地球と生命体と鉄:鉄シリーズ①
今回から数回にわたって、鉄と健康についてのお話をしていきます。
鉄は生命体には必須の元素ですが、それと共に、大変危険なものでもあります。
取り扱いを間違えると、命の危機にまで発展します。
そして、よく健康の話題として聞くのが、貧血の話です。
ある調査によると、女性の10人にひとりが貧血に悩んでいるといいます。
貧血と診断されると、必ずと言っていいほど付きまとうのが鉄の話です。
身近な存在である鉄という元素が、私たちの身体にどんな影響を及ぼすのか、
まずは大きなスケールでみていきましょう。
※この鉄シリーズは、以前僕がアメブロで掲載したものを加筆・再編したものです。
元素の中の鉄
今まで地球で見つかった元素は118個あります。
原子番号が増えるほど重くなりますが、鉄は原子番号は26で、元素記号はFeです。
鉄は地球の中でも4番目に多く、人体では12番目に多い元素です。
周りには鉄を使ったものが多く、そこら中にありますね。
数ある元素の中でも鉄はエネルギー的に安定しています。
これが大きなポイントになります。
鉄より軽い元素は、核融合して鉄を目指し、
鉄より重い元素は、核分裂をして鉄を目指そうとします。
元素が重くなっていくと、原子核の融合エネルギーは大きくなり、それだけ安定するようになります。
反対に鉄より重くなると、原子核の融合エネルギーは小さくなって不安定になります。
なので、核融合と核分裂の最終地点が鉄なのです。
まだ地球が燃え盛る惑星だった頃、核融合を繰り返して鉄が生まれました。
その核融合は磁場を生み出し、宇宙から降り注ぐ有害な宇宙エネルギーから地球を守っています。
これだけでも鉄が特別な存在だと分かります。
生命体と鉄
燃え盛る地球にしばらくした後、生命が誕生しました。
この時はまだ、地球には酸素がありませんでした。
しかし、新たな生命の誕生により大異変が起こります。
それがシアノバクテリアの誕生です。
シアノバクテリアは地球に降り注ぐ太陽の光と、地球に大量にある二酸化炭素を使い、
光合成をしてエネルギーを作り、その代謝産物として酸素を作り出しました。
酸素は活性酸素という猛毒になって、多くのものを酸化させていきました。
酸素が使えない大半の生命体は死滅していったといわれています。
私たちの祖先の細胞は嫌気性細菌という、酸素が使えない単細胞生物だったのです。
しかし地球に多かった鉄が、酸素に反応して水酸化鉄となり、それらの生命体を守りました。
ある時、地球に増え続ける酸素をエネルギーとして使える生命体が誕生しました。
それが僕たちの身体に共生しているバクテリアのひとつ、ミトコンドリアの祖先です。
ミトコンドリアは、周りの酸素をエネルギーにしてしまうため、周りの酸素が少なくなって自滅しかねません。
そこで酸素が苦手な嫌気性細菌に寄生して、酸素不足から守ってもらいました。
一方、嫌気性細菌はミトコンドリアに寄生してもらって、苦手な酸素から守ってもらうという、
共生関係になって融合した新たな細胞が生まれました。
それが人間をはじめとする多細胞生物の細胞の誕生(真核生物)です。
多細胞生物の誕生によって、酸素と栄養素から莫大なエネルギーを作ることに成功しました。
多細胞生物になって、身体が大きくなっていくたびにより多くのエネルギーが必要です。
そのため、効率よく酸素を取り込むシステムが必要でした。
そこで生命体は鉄を利用することにしました。
つづく
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