【10月26日は柿の日】柿と正岡子規、そしてドライアイス脱渋
10月26日は柿の日
毎年10月26日は「柿の日」です。
これは俳人、正岡子規が「柿食えば鐘がなるなり法隆寺」という有名な句を詠んだのが、1985年の10月26日だったことに由来します。
正岡子規(本名:正岡 常規)は政治家を目指し帝国大学に入学しますが中退、その後は新聞記者となり、俳句に関する連載を行っていましたが、実は在学中に結核に感染して吐血していました。
このことから、「(クチバシの中が赤いことから)鳴いて血を吐く」と言われているホトトギスと自分を重ね合わせ、ホトトギスの漢字表記の「子規」を自分の俳号としました。
抗生物質での治療ができない当時では、充分に療養して自然治癒に賭けるしかなかったのですが、日清戦争の従軍記者として中国に渡ることになってしまいます。
帰りの船の中で重体となった正岡は、その後亡くなるまでの7年、寝たきりになってしまいます。
闘病生活の中で正岡は「病牀六尺(びょうしょうろくしゃく)」の随筆を執筆します。
これは少しの感傷も暗い影もなく、死に臨んだ自身の肉体と精神を客観視して書き残した傑作とされています。
他にも最期まで多くの創作活動を行い、34年の生涯を終えました。
自らの病に因んだペンネームを持ち、死期が迫ってもユーモアを忘れず、自分に起きた全ての出来事を楽しんで生きていたという正岡子規。
坊主頭で横を向いている写真が中々印象的で、何かと教科書で落書きされがちだったりしますが(筆者もやりました)、生前の性格を思えば案外ネタにされることも喜んでいるかもしれません。
「透き通る 氷の中の 紅葉哉」という句を31の時に詠んでいます。
まさに氷の美を感じさせる、素晴らしい句です。
柿の渋抜きにはドライアイスが確実!
柿というと、今ではスーパーで購入する人も多いかと思いますが、庭で育てているものを自分で摘み取ったり、近所の人に分けて貰ったりするものというイメージも強いでしょう。
しかし、市場に流通していない柿は渋取りが必要な場合も多いです。
渋柿は干し柿にしてしまうのもなかなかいいですが、実はドライアイスさえあれば極めて簡単かつ確実に渋を抜くことができます。
方法はたったのこれだけ。
1.まず、柿に対して10分の1ほどの量の、ドライアイスを用意します。
2.ポリ袋を用意し、柿、新聞紙、ドライアイスの順に重ねます。(※柿にドライアイスが付くと傷んでしまうので注意しましょう。新聞紙で柿を包んでしまうのもオススメです。)
3.柿とドライアイスを入れたポリ袋から掃除機で出来るだけ空気を抜き、硬く結ぶ。(※2時間ほどするとまた袋が膨むので、袋を開けて完全にガスを抜き直して、硬く結び直して下さい。ドライアイスは膨張や凍傷などの危険性を伴うので、袋の置き場所にお気をつけください。)
4.3~4日ほどすると脱渋が完了。少し柿が柔らかくなっていれば渋が抜けている目安です。
繰り返し50~60℃に沸かしたお湯につけて放置することで渋抜きする方法もありますが、それよりも簡単で確実。
またラム酒やホワイトリカーをかけて放置する渋抜き方法よりも柿への影響が少なく、実が締って美味しくなります。
カキの渋みの正体は、ご存じの方も多いと思いますが「タンニン」。
タンニンは植物に由来する、タンパク質や金属イオンと強く結合する水溶性化合物の総称で、タンパク質と結びつき除去する作用から皮なめしに使用されたり、
金属と結びつく性質からボイラーなどのクリーニングや鋼材のサビ出しにも使われています。
このように便利なタンニンですが、口内のタンパク質とも結びついてしまうため、それが強い渋みを生じさせるのです。
ここで活躍するのが「アセトアルデヒド」、酸化したアルコールです。
ドライアイスは個体のco₂ですので、密閉した容器の中に柿を入れると、気化して柿の細胞は酸欠状態となります。
この結果、呼吸に使われるはずの柿の中のピルビン酸が分解されずアセトアルデヒドが作られます。
これがタンニンと結びつき、タンニンは不溶性となります。
不溶性のものからは味がしないので、柿の渋みが取れるというわけです。
(つまり、渋抜きといっても何かを抜いているという訳でもなく、渋を不活性化して感じなくしているわけです)
干し柿から渋みがなくなるのも、皮をむいてしまうことで柿が呼吸できなくなるからです。
直接アルコールをかける方法でもアセトアルデヒドが生じ渋抜きができますが、柿の内側からアセトアルデヒドを生じさせるドライアイス脱渋は確実です。
魅惑のチョコレート味の柿「ブラックサポテ」
日本以外の国々でも、アメリカガキやケガキ(筆者的には海のカキ(牡蛎)にもケガキ(毛牡蛎)というのがいるのでややこしいと思うのですが…)などの柿の仲間があり、広く食べられています。
中でも一際特徴的なのが「チョコレートガキ」の異名を持つブラックサポテです。
緑色のトマトのようなブラックサポテの果実は、最初は白く硬いパルプ状の果肉を持ちますが、次第にチョコレート色のねっとりとした果肉となり、見た目だけでなく、まるで生チョコのような味と香りになるそうです。
しかし未熟な果実には、強烈な渋みと苦味、刺激性があり、フィリピンでは毒もみ漁で魚に対する毒として使われることもあります。
また、干ばつには弱いものの、熱帯に生息する植物でありながら、軽い霜にも耐えることができ、洪水に対しても非常に強いです。
このように非常に魅力的なフルーツでありながら、日本では果実はおろか、種すら入手困難な状況です。
植物検疫や種苗法におけるハードルの高さからでしょうか?
間違いなく、かき氷とは相性抜群に思えるフルーツであり、是非ともいつか入手したいものです…。
参考、出典
:松山市立子規記念博物館
:松尾友明・監修 さいとうあやこ・絵 鵜飼雅則 常山広・文 編集.柿渋とカキタンニン けいはんな科学絵本.柿渋・カキタンニン研究会.018.11