#のののーと2
好きなものを手に入れてしまうのが嫌いだ。手に入れた途端それは熱を帯びなくなると思ってしまう。それは何故だろう。分からない。いつからだろう。分からない。
物心ついた時? という物心とはなんだ。物に心があるのか? あるか。物にも心はあるか。そうか、そうだな。おばあちゃんが言っていた気がする。うーん。おじぃちゃんだったかな。
「好きです。付き合ってください」
と帰り道。突然呼ばれて行ったらこれだった。
ひゃーどうしよう。好きではあった。今この瞬間までは。今はもう冷めてしまった。えらく顔が真剣だ。汗もかいている。そうだよなー緊張するわなーとテレビでも観ているようにその男の子を見ているが実際は現実で私が告白されている。そろそろリアクションとらないとまずい。あー。こういうときどうするんだっけ。あー。あー。
「カバってさ。結構獰猛らしいよ」
あー。間違えた。変な空気だ。これ。あー。どうしよ間違えたー。変な顔してるもん。あまり見たことない変な顔してるもん。そりゃそうよね。渾身のボール投げたらサッカーだったみたいな感じよね。そうだよねー。あー。あー。
昔、夏にセミを捕まえた。その時大事に大事に手で抱えて家に帰ったら手の中で死んでいたんだ。それでダメになったんだ。それで手に入れてしまうとダメだと思ったんだ。あーそうだった。思い出した。と先ほどの告白現場から離れアイスを食べながら思う。アイスが垂れて服に落ちる。
「あー」
これも。アイスを手に入れたから起こることである。