見出し画像

【詩】 虹色の鹿

   ———しずけさに耳を澄ます
      都会の夜の音と光の
      溢れかえる騒めきを
      しっとりと包んでいる
      やわらかい夜の空気の
      しずけさに耳を澄ます

雑踏の足音や話し声は
途切れ間のない波音のように
うねるように這うように押し寄せる
風を切る自動車の車体
無数のスピーカーから流れる広告
がしゃがしゃ走る電車の音

通りの向こうに七色の鹿が
ネオンカラーの光の塊のような
おおきな しずかな 透きとおる
七色の鹿が立っている
広い通りをはさんで目があう
この夜の都会に息づくすべてを
視界の端に置き去りにして
じっと目があう

時が止まりかけるように
街の動きがスロウになる
夜のしずかな闇に浸る
ゆったりとした空気が
この騒がしい街の肌を包んでいる
誰にも気づかれずに佇む
あの七色の鹿のように
そっとしずかに包んでいる





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?