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温泉は枯渇するのか?
2022年11月29日(火)放映された
NHKクローズアップ現代「ニッポンの温泉に異変!?」など温泉の枯渇化を取り上げた番組が増えてきました。
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個別にみると温泉の湯温が下がったり、湯量が減ったり、出なくなったりする温泉は存在します。
ではすべての温泉が枯渇の危機に瀕しているのでしょうか?
結論から言えば、火山性温泉は適切な使用をすれば枯渇することはないが、非火山性温泉は使い続ければいつか枯渇します。
ご自分の好きな温泉が枯渇する可能性があるのかを知るには、温泉ができるメカニズムを学ぶことが大切です。
温泉は火山性温泉と非火山性温泉に大別されます。
「非火山性温泉」には、
① 深層熱水型温泉
②割れ目系循環型温泉 2種類があります。
※地球の中心部に向かって100m掘ると約3℃地温が上昇します。
これを地熱勾配といいます。
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地殻の熱流量は小さく、加熱の速度が非常に遅いので、地下深部に長期間にわたって滞留した水だけが非火山性温泉になることができます。
これが「深層熱水型温泉」です。
① 深層熱水型温泉
「深層熱水型温泉」は貯まっていた温泉を使用しているので、ペットボトルのお茶を飲み続けるのと同じでいずれ無くなります。
深層熱水型温泉は主に、太古に土砂が堆積したとき一緒に閉じ込められた水「化石水」です。
数百万年以上も水の循環から離れて地下に溜まっている水で、平野や盆地など、堆積層の厚いところで見いだされます。
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化石水が自然地熱で長く温められてできた非火山性温泉は、もと陸水(注1)だった「深層地下水型温泉」と、海水だった「化石海水型温泉」に分けられます。
堆積層に動植物(有機物)が閉じ込められると、それらはバクテリアなどの作用によって分解され、天然ガス(炭化水素。ほとんどがメタン(注2))になります。
このガス成分が、深層地下水型温泉に含まれていることがあります。
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a)深層地下水型温泉:茶や黒に色づき、成分の薄い温泉が多い。
b)化石海水型温泉:塩分濃度が高く、泉質はナトリウム―塩化物泉。
(注1)陸水:湖、沼、池、ダム湖、渓流 、河川、温泉、湿地、河口域、
地下水、雪氷など、陸に存在するあらゆる水で、塩分濃度の低い淡水。(注2)メタン:もっとも簡単な炭化水素。無色・無臭、可燃性。
② 割れ目系循環型温泉
この温泉も循環している以上の量を使用すると枯渇する可能性があります。
岩盤の割れ目を通って循環する比較的新しい天水も、ゆっくりと地下深層部を流れ、地熱で温められた場合、温泉が生じる可能性がある。
これを「割れ目系循環型温泉」と呼びます。
(c)割れ目系循環型温泉…成分の薄い温泉が多い。
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「火山性温泉」
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火山性温泉は雨水の一部が水路(断層)を通じて地下深くに浸透し、地中の熱源(マグマ)によって温められ、温泉として再び地表近くに上がってくるサイクルで成り立っています。
温泉の元になる雨水が浸透しているので適正に使えば枯渇することはありませんが、このメカニズムが生み出す以上の温泉を汲み出すと
①湯量が減る(自噴しなくなる等)
②泉質が変わる(塩化物泉から炭酸水素泉になるなど)
③泉温が下がる の順番で変化が現われてきます。
収入が10万円の人が毎月15万円の消費生活を続ければ貯金が減り続けるのと同じで、地下の温泉の構造が変わって衰退の坂を転がり始めます。
別府温泉の場合は降った雨の15%程度が50年の時を経て温泉になると言われています。
限られた温泉資源を適切に使うように心がけて地球の恵みを次の世代に継承していきたいですね。
NHKクローズアップ現代では番組の最後に「モニタリング」の重要性を指摘別府・鉄輪にオープンした「地獄温泉ミュージアム」を見学した、鉄輪の老舗ホテル「おにやまホテル」の女将上月明美さんに「これからいかに温泉を継続的に長く皆さんに癒していただける、それをこれから先、何世代も考えていかないといけない」と語らせ、「湯水のごとく」ではなく、限られた資源としての温泉。お湯につかって思いを巡らせてみませんか。と締めくくっていました。
別府では2016年から温泉資源を次の世代に継承するためのモニタリング活動として「せーので測ろう!別府市全域温泉一斉調査」を市民参加型で行っています。
別府市は「日本一の温泉資源と文化を守り、育て、次代に引き継ぐ」ために「温泉マネジメント計画」を作成しました。
モニタリングの充実や市民参画型の温泉の保護等の活動などにより100年後も豊かな温泉文化を享受できることを目指しています。
由佐悠紀 別府温泉博物館理事長(京都大学名誉教授)
別府温泉の地学的変化-科学的データに基づく温泉資源保護について-
別府では明治時代から温泉の過剰掘削による湧出量低下が問題になりデータに基づいた規制をしてきた経緯があります。これまでの歴史と展望を解説します。
おまけです。 有馬温泉も枯れる?!
火山がないのに高温の温泉が湧く「有馬温泉」は非火山性の温泉のなかでも特異な存在ですが、日本三大古湯の有馬温泉も枯渇するのでしょうか?
神戸大学の巽 好幸教授(高等研究院海共生研究アライアンス長)によれば
「プレートが老いれば、まず有馬温泉は枯れます。
といっても2500万年先の話です。」だそうです。
詳しくは「有馬型温泉の謎」(ほとんど0円大学 )をご覧下さい。