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King Gnuの曲の不気味さの出どころと、霜降り明星との類似性

この間、↓のようなnoteを書いて、

J-POPを変えると言われている二組のうちのヒゲダンについて書きましたが、今回はKing Gnuについての感想です。


曲こわっ!

もちろんラジオでほんのり聞いたりはしていたんですが、腰を据えて聞き出したのは最近の『Teenager Forever』からでした。

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その時の印象は、後に書く「違和感」も少し感じてはいたとはいえ、このMVのファーストシーンはレッチリの『Under the bridge』をなんか思い出すな~くらいなものでした(該当部分から再生できます↓)


その後、今「繊細な歌い出し」でお馴染みの『白日』をしっかり聞いて「なんじゃこの曲は!怖っ!」となったのでした。

実際に

この曲はおそらくかなり繊細に作らていて、それがさらに怖さを演出するんですが、ドラムが入ってくる25秒あたりまで出だしを聞いてみましょう。

どうでしょう。ピアノも綺麗だし声も儚げで、確かにしっとり良い感じですよね。

ただ、気付かないでしょうか?

この曲、ボーカルはシャッフル(タッカタッカのリズム)でハネているのに対して、ピアノがイーブンに聞こえます。

「いや、ピアノ頭で打ってるから別におかしくなくなくない?」と、最初は僕も思ったんですが、合間に入る合いの手とボーカルはなんだかピッタシ一緒じゃないように聞こえます。

実際は3連符の上に乗っているんだけどそれでもボーカルとは何だか別のベクトルで進んでいるような。とはいえ破綻の直前で止まっていて、「人間っぽさ」の範疇では収まっているかな、でも「何だか気持ち悪いな」という感想でした。


野性か知性か

King Gnuについて、曲とバンドをちゃんと知る前は『「エレカシの宮本さん直系であるボーカル・井口さん」による「野性ぶん回し」バンド』だと勝手に思っていたし、前述の事にしても、バンドのトラックの上でそういう人が自由に歌っているものなんだと思ってました。

後から知ったんですが、フロントマンである井口さんとギターの常田さんは藝大のご出身らしく死ぬほど音楽IQが高い。それを聞いて納得したのと同時に、ああなるほど全部計算なのかと、このバンドへの怖さが確かになった瞬間でもありました。

この『白日』はここ数年で僕が聞いた曲の中でも「一番意味わからん進行の曲」の一つでした。コードもそうだし、展開もなんというかボヘミアンラプソディを地で行ってるなと思ったのを覚えています。サビに入ると一転してシンプルなバンドサウンドになるので、それまでの違和感が全部吹き飛んで忘れてしまう。ある種、麻薬みたいな曲だなこれ!

ファンの方々はどう思ってるのか知らないんですが、多分パブリックイメージとしては僕が最初に書いたように、なんか触れるとヤバそうなアンコントローラブルな人がいるバンドって感じじゃないんだろうか。

ただ一枚皮をはいだら、もののけ姫のアレみたいな感じでとんでもない音楽エリートが顔を覗くんだけど、またやっぱり違った顔になる。知性の見せ方が巧妙です。

そして知性の上に乗っかっている野性だからこそ、ケモノ的な宮本さんと違った、より深い「怖さ」を感じます。

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音楽第7世代

お笑いコンビの霜降り明星ってみんなご存じだと思うんですが、あのコンビは元々フリップ芸人の粗品さんが、せいやさんという、愛嬌もあって「最強の動くフリップ(揶揄じゃないです、悪しからず)」を手に入れてトップを取ったお二人です。

King Gnuの作詞作曲は全てギターの常田さんがやっておられるようで、このバンドも霜降りのソレに少し近いなと思いました。

先ほどの野性と知性の駆け引きというのは井口さんという個性があったから初めて成立したものだと思います。常田さんは喋り方もキャラクターも見た目通りのクールな職人気質な方のようだし、やはり井口さん抜きのKing Gnuは想像できないように思えますね。メディアに積極的に露出するのも常田さんじゃないというのも面白い。

常田さんは様々なプロジェクトもやっていて、King Gnuもその一つとしてプロデューサー的な目線が強いのかもしれません。井口さんという稀有なキャラクターに"歌と顔"を担当させて、自分は自分のことに専念する。すごく乱暴に言うと、ある種ボカロ文化に近いのかもしれない。

この動き方は実は今の時代出来そうで出来ない新しいことだったりするんだけど、それはまた次の機会に。

ーーーーーーーー🚗🚗≡3ーーーーーーーーー

ヒゲダンもKing GnuもJPOPのこれまでを次に進めるようなバンドです。前者は抜きによって、後者は作り替えることによって。

日本人の音楽リテラシーは、ここ3年程で爆発的に上がりました。ちょっと前まで言葉の良さしか語ってなかったのに、今やアレンジがどうとか、携わったミュージシャンがどうとかいう話をしています。(それでもまだアイコン的にしか捉えておらず、多分アメリカに比べるとまだ行き切ってない)

作る方にはそれ以上の"知性"が必要になって来たなと思ったお話。同時に、人と作ることでしか起こり得ない奇跡の話でした。

僕もプロデューサー的に動いて作ったこの曲も聞いてくれると嬉しいです!


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