Born from pain into the light
明らかにコロナ禍は終息に向かっているのだけれど。
なんというか誰も総括しないまま進んでいくようなこの感じ。
実際には社会的な変化が様々に起きているはずなのにどことなく元に戻るのだという希望と安心から振り返らずに進んでいくような雰囲気。
身の回りで、はては世界規模で進んだ分断もそのままなのだろうか。
それがなんとも気持ち悪く感じるのは僕だけだろうか。
あの誰もいなくなった街を歩いていた時の終末感を感じる恐ろしさはいつかそんなこともあったと話せるようになるのだろうか。
大きな社会の分断があった。
「自粛警察」なんて呼ばれる同調圧力は営業を続けた飲食店の扉に非国民とペンキで描いた。ひどいと口にしながら社会が一色に染まっていくことに僕たちは実に無力だった。舞台やライブハウス、映画館、あらゆる人が集まる場所は攻撃対象になった。
世界的な分断もあった。
最初に感染者が観測された中国武漢は世界中から非難を受けた。
アジアンヘイトは世界に広がり、米中の関係性は悪化した。
中国はあっという間に先進諸国から関係性を見直されるような流れになっていった。
ロシアのプーチンは3年間、ほぼ外交活動をやめた。
パンデミックは人と人との間に壁をつくっただけじゃない。
壊れかけていると感じていたイデオロギーの壁を更に強固な壁に作り替えた。
世界中の国々が軍事費を倍増するなんて誰が想像しただろう。
生活が大きく変わった人もたくさんいる。
店を畳んだ人、転職した人、リモートワークが主体になった人。
この三年間をすごした学生や子供たち。
その影響が小さいわけがない。
僕たちが何に傷つき、何と分断されたのか。
家にこもっている間に流れた流言飛語。
フェイクニュースが真実味を帯びてオフィシャルニュースが嘘臭くなる。
拡散して霧散していく情報。
おいおい自由ってなんだっけ?なんて考えると頭がおかしくなりそうだった。
パンデミックの間、民主主義とは何か、新しい思想が待たれているなんて言葉を目にした気がするのに、その後、何が生まれたっていうんだろう。
パンデミックをコントロールするためには国家による統制が必要だったのだとして、徹底的なロックダウンをした国と、自助と言われた僕たちと、正解なんかないとしても、結局、国家的統制やら同調圧力については何一つ総括しないまま、海の向こうの戦争のニュースを目にしている。
それでいいのかよと言いたくても政治家たちは選挙に夢中ときたもんだ。
思想家たちも新しく生まれた何かなんか探そうとしているとは思えないよ。
ただただ変化に対処するばかり。
来年はあっちこっちの国々の大統領選らしい。
とまぁ文句ばかり言っても仕方がないのだけれど。
哲学的には大きな大きな進歩をしているんじゃないかと僕は感じている。
明日、何が起きてもおかしくないという死生観を突き付けられて。
否応なく生活様式を変えざるを得ない中で、個々人は、じゃあこれからどうやって生きていくんだよということに想像以上に向き合った。生きるとはなんなのか向き合うための時間だったのかもしれないと思う程さ。
人の持つぬくもりの重要さをより深く知ったはずだ。
多くの人と共感を持つことの多幸感を改めて感じることが出来たはずだ。
子供だましはもう通じまいよ。
うわっつらはもう見ぬかれるだろうさ。
あれだけのフェイクを浴びてきたのだ。
だから僕は大袈裟なプロモーションはしないと決めた。
多少、盛りたくもなるんだけどさ。
見ろよ、社運を賭けたなんとかだって誰も騙されてないよ。
絵にかいた炎に熱なんかないさ。
嘘のない本質を。「ほんとう」を。
ただただそこに表現するって決めたんだ。
そこに面白さを見つけてくれる人は確実にいるってわかってる。
心が鋭敏になる。
もうすぐ僕は旅に出るから。
感受性の強い人も。
感性が鋭い人も。
常態としてアンテナが開いている人も。
必ずこの映画の情報をキャッチするだろう。
人数ではない。
深さだ。
光に向かおうぜ。光に。
なにやってんだ、あいつら。闇の引力。
僕は光に向かわせてもらうよ。
ほんとうの熱をもった光の中へ。
まぶしいからって、目を瞑っていられるかってんだ。
映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
「ほんとう」はどちらなんですか?
【限定3回上映】
2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
各回10時から上映
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
初日舞台挨拶あり 登壇:小野寺隆一
【限定2回上映】
2023年4月15日(土)18:30、16日(日)19:00
シアターセブン(大阪・十三)
予約開始:4月8日9時より
2日間舞台挨拶あり 登壇:小野寺隆一
◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)
出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一
撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき
【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。
家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。
やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。