【観劇感想】新ミュージカル「スタミュ」スピンオフ team柊 単独公演「Carribean groove」

IMMシアターにて、新ミュージカル「スタミュ」スピンオフ team柊 単独公演「Carribean groove」を観劇させて頂きました。

5年ぶりのCarribean groove、本当に楽しみにしていました。私にとってスタミュは人生における特別な作品の1つで、そこから出会えたスタミュミュの景色も全てが宝物です。
いつものことではあるのですが、自分が良かったと思う作品を必死に言葉にしようとすると急に軽々しく聞こえたり偉そうな表現になってしまったりして、どうしたら良さが伝わるのだろう…と今回もだいぶ悩みながら書いています。この記事を投稿するのが千秋楽からだいぶ経ってしまっている時点でご察しです。

ただ本作は間違いなく新しく、煌めきに満ちた作品でした。

1部。円形劇場でない会場で初めて観るカリグルは、本当に綾薙学園のステージを観ているようですごく胸が踊りました。新たな舞台装置やお衣裳のもと再構成されたカリグルの世界はとっても魅力的で眩しくて。ミュージカル作品として見た時にもキャラクターと話の筋と楽曲のバランスが洗練されていて、スタミュのこともキャラクターのことも何も知らなくても楽しめるパートに完成されていました。

せっかくなのでひとりひとりについて少しだけ。

牧田さん演じる辰己琉唯のクリス。
終始、牧田さんの辰己が演じるクリスだ、という説得力に満ち溢れていました。無邪気で、純真で、誠実で、とても優しい。どうしても先代と比較した印象になってしまう部分もありますが、ただそれだけじゃなくて、クリスは小さい頃からこうして生きてきたんだろうな、それが今の彼の生き様なんだろうなと言うのが1本筋ですごくよく見えて素敵でした。彼が海賊として再び海に戻ることは必然なのかもしれません。作品ごと、公演ごとにものすごく進化している牧田さんの辰己、次回も本当に楽しみです。

小椋さん演じる申渡栄吾のアルベール。とっても楽しみにしていました。過去の誓いと今の不安定な揺らぎにこちらまで揺さぶられ、それが発露するTTTでの感情のエネルギーに痛いほど刺されました。彼の仲間に向ける眼差しと祖国を見つめる瞳がどうしても忘れられません。栄吾は役作りに思考を伴わせるタイプだろうなと勝手に思っているのですが、ブログを拝読した際に小椋さんもすごく考えながら栄吾とアルベールにアプローチしたことが伝わってきて。カロリーも高い役だと思うのですが、小椋さんが栄吾で、栄吾がアルベールでよかった。1部のアルベールから重い感情を手渡される分、2部でいきいきしている栄吾を見てなんだかすごく安心しました。

個人的な好みとして、船を降りる時に1度客席に降りる演出が好きでした。海はステージ。舞台から降りる時、彼もまた仲間に背を向ける。この時の眼差しもはっきり覚えています。目のお芝居がすごく印象的でした。

藤岡さん演じる虎石和泉のティエラ。新スタミュミュの時から、藤岡さん演じる虎石が時折見せる真剣な表情がとても印象的で。カリグル(曲)の時の真っ直ぐな視線とか、team鳳のアヤショウを見ている時のどこか悔しさの滲んだ表情だとか。今回も普段は飄々と笑う彼が、心からミュージカルが大好きでいつだって真剣で真っ向からこのカリグル向き合っているというのがお芝居の端々から強く伝わってきてすごく素敵でした。ティエラは「生きてさていればなんとかなる」と少し大人で兄貴分的な存在ですが、それでも遠すぎず彼らの傍で時に背中を押す距離感がなんとも絶妙で、かける言葉にはたくさんの思いやりが乗っていて。歌もダンスも引き出しがたくさんで、彼のHEROISM++が聴ける日が楽しみです。願わくばいつか、FACE-OFFも。

新谷さん演じる卯川晶のアンリ。臆病な少年のひとつの成長が短い時間の中でも存分に伝わるお芝居ですごく心が揺さぶられました。この綾薙学園という地を選んだ卯川だからこそ、「喜び」になるために陸で王様になることを選ぶアンリの決意には彼の本来持つ信念や力強さのようなものが見えてきて。2部を観て改めて、卯川のための役柄だったなと再認識しましたし、本当にそこを繊細にすくい上げて演じてくださっている印象でした。他の作品で拝見したときも感じたのですが、新谷さんはなにか1歩を踏み出す葛藤と決意のお芝居が本当に素敵で。彼の卯川でいつかユメツボミが観れたらなと、未来を願わずにはいられませんでした。

中本さん演じる戌峰誠士郎のジョバンニ。
すごかったです。 1公演は母(アニメ履修済)と観劇したのですが、絶賛していました。ピッチがズレない歌唱に、葛藤、苦しみ、突き詰められたキャラクター性。戌峰誠士郎が演じているということを技術を持ってして表現できることに中本さんのポテンシャルと努力を突きつけられたような気がしました。2部を観ていたら、戌峰くんのファンは戌峰くんの出演作を見に行く度にこんな感じで普段との温度差で揺さぶられ続けられるんだろうなとそんなことまで考えるほど。アモルテとのやりとりはまた違ったコントラストがあって、キャラクターでありながらリアルな感情の揺れ動きがすごかった。戌峰誠士郎という役を通さない、中本さんのジョバンニも見てみたくなりました。

1月の新スタミュミュを観て感じていたこととして、新キャストの皆様は、原作に依拠するだけでなく「そのキャストが演じるから」こそのキャラクターを作り上げることにすごく力を入れてくださっていた印象があります。それが今回、「役者→キャラクター→演じる役」という三重構造の旨みを持つ劇中劇に乗った時、その説得力と求心力がものすごくありました。

そして作品を支えていたのが、ジョルジュ、アモルテ、ピエールのサブ3。今回からウィッグ付きになり、御三方のお陰でより作品の深い面を見ることが出来たと思っています。

ジョルジュ。アフタートークで徳田さんが「レミゼみたい」と仰っていてとっても共感しました。健人さんのジョルジュは、大衆を先頭で導く勇ましさと、静かな激情が同居しているような、とっても熱い男でした。ピエールに向ける視線が切なくて痛くて優しくて、辛かった。彼の行く末は知っていたけれど、それでも幸せを願わずにはいられない存在。切実に、彼に戦いの後の国を見て欲しかったです。

アモルテ。以前から柊木さんがスタミュが大好きということを存じてたので、パスステにご出演されていた時スタミュミュもいつかは…と思っていたところでのカリグルの参加、とっても嬉しかったです。ジョバンニと対峙した時の飄々として何もかも見透かしているような危うさ、でもふと消えてしまうような掴みどころのなさ、魅力的でした。生命力が高そうですごく良かったです。きっとどこかで生きているんだろうな。ジョバンニという役に別の角度からスポットライトを当てていたのが彼だったと思います。素敵でした。

ピエール。こちらもパスステぶりの新納さん。年齢設定が上がったこともあり役柄への印象もだいぶ変わりましたが、アルベールにとってクリスとピエールは、一緒に祖国を去った者と、去った祖国で生きてきた者。どちらとも関わることでそこに新たに生まれる対比が美しかったです。TTT内でのジョルジュとのやりとりや、最後のクリスとのやりとりなど、切実な苦しみや訴えが毎度違う形で届いてきて、繰り返し揺さぶられるものがありました。

よかったことをただ言葉にしたいだけなのですが、なんだか偉そうに聞こえてしまったら申し訳ないです。配信同時視聴で伺えたお話や舞台に乗っていない範囲のキャラクターやストーリーの考察も書き綴りたいところなのですが、終わりが見えなくなってしまいそうなので今回はこのあたりで。

ラストの「Starship Runway」、どうしたらこんなに文脈が乗るんでしょうか。この作品の最後をこの曲が飾ることで、改めて素敵なカンパニーで魅力的な作品なんだと再確認できました。作品の支柱になっているアンサンブルの皆様含め、このキャストの皆様で本作を拝見できて改めて幸せに思います。とても愛おしい幕引きでした。

打って変わって2部。楽しくてあたたかい、彼らの時間。歌に、ダンスに、言葉のひとつひとつにたくさん心を照らしてもらった気がします。

何より大きいのは柊先輩の存在。この後のストーリーの布石にもなるような1幕でした。柊先輩がひとりひとりについてコメントを残すシーンを観て、柊先輩が指導者であったことは、彼らにとってこの学園での大きな幸運で運命だったのだなと思いました。丸山さんの柊先輩、厳しいだけでなくどこか慕いたくなる優しさが滲み出るす素敵な柊先輩ですごく大好きです。あと余談ですが、客席芝居の時に改めて燕尾制服ってすごいかっこいいなと思いました。衣裳さんのシルエットのこだわりを感じます。本当に素敵。

わたしは「スターライツ・シンフォニー」の歌詞が大好きなのですが、次のステージでこの新しいteam柊が歌った暁にはこれまでとまた違った側面でこの歌詞を受け取る事ができそうです。2ndで柊先輩の卒業を前にした時の、team柊と柊先輩の関係がとても楽しみになりました。

アニメ3期が終わっても、スタミュの楽曲はいつだってわたしの日常のすぐそばにあります。日々たくさんの力をくれる大好きな曲たちです。でもスタミュは「ミュージカル」なので、どの楽曲も感情の昂りや揺れ動き、歌うまでのきっかけがあって。劇場でそのストーリーを重ねた上で聴く楽曲からは手渡して貰えるものがとてつもなく多い。

いつもと聴いているのは同じ歌詞なはずなのに、その日の劇場空間が生んだものと合わさって伝わってくる、音楽がこんなに色鮮やかに変化して見えるのがミュージカルなんだなと、スタミュミュを見る度に楽曲が舞台に上がる醍醐味を感じています。

去年までスタミュミュやカリグルはわたしにとって記憶の中のものでしかなくて、あの時あの場所で見た景色が最後という気持ちで大切にしてきました。でも今年、新ミュージカルという形でまたこうして出会う事ができ、演劇の楽しさをスタミュミュを通して味わえたことが本当に夢みたいでした。そして千秋楽で発表になったカリグル、あの時の会場の熱は確かに覚えています。それからなんだかずっと夢を見続けてような感覚です。それでいて来年も約束されているんだから、本当に幸せですね。個人的に2ndがこれまでのスタミュミュの中で1番演出や楽曲が好きで思い出深い公演なので、新しい描き方が楽しみでなりません。

思い返してみれば、なんだか心躍る「再演」にたくさん出会えた2024年。劇場に足を運ぶようになって10年近くですが、未だに新しい演劇の可能性に出会っては子供のようにはしゃぎ続けています。少し気が早いですが、来年もそんな出会いに満ち溢れていたらいいな。

改めて、素敵な航海をありがとうございました。
いつも心に、Carribean groove!
また来年、必ず。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集