【観劇感想】東洋空想世界「blue egoist」※ネタバレなし
THEATER MILANO-Zaにて東洋空想世界「blue egoist」を観劇させて頂きました。
事前情報のない作品を1人でも多くの人に観てもらうためにネタバレなく書こうと思っています。ただ、そうするとあまりにも出ている情報が少ないという壁に当たり、堂々巡りに陥っています。難しい。
結論から言ってしまえば、劇場でそれぞれが受け取って持ち帰るものが全てな気がしています。
体感してください、と言いたいです。
本作で感じたものを言葉にしようにも、そこには私の経験や環境や作品との出会いに基づく価値観やエゴが乗ってしまうからです。
今の世の中ではある意味、感想が作品を作り出します。それが批判であっても、賞賛であっても。
この感想もきっと無意識下でわたしのエゴがたくさん詰まっているので、なんとなく聞いて貰えたら幸いです。
私の所見として、好きな人はたぶんすごく好きだし、逆に全くのめり込まない人もいると思います。共感できるキャラクターがいるかもしれないし、全くいないかもしれない。作品を自分自身の生活と切り離したい人というよりかは、フィクションを通して自分の考えと照らし合わせることが好きな方におすすめしたいです。
この後者に当てはまるわたしにとっては希望で、すごい作品と出会えた感覚でした。観たあと、自分の中の激情に火をつけられた感じもありました。人生の中で大切な1本になったと確信するくらいには、本当にこの作品が大好きです。
この作品は、実態が分からないままTwitterで告知され、歌舞伎町タワーの前でお披露目し、楽曲が公開され、ほとんどが明らかにならないまま開幕しました。
客席にいながら、どうして今日、わたしは劇場に来ているんだろうかと考えました。「何」を観に来たのか、問われているようにも思いました。
もちろん色々な理由はあります、演劇は好きだし、ミラノ座にも来てみたかった。私の中で松崎史也さんの演出、ナカサチさんのお衣裳、和田俊輔さんの音楽が揃えばそれだけで来るには十分でした。
ただ、改めて作品を観て、お披露目の動画を見返して気づくのは、確かにその「華」に惹かれてここにいるということです。(noteを書きながら人の表現を借りるほどダサいことは無いのですが、「華」というのは、史也さんのパンフレットでの表現を借りています。)振り返ってみれば、今回のキャストの6人はそんな「華」を体現するのにうってつけの皆様だったなと思いました。なによりも作中の文脈にこの6人であることの説得力がありました。もちろんパフォーマンスも。六人六様がそれぞれの方向で持っている強い個性が物語の動力にもなっていました。
そしてフィクションでありながら、そんな「華」の持つ痛みを伴うような要素が本作にはあります。そしてそれを何も知らされず、美しい「華」に惹かれて触れにきた私たち観客も、等しく痛みを伴うこともあるかもしれません。
ただこれを演劇として、フィクションとして舞台上から声を届け、紡いでくれたことをわたしはすごく希望に感じました。それは自分との対話を生んでくれるだけでなく、私が漠然と演劇や表現に対して考えていたことに対する1つの答えをくれたようにも感じられたからだと思います。
「風刺」「リアリティ」「問題提起」という言葉などで形容するのは簡単ですが、それだけではないファンタジーとしての密度も、役者の皆様の体重の乗った印象的な楽曲やセリフもたくさん詰まっていました。
ただ繰り返すように、これは私から見た作品の一部にすぎなくて、本当に観客の数だけ感想がある作品だと思います。わたしはわたしの持っているものとひとつひとつ照らし合わせて観ていくような感覚で、この作品を体感したにすぎません。
何を書いてるのかよく分からなくなってきてしまいました。し、全然本質には触れられていないので何を言ってるのかもよく分からないと思います。ただフィクションから影響をたくさん受けて、とにかく考えることが大好きなわたしとしては、この作品を通して「考えること」を選択して、そしてそれを大切にしてくださる人が1人でも増えるなら、それは素敵な事だなと思っています。でもこれも、私のエゴです。堂々巡り。
演者の皆様のことを書き出すとネタバレ一直線なので、簡単にクリエイター陣の皆様のことを。小沢さんのセリフ選びはとても秀逸で、すごく大好きです。ダークな雰囲気の中にもコミカルなエッセンスがあり決して重苦しくならずに進むのが心地よいです。史也さんの演出は本当に俯瞰しようと思っても毎度ながら感情を持っていかれますし、本当に悔しいです。こんな演劇が作れるんだと、客席にいると口角が上がりながらも嫉妬心すら覚えます。今回は阿部顕嵐さんのディレクションも加わっているとの事で、演出はより細かいところまで本当に楽しく拝見しています。和田さんの音楽、ナカサチさんのお衣裳もどこひとつとってもわくわくするものばかりですし、Alexandra Rutterさんのパペットが本当に美しいです。このパペットとそれぞれの演者の操演も素敵なので、ぜひ体感していただきたいです。福澤さん含むREXさんの振付も度肝を抜かれる瞬間が沢山ありました。あと史也さんの作品でよく拝見する、スタッフの皆様のお名前が細かい役職まできちんと舞台上に映像として乗るのが本当に大好きです。
あとこれは事前に知りたい方もいらっしゃると思うので書いておきますが、観劇を予定されている方で、激しい光の点滅が苦手な方がいらっしゃいましたらご注意ください。
東京は12月1日までです。大阪は12月6日から。
初日の配信も24日までアーカイブがあるようです。
どうかこの作品が1人でも多くの人に届いて、無事に千秋楽を迎えられますように。
作中のことに関しては本当に書きたいことが山積みなので、ネタバレ記事も書きます。ゆっくり。
どんどん回数を重ねたらこの今の感想もまた変わるかもしれません。
この作品が好きな人も、合わなかった人も、この同じ世界に触れた色々な考えが知りたいです。私たち観客は劇場を出て、それぞれが街の中に散っていく。けれどもこの作品で6人が邂逅したように、観客の私達もこの作品を通して出会えているんだよなあ、とも思います。それにきっと、「違うもの」に触れて自分の中に生まれるものがあると思うので。
今はただただ、あの世界のことを考え続けたいです。