【詩】 ベランダの雪
どこにもない
どこにもないベランダの
柵の向こうの
いちめんの水色の中を
白い雪がわんわん降る
大きめの
ふわふわした雪が
わんわんと
流れるように降る
夢の中のように
水色はどこまでも
何もない水色で
ベランダには柵と
柵の近くの床しかなくて
海の中のような
スノードームの中のような
夢と目覚めの間の
閉じた瞼の中のような
どこにもない
どこにもないベランダの
柵の向こうの
いちめんの水色の中を
白い雪がわんわん降る
わんわん降るから
宙に浮いているような
水中を漂っているような
どこにもない
どこにもないベランダから
心が帰ってこれない