春芽吹いた瞼

ブーツ蹴り上げて 割り砕いたガラス窓

腰を上げたのは何も

嫌気が差したばかりじゃない


うちの狼が死に体で

濁らせた眼に映るものはなく

涎さえも渇いた口からは

細い細い糸がゆらりと昇る

皺のない脳みそはぜんまい仕掛けに成り下がり

花の匂いの嗅ぎ方さえ忘れてる


小さな窓から

ハツカネズミ操縦している

大人になろうとして

自分の正体見失ってた


多分その時から

何度も窓ガラス打ち叩いている右手

左手で庇いながら


音の光が差して

気付けば見上げてた

細い細い糸の先

春の匂いがした

春の匂いがした

その先のハナミズキの気配が見えた

遠い地から見るハナミズキの



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?