夕焼けの駐車場
スバルとかターセルとかハイエースとか。
子どもの頃にお父さんが乗っていた車だ。
その車はその頃に住んでいた平屋の借家から歩いて5分ぐらいの駐車場に置いてあった。
あまり車も通らないような道路に木がはみ出している道を進むと、田んぼだとか梨畑があって、その先の右側にあった。
駐車場と言っても今のみたいにアスファルトで奇麗に線が引いてあったわけじゃなくて、ただ砂利が敷き詰めてあって、番号が書かれた看板が立ってるだけの空間だった。
奥の方にはトラックなんかも止まっていて、その辺にはスペアタイヤなんかも転がってた。
家で待っていれば車が来るのかもしれないんだけれど。
なんだかあの駐車場までよく歩いたなぁ。
こいつはよく転ぶなんて言われて、まぁ何度もこけながら。
たんぽぽやらクモの巣やら見つけては駆け寄ってたから。
どぶ川なんかもあったし、ザリガニとか蛇だって出たんだよ。
今になって思えば、一番、お父さんと一緒に歩いた道かもしれない。
駐車場までの道。駐車場からの道。
今もあの道はあるけれど。
田んぼも梨畑も駐車場も宅地になったりマンションが建ってる。
ドブ川ももう閉じられちゃったかな。
朝でも昼でも歩いたはずなのに。
どういうわけか、駐車場を思い出すと夕方の風景が浮かぶ。
車を降りて家に帰る道かな。
それともお父さんが帰ってくるって聞いて駐車場まで一人で行った思い出があるからなのかな。
砂利の駐車場で遠くを見ながら。
ターセル来ないなーって思ってた。
あれは確かに夕焼け空だった。
ショウリョウバッタが田んぼのあぜ道とか駐車場にたくさんいた。
雨の次の日には水たまりにどこからかアメンボがやってきた。
どこか怖いなぁって思ってた。
この道をまっすぐいったら迷子になっちゃうかもなぁって思ってた。
ターセルをみつけて大きく手を振った。
おかえりー!って大声で叫んでた。
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