第1話 俺は懲りていないのだろうか
46歳の誕生日に、人生で二つ目の会社を設立しました。So Good Groupといいます。
我ながら、懲りない男だと思います。一度やって、もうこういうのは、やめよう。って思ったのに。
どういう訳か、中学生ごろから、早く東京に行って、社会人になって、仕事がしたいな。こんな学校の勉強とか、意味ないしって。周りに対して、「俺は先に行くぜ」って。妙な対抗意識のようなものを抱えて生きてました。
事業に成功して、お金を稼いで、かっこいい男になって、自由に生きるんだって、どこかで思ってて。なんというか、ちょっと屈折した、キザな子供だったなって思います。
99年末に、孫さんが六本木で「これからはネットの時代だ。起業家よ、立ち上がれ!」って感じに、盛大にアジってましたね。ヴェルファーレに集った結構な数の集団が、異様なテンションでおかしくなっていて。
寒い年末なのに、妙にねっとりした夜でした。
若さの勢いって、根拠のない自信。思いこみの強さ。捨てるものの少なさ。ですよね。
僕は結婚こそしてたけど、俺がやったら絶対成功する。今やらないと一生後悔する。って真剣に思ってました。はい、真剣に。
当時インターネット業界の総本山みたいな存在になっていた、ネットエイジの西川社長に、起業志望の同僚4人でお会いする機会がありました。
会って5分くらいで、「君たちみたいな人たちを、待ってたんだよ。ぜひやろう!」って叫ばれまして。(注意:今思うと、きっと西川さんは、会う人みんなに、似たようなことを言っていたんだと思います。)
痺れましたよ。僕の勘違いと、思い込みは加速しました。
ところが困りました、決まったのはただ、オレ起業します。ってだけで。どんな事業をやるか、どんな課題を解決したいか。何もなかったのです。
ビジネスモデルとか、アメリカでの事例とか、たくさん研究して。最初にこれだ!と思いついたのは、「Food GOGO」という名前のサービスです。その後の出前館。今でいうUber Eatsのようなサービスですね。
ランチに行く時間を惜しんでネットサーフしてた自分たちが、その時一番欲しかったサービスでした。
このオフィスにいる20人のうち10人はきっと月に10回使ってくれるだろう。だから、市場規模はこうだ!そうだ、これは革命じゃないか!
今説明すると恐ろしく安易ですが、本人たちは真剣そのものでした。はい、真剣そのもの。
次は、ユーザー調査。知り合いのツテで、渋谷のレストランの若いオーナーさんにお会いして、僕らの計画をお話ししました。この時の風景と、彼の言葉は、鮮明に覚えてます。
「お前ら、商売ナメんな。ネットだかなんだか知らんが、そんな甘ったるい気持ちで飲食業界に入ってきたら、ケツの穴の毛まで、むしりとってやる」
あまり覚えていませんが、僕らがチャリンチャリン、とか、ビジネスモデルがー、とか、変なことを口走ってしまったのかもしれません。ただ、僕としては、とてもこういう人たちを、お取引先にしたくないな。それに俺、そんなに毛深くないしな。と思ったことはよく覚えてます。
若気の至りなんて、賞味期限が短いもので。すっかりネット圏外のリアルなビジネスの方々の壁と、不寛容さと、「商売」っていうものの重さにやられた僕たち。とってもナイーブでした。
ある日、西川社長をつかまえて、「あのぅ、僕ら、起業っていう、手段が目的になってしまってませんか?それでいいのでしょうか?」って、相談をしました。
「え、アメリカは皆そうだよ!それが新しい時代だ Yo!」
にっこりと言い切った西川さんは罪が重い、、、もとい、偉大でしたね。
(ちなみにその後、共同創業者となる武藤さんは、現Uber Eats社長です)
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