「エコロジー・リーディング」実践編〜「海の命」①〜
山本貴光氏の「文学のエコロジー」(講談社 2023年)にヒントを得て、文学の授業実践「エコロジー・リーディング」の開発について考えている。2025年2月1日(土)にKOGANEI授業セミナーにて、「海の命」を使ってその実践を試みる。今回から実際の授業の様子を記録する。
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※「文学のエコロジー」の感想をまとめたマガジン「エコロジー・リーディング」はこちら↓
題名読み
本文を読む前に、「海の命」という言葉から連想できることを子供たちが黒板に書くところから授業を始めた。6年生のこの時期ということで、現在出席している子供はいつもの半数程の19名。ちょっと黒板がスカスカになってしまったが、子供たちの連想はそれぞれである。
「海の命」とは何か、という視点
・海の中の生き物
・地球
・自然
・海そのもの(波は鼓動)
「海の命」とはどんなものか、という視点
・海があずかっているもの
・とても大きいもの
・きれい
・たぶん青い
・漁師さんが知っている
ここに示されたものも、既に「海の命」という言葉を、子供なりにシミュレーションした結果と捉えたい。子供たちは、自分の記憶や知識を元手に、「海の命」という言葉が指し示す要素を補って想像しようとしている。
本文中にも「海の命」という言葉が出てくるが、明確には示されない。ここでのシミュレーションが、この後の授業に生かされるかもしれない。
初発の感想
その後、本文を読んで感想をまとめた。
やはり「なんで太一はクエをうたなかったのか」「父が見たクエと、瀬の主は同じなのか」といった疑問を書く子は多くいた。子供であっても(子供だから?)、論理的に整合性がとれないことにまず目が行ってしまうことは、初発の感想で見られる傾向である。子供たちは、形成した解釈図式で解釈できないとき、その解釈図式を壊して新たな図式を創ろうとする欲求に駆られる。エコロジーを読むことが、解釈図式の創造にどのように影響するのか、楽しみである。
最初に「海の命」という言葉について考えたこともあって、初発の感想でも続きを考えている子が複数いた。
「海の命」を解釈する図式を、自分なりに創り上げている。Kさんは、亡くなった人が海で生きて、太一を待っているという図式を、Hさんは「海の目」という新たな装置を持ち込んで解釈しようとしている。
この単元の終わりに、「海の命」について考えたこと、という作文を書かせてみると、子供たちの解釈図式の変容が見えてくるように思った。
また、エコロジーを読むという視点からは、Yさんの感想が興味深い。
Yさんは、作品に流れる時間に目が向いている。Yさんが、どのようにエコロジーを読んでいくか楽しみだ。
次時では、いよいよエコロジーを読む作業を始める。どんな感じになるのかワクワクしている。