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古き良き時代のシモキタ|映画『ざわざわ下北沢』

サブカルの聖地
世界で最もクールな街
音楽の街
演劇の街
古着の街
カレーの街

さまざまな異名を持つ、通称「シモキタ」こと下北沢。

市川準監督『ざわざわ下北沢』は2000年に公開された作品です。

まだ都市開発が進む前の「古き良き下北沢」が映し出され、ノスタルジックな気分に浸れます。

2000年代初頭の下北沢といえば、隠れ家みたいなジャズ喫茶マサコやCHICAGOの古着、スズナリで演劇、トリウッドで観た自主映画、本多劇場、ヴィレヴァン、DORAMA、ピーコック。

いろんなことを思い出します。

2013年に小田急線が地下化され、反対の声もあったものの下北沢駅前は再開発が進みました。

2022年5月には旧線路跡地を利用した「下北線路街」が完成。生まれ変わったシモキタは、若者が集う街として再び賑わいを見せています。

『ざわざわ下北沢』のキャストが豪華すぎる

映画『ざわざわ下北沢』の主演は原田芳雄。その他キャストも下北沢を愛する日本映画界の名優が総出演しています。下北沢在住の柄本明はもちろん、妻の角替和枝さんも。

それぞれ短い時間の出演ですが、24年前の作品だけに皆さんお若く、一人ひとりの存在感が抜群。すでに亡くなられた方もいらっしゃいますが、当時の豪華な共演が見られる貴重な作品です。

おもな出演者を紹介していきます。

原田芳雄:九四郎(舞台役者)

出典:Amazon

生年月日:1940年2月29日
没年月日:2011年7月19日(71歳没)
出身地:東京府東京市

長年にわたり個性派俳優として活躍。2011年7月16日公開の『大鹿村騒動記』では、アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞しました。プレミア試写会には満身創痍ながら、車いす姿で舞台挨拶に登壇。最期まで役者魂を見せました。

北川智子:有希

出典:Amazon

生年月日:1979年4月23日(45歳)
出身地:大阪府枚方市

1999年に市川準監督の映画『大阪物語』でデビュー。『ざわざわ下北沢』で第12回山路ふみ子映画賞新人女優賞受賞。2007年にプロサッカー選手の巻誠一郎と結婚し、二児の母に。女優活動は一時引退しています。

小澤征悦:達也

出典:Amazon

生年月日:1974年6月6日(50歳)
出身地:アメリカ サンフランシスコ

父は指揮者の小澤征爾。ミュージャンの小沢健二は従兄にあたります。妻はNHKアナウンサーの桑子真帆。1998年の大河ドラマ『徳川慶喜』沖田総司役で俳優デビューし、翌99年に崔洋一監督『豚の報い』で映画初主演。

りりィ:陽子(KARASSのママ)

出典:時事通信

生年月日:1952年2月17日
没年月日:2016年11月11日(64歳没)
出身地:福岡県福岡市

1972年に歌手デビュー。1974年のシングル「私は泣いています」が97万枚の大ヒット。音楽活動と並行して女優としても活動しました。遺作は2017年公開の『彼らが本気で編むときは』。一人息子はロックバンド・FUZZY CONTROLのJUONで、DREAMS COME TRUEの吉田美和は義娘にあたります。

フジコ・ヘミング:フジ子(ピアニスト)

出典:ソニーミュージックオフィシャルサイト

生年月日:1932年12月5日
没年月日:2024年4月21日(92歳没)
出身地:ドイツ ベルリン

日本・アメリカ・ヨーロッパで活躍したピアニスト。父親はスウェーデン人画家・建築家のヨスタ・ゲオルギー・ヘミング。母親は日本人ピアニストの大月投網子。5歳で日本に移住し、母の影響でピアノを始めます。1999年に放送されたNHKのドキュメント番組「フジコ〜あるピアニストの軌跡〜」が大きな反響を呼び、2003年にはフジテレビのスペシャルドラマ「フジ子・ヘミングの軌跡」(主演:菅野美穂)が放送され高視聴率を記録しました。

渡辺謙:石田

出典:映画.com

生年月日:1959年10月21日(64歳)
出身地:新潟県北魚沼郡広神村

世界的に知名度が高い日本人俳優のひとり。2003年のトム・クルーズ主演『ラストサムライ』でハリウッドへ進出し、アカデミー賞助演男優賞にノミネート。2006年『明日の記憶』、2009年『沈まぬ太陽』では日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞しました。娘である杏のYouTubeチャンネルに出演し、親子共演が話題に。

柄本明:豊橋(造形作家)

出典:映画.com

生年月日:1948年11月3日(75歳)
出身地:東京都中央区銀座

コミカルからシリアスまで幅広く演じる日本屈指の名優。24歳から下北沢に住み、本多劇場のこけら落しにも出演。下北沢ザ・スズナリでも活動しました。1998年今村昌平監督『カンゾー先生』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。妻は女優の角替和枝、息子は柄本佑と柄本時生。安藤サクラ(佑の妻)は義娘です。

鈴木京香:麻耶

出典:鈴木京香オフィシャルサイト

生年月日:1968年5月31日(56歳)
出身地:宮城県仙台市

大学在学中からモデルとして活動し、1989年に森田芳光監督『愛と平成の色男』で女優デビュー。1991年のNHK連続テレビ小説『君の名は』でヒロイン・氏家真知子役を務めました。2023年5月より病気療養のため休業していましたが、2024年冬のスペシャルドラマ「グランメゾン東京」で仕事復帰。映画『グランメゾン パリ』の公開も発表されました。

唯野未歩子:美亜

出典:唯野未歩子(@miaco_tadano) / X

生年月日:1973年10月2日(50歳)
出身地:東京都

1998年に斎藤久志監督作品 『フレンチドレッシング』 で本格的に女優として進出し、同作で毎日映画コンクール・スポニチグランプリ新人賞を受賞。2006年には脚本も担当した初監督作品『三年身籠る』が公開されました。2018年の山田杏奈主演『ミスミソウ』では脚本を担当。現在は女優活動のほか、映画監督や脚本家、小説家としても活躍しています。夫は映画監督の古厩智之。2008年7月に長男を出産。

広末涼子:フリーマーケットの若い女性

出典:公式Instagram

生年月日:1980年7月18日(43歳)
出身地:高知県高知市

2023年6月に「週刊文春」でW不倫が報じられ芸能活動を謹慎。翌7月にキャンドル・ジュン氏との離婚を発表しました。2024年2月には所属事務所「フラーム」の退所を発表し、個人事務所「R.H」を設立。4月11日に東京都内で行われた廃棄物削減プロジェクト「REBORN by BIOTECHWORKS―H2」のイベントに出席し、表舞台に復帰しています。

樹木希林:九四郎のファンの女性

出典:映画.com

生年月日:1943年1月15日
没年月日:2018年9月15日(75歳没)
出身地:東京府東京市神田区

日本を代表する名女優。2013年の日本アカデミー賞では『わが母の記』で最優秀主演女優賞を受賞しました。その際のスピーチで全身がんであることを告白。河瀬直美監督『あん』が最後の主演映画となりました。夫の内田裕也さんとは長く別居生活でしたが、樹木希林さんの死の半年後、後を追うように内田裕也さんも逝去されました。

その他キャスト

有吉康平:有吉(ミュージシャン)
中村靖日:林(達也の友人)
岸部一徳:私服刑事A
角替和枝:豊橋の妻
樹木希林:九四郎
豊川悦司:チラシを置きにくる演劇青年
田中麗奈:令子
田中裕子:福子(九四郎のかつての恋人)
テリー伊藤:ATMの客
平田満:有希の父
井上加奈子:有希の母
松重豊:私服刑事B
草野康太:神田くん
高橋克実:桜(レコード屋ムーズビルの店主)
松尾スズキ:ビリヤード場の店長
円城寺あや:吉岡(古本屋の店主)
大森南朋:高藤(酒屋の跡取り息子)
藤井かほり:静子(骨董屋の未亡人)
阿部サダヲ:高藤の友人
葛山信吾:田代
永澤俊矢:達也の兄
橋本怜資:健一(有希の弟)
長塚圭史:章介(健一の友人)
田中要次:岡村(レンタルビデオ屋の店主)
鈴木卓爾:達也の友人
矢口史靖:達也の友人
犬童一心:達也の友人
森下能幸:スカウトマン

錚々たる顔ぶれですね!

市川準監督

出典:市川準オフィシャルサイト

いちかわじゅん
生年月日:1948年11月25日
没年月日:2008年9月19日(59歳没)
出身地:東京都府中市

市川準監督は80年代から第一線で活躍し続けたCM演出家です。禁煙パイポ「私はコレで会社を辞めました」や、タンスにゴン(金鳥)「亭主元気で留守がいい」は流行語にもなりました。

2008年9月19日、脳内出血により59歳で死去。

映画監督として21本の映画を残し、死去の直前までCMを作り続けていたとのこと。

映画初監督作品は富田靖子主演の『BU・SU』。
デビュー作でキネマ旬報ベスト・テン第8位、読者選出第2位の評価を受けました。

監督作品

『BU・SU』(1987年)
『会社物語 MEMORIES OF YOU』(1988年)
『ノーライフキング』(1989年)
『つぐみ』(1990年)
『ご挨拶(オムニバス第2話「佳世さん」)』(1991年)
『病院で死ぬということ』(1993年)
『第1回欽ちゃんのシネマジャック「きっと、来るさ」』(1993 年)
『クレープ』(1993年)
『東京兄妹』(1995年)
『トキワ荘の青春』(1996年)
『東京夜曲』(1997年)
『たどんとちくわ』(1998年)
『大阪物語』(1999年)
『ざわざわ下北沢』(2000年)
『東京マリーゴールド』(2001年)
『竜馬の妻とその夫と愛人』(2002年)
『トニー滝谷』(2005年)
『あおげば尊し』(2006年)
『あしたの私のつくり方』(2007年)
『buy a suit スーツを買う』(2009年)
『TOKYOレンダリング詞集』(2009年)

2000年の『ざわざわ下北沢』は、第10回日本映画批評家大賞作品賞を受賞。

ざわざわ下北沢

出典:ナタリー

古いものと新しいもの、さまざまな人々が入り混じり老若男女に愛される街・下北沢。

市川準監督のコメントはこちら。

【市川準監督コメント】

「お芝居が好きで、よく観に来ていたし、劇団の打ち上げで飲んだりはしてたんだけど、下北沢を描くことが、なんかとても恥ずかしいなあと。この恥ずかしさを消すにはどうしたらいいんだろうって、かなり悩んだ。そして、ある日、とにかく下北沢であれ、札幌であれ、博多であれ、どの街でも自分の作りたいものを作ればいいんだって思ったのね。舞台なんて関係ないって思って。そこから何かが自分の中で動き出したと思う」

ざわざわ下北沢パンフレットより

『ざわざわ下北沢』や『東京マリーゴールド』など、出身地である東京を舞台とした作品が多く、特に以下3作品は「東京三部作」と呼ばれています。

『東京兄妹』(1995年)
『トキワ荘の青春』(1996年)
『東京夜曲』(1997年)


『東京夜曲』では、日本人で初めてモントリオール世界映画祭の最優秀監督賞を受賞し、世界的にも名を知られるようになりました。

2021年9月19日の下北沢映画祭にて、ブルーレイ発売を記念し『ざわざわ下北沢』を再上映。

サブカルの聖地・下北沢

さまざまなカルチャーが入り交じるサブカルの聖地・下北沢。新しく生まれ変わっても、残すべきところは古き良き時代のまま残っています。

レンタルビデオ店に行くことはなくなりましたが、映画がなくなることはありません。映画を愛する人はきっと劇場に足を運ぶでしょう。

たとえ映画館がなくなったとしても、映画の文化は残ります。観る手段が変わるだけで、映画の価値は変わりません。

映画も演劇も音楽もファッションも。

時代が移り変わったとしても、下北沢に溢れるカルチャーは、いつまでも変わらずそこにあるのです。

峯田和伸とチン中村によるユニット「敏感少年隊」の『サウンドオブ下北沢』もあわせてどうぞ。

夜になったらDORAMAに行こうぜ
ホラービデオでも借りようぜ♪

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