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昔は許されていたけど、今はもう許されない。
コンプライアンスとかハラスメントとかルールもモラルもアップデートしている。
そんな感じがずっと続いていたけれど。
いや、今はじゃなくて、昔だって許されないという流れもあって。
今になって過去のカルチャーの否定なんてことも起きる。
ええ?っていう感じがある。

だってあんまり意味がないと思って。
今、否定することに何の意味があるのかな。
だって当時、肯定されていたのだから。
それにそれは今、支持されているものが色褪せるような行為だ。
今、昔と同じことをすれば非難されるのはわかるけど。

というかさ。
まぁ、往々にしてそうなのだけれど。
言いやすいところに言って、突きやすいとこを突く。
そういうことにしか見えないんだよなぁ。
反体制のふりした弱い者いじめって一番ダサいと思うのね。
何か自分より大きな権力構造にもふざけんなって言えるのが反体制でさ。
言いやすい所にマウントかけるのって、正反対なんだけどな。
まあ、いいんだけどね。好きにすれば。
シンプルにかっこわるい姿をさらしてろって思うだけで。

でもなんかSNSが出てから、結局、個人の言葉って強くなっていて。
なんだかんだ世の中はそういう個人の言葉を拾って動いていて。
それ自体は望んだことというか、悪いことじゃないって思う。
強弱がいつの間にか反転している気配すらある。
そんなことあるか?って思うかもしれないけれど、日本は資本主義社会で経済で動いている国なわけで、その為の市場調査のようなものが日夜行われていて、それが可視化されているのだから現実に強くなってる。
ほんのわずかな人数がクレームを拡散するだけで企業が謝罪に追い込まれるケースも何度も目にしてきた。あれなんかもう個人の方が企業よりも強くなってる。イメージという部分で。影響力という部分で。
まるでサイバー戦だ。
けど、強者のもつメンタルみたいなものまでは持ち合わせていないというか。個人の意見なんか通らない時代の方がやっぱりとっても厭だったなぁと思うけれど、意見が通るのもそれはそれでなかなかですね。そうですね。

でも徐々にここまで進んできたからさ。
あんまり過去まで否定しないでやって欲しい。
過去があって、闘った人がいて、ここまで進んできたんだから。
いきなりアップデートしたかのような言い方をする人もいるけどさ。
ぜんぜんそんなことはない。
何度か技術的な革新はあったけどさ。
でもその革新が生まれた背景もあったわけでさ。

そう考えると今の反体制って難しい。
巨大な権力構造は今も存在しているけれど。
より階層が複雑化してる。
ロックはどこにある?

でもあるじゃない。
これはなんかロックやねぇという作品が。姿勢が。
ファイティングポーズを崩していない誰かが。
何かに絶望しているわけでもなく、何かを叩いているというわけでもなく、その姿勢そのものというか。
そしていつでもぶっ壊すことが出来るんだなっていう、あの感じ。
心に刺さる一言だけで充分だという矜持。

昔の作品にまで否定が入り込む時代になった。
僕はそれがあんまり面白くないんだけど。どの分野でもね。
でも、よりホンモノだけが残るはっきりした時代になったのかなとも思う。
去年話題になったドラマですらあらすじが記憶に残らないほど消費されていく。
デリートキーで大抵のものは消せる。

漂うようにホンモノを考えるよ。

映画『演者』

企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル

「ほんとう」はどちらなんですか?

◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)

2023年4月15日(土)16日(日)
シアターセブン(大阪・十三)

2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)

出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

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小野寺隆一
投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。