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北海道弟子屈町のアトサヌプリで温泉蒸し卵を食らう
2023年10月31日、クレイジーケンバンド斜里町公演が行われて全席完売ソールドアウトで大成功を収めた。翌日はそのまま斜里町に残って、あちこち観光をさせてもらった。
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昨年も訪れた弟子屈町のアトサヌプリ(硫黄山)に再訪叶った。その名の通り硫黄の匂いが強く漂っている場所である。先に進むと地面のあちこちから熱水が吹き出ていて、その辺りは硫黄で黄色くなっている。なかなかワイルドでワクワクするのである。アトサヌプリとはアイヌ語で裸の山と云う意味。そんじょそこらの地獄では太刀打ち出来ない迫力とインパクトがある。僕はここで人生初の試みをしてみた。温泉卵を食べるのである。
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今までも何度も繰り返し書いているが、僕は物凄い偏食児童であった。小学校入学前は海苔とご飯と醤油だけ食べて生きていた。他の食べ物は完全拒否。野菜などはもっての外。あれもキライこれもキライ、と云うか食べない。小学校での給食には本当に難儀した。食べないとお昼休みの校庭で遊ぶことも許されなかった。それでも僕は頑なに食べることを拒絶した。机の上に食べられない給食を残されたまま、午後の授業を受けさせられたりもした。放課後まで解放されないこともあった。それが5年生の転校を機会に少しずつ色々なものを食べられるようになって、現在は好き嫌いが全く無くなった。偏食ではなくなったのだ。努力をしたのではなくて、何となく一つ一つクリアすることが出来たのだ。野菜は20代のうちに殆ど全て食べられるようになり、ラッキョウ、とろろ、そして納豆と次々と克服した。そして最終難関がゆで卵であった。ゆで卵を食べられるようになったのは50歳になってから。それまではゆで卵だけはどうしても食べられなくて、ゆで卵が載っているから知れないと云う予測からラーメンすら食べなかったこともあった。後から思えば、とにかく匂いがダメだったのだと思う。硫黄の匂い。これについては敏感で、どこかの食堂だかに入って、離れた席で誰かがゆで卵(の載っている料理)を食べているのも即座に嗅ぎつけたくらいだ。それが、何のきっかけか忘れたが、ラーメンの味玉が大丈夫になり、普通にゆで卵も食べられるようになった。存命中だったお父ちゃんにゆで卵が食べられるようになったと話したら「ええっ!」と声を出して驚いていた。煙草をやめた時とゆで卵の時が同じくらいのビックリ仰天、意外千万。今ではラーメンの券売機でわざわざ味玉追加のボタンを押す人間になったのだ。それは進化なのか、食いしん坊を拗らせているだけなのか判らないが、とにかく食べられないものはない。好まないものはもちろんあるけれど、拒絶はしない。それでも、それでもである。まだ到達していなかったのが温泉卵である。とろっと半熟のヤツではなく、本当に温泉地で温泉を使って茹でたり蒸したりしてある温泉卵のことだ。この硫黄山で僕は初体験することとなった。前置きが長くなってしまった。でもここまで書いておかないとこれがどんなに僕的に特筆すべきことなのかを判ってもらえないと思ってしっかりと書いてみた。読んでくれてありがとうございます。
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イートインのテーブルに温泉蒸し卵の殻のむき方マニュアルがあった。その通りに事を進める。
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マニュアルにあった通り、温泉蒸し卵にガムテープを巻き付けて、叩いて殻を割って、ガムテープを剥がせば殻も綺麗に剥けると云う寸法である。ガムテープもテーブルに置いてあった。よしよし。
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温泉蒸し卵、一個150円である。お塩も付いている。ゆで卵の殻を剥いたこともまだ人生で数度しかない。心して臨もうと思う。
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スタートとゴールの写真だけしかない。その間は集中して作業をおこなっていたからだ。さあ、どうなるか。
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これがなかなか、ちゃんと剥けるのである。ガムテープ素晴らしい。グッジョブである。
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大変に綺麗に剥けた。喝采である。とても艶々としている。人生初の温泉地の温泉卵。イタダキマス。
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ウマウマウー。これがとてもウマイ。ヒジョーにウマイ。塩をほんの少し振りかけて食べるとまた格別である。匂いは全く気にならない。人間は変わることが出来る。僕も変わることが出来た。小さな感動と共に温泉蒸し卵をアッと云う間に平らげた。食べてしまうと呆気ない気もした。小さな小さな人生初、であった。
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これで僕も20万人の方の仲間入りである。光栄である。美味しかったです! 御馳走様でした!
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イートインのあった施設、MOKMOKベースを出て、アトサヌプリの方に向かうことにする。
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のんびりしているようで、実際に見るとかなり鬼気迫るものがある。この日も勢いよく湯気が噴出していた。
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この写真には他の観光客が2名写っているのだが小さくて判らないと思う。アトサヌプリ、かなりデカイのである。
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凄い音をたてながら、温水と蒸気が噴き出している。これを間近に見て興奮しない人は少ないと思う。僕は興奮した。去年も来たのにまた興奮している。うおーすげー。
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去年も思ったが、世界の涯とはこうしたところのことを云うのであろう。
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どんな地底怪獣が現れても不思議ではない光景である。出現したら怖いが。
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こっちの写真の方が出現しそうか。硫黄の匂いが嫌いな怪獣がいた。帰ってきたウルトラマンのシュガロン。逆にこいつはここには絶対出ないな。
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こちらの写真の方が世界の涯っぽいか。自分が地球の一員であって、こうした圧倒的な自然の有様と自分が地続きである、繋がっていると考えると、全てが貴重で大事で愛おしく感じられないであろうか。
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ここはまた訪れることがあると思う。その時を楽しみにしていよう。そしてまた温泉蒸し卵も食べよう。そう云えば硫黄山温玉ソフトなるスイーツもあるらしい。食べてみたい。人生の観光(たび)は続くのだ。硫黄山でまた逢いましょう。
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