないリスクがある。私のパートナーは裏切らない、という自信があるのは良い事だけれど、絶対に一人の方が気兼ねなく死ねると思う。あなただけ、片方だけ生き残ってしまう場合もある。あなたはその分の罪を背負う覚悟を持っている?

自殺を止めたい、とは思う。でも希死念慮なんて簡単に消えない。私も毎日死ぬ事を考えている。もし一人ぼっちだと感じるのなら、私を思い出して欲しい。私もあなたに思いを馳せようと思う。死にたかったら死ねば良い。死んだって、あなたの全てが無くなったことになる訳じゃない。もっと残したいものがあるなら死ななければ良い。死んだように生きるのも、生きるように死ぬのも良い。

生死は自由にお互いに存在することを忘れないように生きていこうね!

※胃洗浄は、胃に鼻から炭を入れられます。普通に辛いです。オーバードーズはやめましょう。

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