【観劇感想】舞台「桃源暗鬼」-練馬編-
あけましておめでとうございます!天王洲銀河劇場にて、舞台「桃源暗鬼」-練馬編-を観劇させて頂きました。
年始早々に体調を崩してしまい、やっと本作での観劇初めができました。今年も劇場にたくさん足を運んで、素敵な演劇とたくさん出会って、自分の糧と喜びと学びに繋げられたら嬉しいです。
そして今年も観劇記録はしっかり継続できるように頑張りたいと思います。
そんなわけで、新年1作目は『桃源暗鬼』です。舞台化第2弾となる今回の練馬編。原作でもかっこいいバトルと印象的なセリフで読む度に胸が熱くなる大好きなエピソードです。
新しいキャストの皆様はもちろんのこと、ストーリーのスピード感とテンポ感、かっこいいアクションやギャグの塩梅全てがバランスよく、何度も気持ちが昂る素敵な作品でした。
本作は今夏アニメ化も控えていて、CVなど最新情報が次々発表になっています。私はもちろん声優さんの演技にリスペクトがある2.5次元ミュージカルも素晴らしいと思うのですが、アニメ化より先に舞台化する作品でしか感じられない俳優の体重の乗り方がたまらなく好きだったりします。原作から作品が立ち上がった実感がすごく強くて、舞台化の醍醐味をより強く感じられるからです。今作もキャラクターたちが舞台上で生き生きと躍動する姿が本当に魅力的でした。
声というのは思っていたよりも役の印象になるんだなあと言うのが今回の新たな気づきでもあります。
以前に別の2.5作品で拝見した俳優さんの演技が私の好みとはあまり合わないな〜と感じていたのですが、今作で拝見した時にはすごく自然で、印象が大きく変わりました。
それで感じたのは、以前拝見した際は演技の比重がきっと「声」に置かれていたのかなということ。いい声なんだけれどもどこか上滑りに見えてしまったのがすごく残念に感じていたのですが、まだアニメ化していない分、声まで本人の解釈が乗る今作の演技は感情と声がしっかりと繋がって感じられました。
良くも悪くもアニメ化がメディアミックスとして大きくなりすぎてしまうとそちらが演技の「正解」になってしまう部分はあると思いますが、舞台化で個々の演技がこれもまたひとつの正解になる瞬間を感じられて嬉しかったです。
そして今年の脚本は畑雅文さん。進撃ミュと本作で観劇が続いていることもあり、改めて畑さんの描く脚本の抽出力は素晴らしいなと実感するばかりでした。
簡単な改変ですが印象的だったのが、神門と四季がその正体を認識する瞬間。原作だと四季は神門と知り合う時に変装しているので、初めて四季の姿を見た神門が「ナツ君?」と呼びかけた時に振り返ってしまう、という構成でしたが、舞台は変装しておらず素顔で接しているので、現場にいた「ナツ」に「一ノ瀬四季?」と聞いて振り返ってしまう、という変化になっていました。神門の「呼び掛けに反応して欲しくない」という感情を上手く引き継いだままセリフがアレンジされていて、すごく鳥肌が立ちました。脱帽です。
そして演出と殺陣。いつものごとく、たくさんワクワクさせられました。1幕も2幕もほんとあっという間ですごくすごく楽しかったです。 様々な技法で再現される血蝕解放とバトルシーンは本当に魅力的で。屋上での戦い、鎌、透明化、翼などと非現実的な能力が様々な表現方法で再現されていって、その中で竹村晋太朗さんの殺陣振付が相まって終始とてつもない迫力でした。特に真澄さんの透明化の演出、テンポ1つズレたら終わりという演出上の緊張感と、潜入という物語上の緊張感が上手く重なっていてめちゃくちゃに好みでした。月詠さんの「逆位置」の映像の出し方も凄くかっこよかったです。アンサンブルの皆様も本当にバトルの演出を沢山支えていてとんでもなくかっこよかったです。無陀野VS月詠の柱や血蝕解放のサポート、神門の銃や矢颪の翼など……ずっと誰かしらが舞台上で動き回って支えていて本当におひとりの支えなくして成立しない作品だと思います。原作でスピード感のあったあの戦いが本当に漫画を読むように次々と展開していって、口が開きっぱなしでした。
かなり高さのある舞台美術だったので、1階2階3階とそれぞれの高さで見ると視界が大きく変わるので、また違った魅力があると思います。舞台装置の上段と下段、上手と下手、階段の使い方もすごく印象的でした。深夜の最期、とっても好きな演出でした。足掻いても努力しても1番上まで登れないという切なさと、それなのに深夜の最期を照らす照明が皮肉なくらい美しかったです。鬼が主軸であるものの、人間らしさが詰まっていた彼のことをどうにも嫌いにはなれない。武子さんの演技と相まってとても胸に迫るシーンになっていました。
言葉で言い表せないくらい本当に全てが素晴らしいので、是非劇場で体感していただきたいです。
そしてやはりこれなくしては本作は語れないのが、立花裕大さんのローラースケート。本当に素晴らしかったです。特に今作は原作の好きなセリフも好きなバトルも存分に体感できて幸せでした。アイスホッケー経験者と言えども陸と氷はだいぶ違う部分もあると思うのですが、大好きな無人さんのローラースケート×傘という異次元のバトル方法をこんなにリアリティを持って感じられるのは立花さんの演技と経験があってこそなので、本当に頭が上がりません。私の中でこの表現を実現してくださってこそ、この舞台に足を運ぶ楽しみが増すみたいなところがすごく大きいです。
そして今年も漆原先生の熱意と愛の詰まった感想を楽しく拝読して、改めて素敵な作品だなあと思うばかりです。言い方が適切ではないかもしれないですが、原作者さまがこんなに舞台化を愛してくれてるのは原作ファンとしても、演劇ファンとしても劇場に足を運ぶ何よりの担保になりますし、文章の中でどんな立場でこの作品に出会った人の事も拾い上げてくれるあたたかさに涙が出ます。
私が原作の桃源暗鬼の好きな部分のひとつとして、言葉の力をたくさん感じることができるという点があります。個性が豊かな登場人物の数だけ価値観があるので、そこには常に対話が生まれていて、そのやりとりからわたし自身も鼓舞されたり反省したり突き刺さったり、大好きなセリフが無限にあるくらい「言葉」がすごく印象的な作品です。
そして舞台という媒体はその言葉の持つ力というのを改めて感じることの出来る媒体でもあると思っていますし、そこに乗る温度感や感情というのは劇場空間を用いることで強く伝播することを知っています。漆原先生の紡ぐ言葉を演劇という場所で味わえたことがわたしにとってはこの上ない幸せの経験だったので、先生がこうして演劇の魅力を実際に感じて言葉にしてくださることが嬉しくてなりませんでした。舞台を見て原作の好きな部分を反芻できることもまた贅沢な経験です。いつか、華厳の滝も、その後も叶えば嬉しいなあと思います。
全ての舞台化を原作者に肯定して欲しいと言いたいわけではありませんが、それでも2.5次元ミュージカルがこうして原作と舞台が互いのリスペクトの元に素敵な作品になればなぁと思うのです。昨年末に『推しの子』の2.5舞台編を拝見したのでそれでより感じる部分があるのかもしれません。
友人を誘って観に行く予定もあるので、感想を聞くのもすごく楽しみです。素敵な作品で2025年の幕開きを飾れたことを心から嬉しく思います。千秋楽まで無事に駆け抜けられますように!