農村部の未来。結婚をしない人たちと「つながりの創出」。
「結婚しない人ばかり」
帰省のたびに、父や母から聞かされてきた言葉だ。
近所に住む人たちも、親戚たちも。男も女も。
40歳で独身は当たりまえ。
それでもいつかは、と思っていたけれど、その人たちが今は50歳になっている。
もちろん子どもはいない。
私の実家には、わずかながらだが「田んぼ」がある。
父が元気なころは、兼業で農業も行っていた。
現在は高齢のため作業ができず、近くの農家さんに委託をしている。
その農家さんも、ご主人は70歳。
50歳手前の息子さんがいるが、結婚はしていない。
健康状態もあまりすぐれないようだ。
「このままじゃ、近隣の田んぼは、どうなってしまうのか…」
父は深刻そうに下を向く。
かつて農家の担い手だった人たちは、次々と専業・兼業をやめている。
息子たちは実家を離れ、その多くが都市部でサラリーマンをしている。
僕もその1人だ。
そんなかつての農家さんたちは、皆同じように、70歳になる農家のご主人に農作業を依頼している。
その面積、約100町歩(ちょうぶ)。
1町歩は、約1万平方メートルだから、100町歩は「100万平方メートル」となる。
ちなみに東京ドームは、約5町歩。
100町歩は、「東京ドームの面積の約20倍!」ということになる。
実家の近隣にある、約東京ドーム20個分の田んぼが、その担い手を失うことになりそうなのだ。
ことの深刻さが、ようやく僕にもわかってきた。
「若い人たちが田舎を離れる。それも原因の1つだ。
でも最大の課題は、結婚しない人たちが多すぎることだと思う」
この父の意見に、母も強く賛同する。
「昔は、地域に仲人がいたのよ。その人たちが、息子や娘同士をつないでいた。でも、そんな人はもういない」
時代は変わったからね、と母はため息をつく。
市役所では「婚活イベント」などを企画しているようだ。
しかし、その成果はあまり聞かない。
確かその運営者も、いまだ結婚をしていないと聞いたことがあるような。。
出産や子育てには、国は大量の予算をつぎ込んでいる。
でも、結婚の支援には、そんな話はあまり聞かない。
民間で行う「結婚相談所」のサービスもある。
しかし、それが成り立つのは、たぶん都会だけだろう。
農村部では、入会金や月額利用料を払えない家も多い。
「農村ではいまだに、『家と家のつりあい』を気にするところがある」
そういいながら、父は眉間に皺をよせる。
そんなことを言っている場合でないのは、わかっている。
だけど、いざ自分の息子が、と思うとどうしてもそういう考えになってしまうんだよ。
だから、若い人たちは田舎を去っていくんだろうね。
「ふれあいというかね、つながりがなくなったよね」
話題を少し変えながら、母は再度ためいきをつく。
近所づきあいもない。
親戚づきあいもない。
新型コロナ以前から、それは深刻だった。
それがわかっていながら、皆が目をつぶってきた。
課題に正面から向き合ってこなかった。
「ずっとごまかしてきたけど、そろそろ限界かもしれない。どうなってしまうんだろうね」
この母の言葉の後、大木家には長い沈黙の時間が続いた。
このような話は、僕のふるさとだけではないだろう。
多くの農村部などで、そこに住む人たちが抱く思いに違いない。
交流人口づくり。
地域のPR。
起業支援。
子育て支援。
そして、結婚の機会づくり。
それらのキーワードの1つに「つながりの創出」があるだろう。
その「つながりの創出」が、あらためて必要なのだと再認識させられる、両親からの話でした。
それは、実は僕の得意分野でもある。
僕に残された時間を、そういうことに使うのもアリなのかもしれないな、と思う話し合いでした。
今後の展開に続く…
※ちなみに画像は、実家の田んぼです。面積は約5反。