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日々練習!憧れの氷グラスを作ってみた!【#5 小野田商店100+ 】


憧れの「氷のグラス」!

皆様は氷で出来たドリンクのグラスをみたことがあるでしょうか?

ガラスなどの代わりに氷を用いて作ったグラスに、飲み物を注いで味わうといったものです。

こんなようなやつです

実際に見たこと使ったことがなくても、イベントなどを撮影した映像でそのようなものを見かけたり、はたまた現実ではなく漫画やゲームでそれに近いものが登場したのを覚えている、という人もいるかもしれません。
どうぶつと森で生活するゲームとか、主人公じゃない人が伝説のゲームとか…

しかし氷で出来たグラスを作成するには、飲み物を入れるのに充分な穴を彫ることのできる、相応に大きな氷が必要です。

そのための設備は大掛かりなものが必要であり、家庭用はもちろん業務用の製氷機でもなかなかサイズ的に厳しいといえます。

しかし、製氷工場でなら135キロを超える氷柱を作ることのできる設備があるので、グラスを彫るのに十分なサイズの氷を作ることができます。

また、せっかく氷のグラスを作成するなら透明度の高い氷を使いたいものですよね。
小野田の超純水®は、活性炭ろ過装置と逆浸透膜(RO)装置、さらに特殊な処理で三重に磨いた原料水を使用。
さらに60時間以上かけてゆっくり凍らせることで、非常に単結晶の大きな、透明で硬い氷を製造しています。

氷のグラスを実現するには条件としてはピッタリです。
どうにかこの氷のグラスを製造できないか、そんな考えから小野田商店のチャレンジが始まりました!

このときはまだ、これがどれ程難しいか分かっていなかったのですが…。

氷のグラス、どうやって作るか?

小野田商店の社員が練習で作った氷のグラス

「氷のグラス」といってもどのようなものにするのか…水をグラスの形に凍らせるのか、それとも氷彫刻のように氷の塊をグラス型に彫っていくのか、あるいは氷を適度な大きさにカットし、そこに穴を空けてグラスとするのか…。

水をグラスの形に凍らせるには専用の機械が必要となり、ハードルは高いです。また実現可能であったとしても製造効率はかなり低いものとなります。

また、彫刻のように氷の塊をグラスの形に彫るのも、実際にいくつか試作品を作成しましたが、これを何個も作ることはあまり現実的ではないと思いました。

従って、適度な大きさに切断した氷に穴を空ける形での工法が望ましいという結論に至りました。

原料氷として活用するのは、小野田の超純氷®︎かき氷専用と同じサイズの半貫目とよばれるサイズ(1.8キロ)です。

小野田の超純氷®︎かき氷専用

既にある製品の規格を使用することで、ある程度生産効率が高まりますし、また、さまざまな場所で氷のグラスが使われることを考えると多少の割れや融けによって注いだ液体が漏れない十分なタテヨコの、氷の厚さを確保する必要があったからです。

これらのやり方を確立した上でも手作業による製造のため、生産スピードにはかなり限界があり、もし商品として販売するとしたら、まだまだハードルが高そうです。

やっぱり氷は気まぐれで気難しい!

さて、こうした試行錯誤の上で氷のグラスを作成することができたのですが、あるユーザー様にこの氷のグラスを試用していただいたところ、コーヒーがグラスから漏れるというトラブルが起きてしまいました。

コーヒーの漏れが生じた事例

しかし、氷のグラスは制作中にクラック(ヒビ)が生じたものは、そのヒビが氷の内部に発生していて、グラスの外側や内側に繋がっていないものだったとしても不良品として扱ってきました。

美的観点からもそうですが、グラスとしての機能に万全を期すためです。

試しに氷内部にクラックの入った不良品の氷グラスに、
鮮やかなドリンクを入れてみたが一時間経っても漏れは確認できなかった。

従って、氷のグラスを作った時点ではヒビは無かったはずなのですが、なぜ使用するときにコーヒーの漏れが起きてしまったのか?

小野田商店ではこの検証を行いました。
まず、考えられたのが充分に室温に慣らして「氷を緩める」工程を省いたことが原因ではないかと考えました。

急激な温度変化が起きると、氷の中のほうではゆっくりとした温度変化が起きますが、対して表面では急激な温度変化が起きます。
これにより氷の収縮の差によるひずみが生じ、氷にひび割れが発生します。
これを防ぐことは日々氷屋が気をつけていることでもあります。

そのために氷の外側を緩やかに温度を上げて体積の収縮のバランスを合わせる「氷を緩める」工程が必要となり、これが不十分のままドリンクなどを注ぐと急激にヒビが入ることもあります。

そこで、作った氷のグラスを室温にならす充分な時間を探るために、冷凍室から冷蔵室に移して、どれくらい緩めればドリンクを注いでも氷が割れないのか?
簡単な実験をしてみることをしました。

それぞれ、1時間、30分、15分、冷蔵室にて慣らした氷、そして冷凍室から取り出した直後のグラスに、8℃のコーヒーを注いだ結果こうなりました。

冷蔵室に取り出して直後のグラスのみ、コーヒーを注いだらヒビが入った。

この結果を受けて、意外とそこまで氷を緩めなくてもヒビが入るリスクを防げるのではと考えました。

今度は冷蔵室でなく、室温でより短時間ならした場合の、最短で必要な緩める時間を探るための実験を行いました。

それぞれ室温19℃で15分、5分、3分、緩めた氷に12℃のコーヒーを注いだ結果こうなりました。

室温下3分間だけ緩めた氷の外側にヒビが入ったが、あとはヒビは発生しなかった。

室温下でも5分緩めただけでヒビの発生は起きなくなりました。

3分だけ緩めたものに関しては、コーヒーを注いだ時にヒビ割れは発生しなかったのですが、容器からコーヒーの水滴を垂らしてしまったときに当たった外側に少しヒビが入りました。

このことから、万全を期しても冷凍庫から室温で5分ほど慣らせば、コーヒーに氷を注いでも割れることはないのではないかという結論に至りました。

透明な氷の意外な弱点、温度に強くても光には弱い?

しかし、試しに使って頂いているユーザー様の方で起きたケースと、緩める時間が不十分で割れたときでは、ずいぶんと割れ方が違います。

ユーザー様のほうでのコーヒーの漏れはまるでアリの巣でも空いたかのように氷に穴が空き、そこからコーヒーが漏れているのですが、実験でのひび割れはまるで落としたときのような割れ方で、全体に大きくヒビが入っていました。

左の写真.単結晶化により色素が流出しはじめた、着色した氷のアート
右の写真.ユーザー様から報告あったコーヒーの漏れ

このヒビ割れのパターンに、氷の単結晶化が関係しているのではないか?と考えました。

「小野田の超純水®︎」をはじめとする当社の氷は非常に単結晶が大きな氷で、そのため潜熱(ここでは温度を保てる力)も大きく室温でも硬く融けにくいのです。
しかし、直射日光など強い光に晒されると単結晶の継ぎ目から融けて割れていくという、少し珍しい融けかたをします。

この詳しい理由は不明なのですが、単結晶化は透明で純度の高い氷だけにはっきり見られる不思議な現象です。

この検証のために、室温25℃の部屋で5分緩めたグラスに12℃のコーヒーを入れ、窓際の日差しの強い場所に晒しました。

日光に晒して4分ほど、早くも氷に網目のような細かなヒビが入っている。
コーヒーの色と重なっているところだとよく目立つ。

すると4分経つか経たないかのうちにうっすらと氷に網目のような模様が表れはじめました。

早くも単結晶化が始まっています。

日光に晒してから8分後ほど、ついにコーヒー漏れはじめた、

そして、コーヒーを日光に晒してから8分ほど放置すると、ついには下にコーヒーが漏れはじめていることが確認されました。

よく見るともう結構な量が漏れていて、気付いたのは8分後でしたが、反対側のヒビからコーヒーが漏れていたので、実際には気づくもっと前から少しずつコーヒーが溢れていたと思います。

日光に晒して40分。かなり穴が広がった。

そして40分ほどトータルで実験を継続しましたが、最後の方にはヒビ割れがかなり大きな穴となり、コーヒーがだいぶ漏れてしまいました。

このとき、グラスに空いた穴はユーザー様のほうで確認された、アリの巣のような穴と酷似しており、おそらく直射日光が原因で氷のグラスからコーヒーの漏れが起きたものと分かりました。

氷の可能性は無限に広がっています!

氷のグラスにはところてんを入れても非常に美味しかったです!ちゃんとワンパック入りました!

さて、今回思わぬ弱点が判明してしまった氷のグラスですが、逆に室内なら常温化ではかなり長持ちすることもわかり、あまり強い日差しさえ避ければ、それなり暖かい部屋で使ってもすぐに融けて大変ということにはならなそうです。

さて、この氷のグラスへの挑戦を通じて、直射日光に対する純氷の反応や、意外なまでの常温での融け無さなど、氷の可能性について様々な考察を得られました。

これからも小野田商店は氷の可能性を追求し、氷を通じて皆さんに楽しんで頂ける製品を作り続けていきます!


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