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当たり前は、実は、武器になる
東京のあるホテルのランチもディナーもお客さまの行列があった。緊急事態宣言の中、酒類提供 は控え、閉店は夜の 8 時。午後 6 時時点で 20 人弱の人並ん でいたから、5 時 30 分からのディナーは 2 回転弱だろう。窓越 しにみえる家族やカップルの表情から心待ちにしていた食事にと いう感じが伝わってくる。
お客さまは、ディナービッフェ付きプランが半分、ビッフェをめが けて来店された方が半分という構成だろうか。旅の楽しみの主 要な要素は食であり初めてその地を訪れる人にとっておいしいお 店を探すのは一苦労だから近くにあるにこしたことはない。しっか りとした工程で料理をつくるシェフの料理はおいしい。ホテルの 方々にとっての当たり前は、実は武器になる。
武器は徹底的に使っていけば差になる。九州のビュッフェレスト ランの繁盛店の社長、東京の寿司の食べ放題店で繁盛させて いる社長がそうだ。二人の社長は、職人やシェフがつくるおいし い食事を、好きなように選べて、楽しめるという、本質を生かし切っ て繁盛店につなげている。中途半端な原価コントロールではなく、 仕込みの良さで結果的に採算があう形で収益につなげている。
九州のビュッフェレストランの繁盛店の社長は、ニューヨークの ホテルではじめてビュッフェに遭遇した時に、シェフがつくったお いしいものを、好きなように選べて、楽しめる、こんな贅沢はな いと思ったそうだ。彼は地元食材の流通しにくい材料もフルに生 かして、ニューヨークのホテルでのビュッフェの感動を軸に商品を変えて再現し続けているから支持されている。
東京のすし食べ放題の繁盛店の社長は、「銀座で食べたら1万円、うちは、その感動を 5000 円で味わえるようにしている」 という。だから仕入れは厳密に、お客さまの食べる順番も、こち らが提案する形で、楽しさアップと原価をコントロールの両方を可 能にしている。分かりやすさを重視して食べ放題と打ち出しているが、急いでお腹いっぱい食べに来たお客さまに、すし屋の楽 しみ方を教える。すしの食べ放題ではなく、すし屋の感動放題 を目指しているからだ。
両店ともビッフェ形式を武器として徹底的に使いこなしている。 しかしホテルの方々はどうだろうか。ここまで使いこなしているだろ うか。昔、飲食店の業績向上支援をしていた際に「ホテルの 人が本気なったらかなわない、でも本気ではやってこない」と言っ ていた。彼が言うには外に向かって徹底的にアピールされたら太刀打ちできないとう意味だ。
彼の意見には一理ある、と私は聞きながらそう思った。しっか りと作りこまれた食事をしようとしたら、そもそもお店が少ない。最 低でも8000 円はする。その点ディナービュッフェ5000 円は優位 性のある商品だ。しかしホテルの人たちの多くは、ホテル来る人 を対象にしている。近くに住む人、勤めている人、近隣のホテ ルに泊まっている人をと対象を広げて考えていないのかもしれない。
東京のとあるホテルのランチもディナーにもお客さまの行列を見 ながら、このホテルは、近くに住む 人、勤める人、遊びにきている人、 すべてを対象に手を打ってきた結果がでているのを感じた。