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【詩】 灰が落ちるように

中に何が入っていたって
瓶の色が青ければ満足だった
誰にも会えなくたって
隅々まで歩いてまわれば気がすんだ
何度も来ているような
初めて見るようなバス停で降りて
空のにおいを嗅いだ
それから川面を滑ったり
橋の欄干をすり抜けたりしながら
雲の影を追いかけて
自分が迷子になっていることに
いつまでも気づかずにいた

ばさばさと羽ばたく真っ白な鳥が
町の上を横切っていくのを
小さな川の土手に立って
目で追っていた

心が崩れていった
線香の灰が落ちるように
音もなく
ほろほろと崩れていった
痛みなんかなかった
悲しくなんかなかった

化学講義室の紫の炎のような夕日と
まだらに覆うきれぎれの雲
白くて細長い鳥が
小さな点になって吸い込まれていく
この町の夕焼けの空が
もう理不尽すぎるくらい、きれいだったから






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