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やせ型あるあるに共通するものは?

前回はやせ型の人へのあるあるをたくさん書いてみました。

これらに共通するものは、ATPというエネルギー不足が考えられます。

ATP(アデノシン3リン酸)とは?
ATP自体がエネルギーではなくリン酸結合にエネルギーが保存されている

エネルギー不足になるとどうなる?

エネルギー不足に陥ると糖質のエネルギーが枯渇して、血糖値が低下し、コルチゾールやアドレナリンというストレスホルモンが分泌されます。


コルチゾールやアドレナリンには、脂肪や筋肉、骨、組織を分解させる作用があり、それによって低下した血糖値を補うようになっています。


その結果、身体を削ってしまい、身体がやせていきます。
この自分の身体を分解させてしまうことを異化といいます。

エネルギー不足でストレスホルモンが放出される

お腹が減ったはずなのに食べるタイミングを逃して、いつの間にかお腹が減ったのを忘れていた。
という経験がある方は、異化が起こっているので要注意です。

もっと大きなものであるあるを捉えると?

やせ型あるあるに共通するものをもっと大きな全体でとらえると、エネルギー産生を司る器官の甲状腺の機能が低下していると考えられます。


ただし、甲状腺機能低下症(橋本病)も亢進症(バセドウ病)も、ある視点から見ると、同じ症状です。
亢進症の血中に多いことは、過剰に分泌されているという意味ではありません。
甲状腺機能は、血液検査での甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの数値だけでは判断できません。


ここが難しいところなのですが、甲状腺機能の低下で様々な症状が起こるため、その症状が改善されたかどうかで判断していくのが、最善だと考えています。
前回紹介した多くのあるあるに該当します。

甲状腺機能低下症

なお、本当の意味での改善には身体の仕組みを理解して、改善を始めても5年以上の長い年月がかかります。
短期間で改善できる方法はありません。短期間での改善は強い抑制を意味し、危険な方法です。

どうしたらやせを改善できる?3つの方法の提案

やせを改善するには、ATPのエネルギー源となる糖質をなるべく切らさないのが重要です。

ひとつめは、ストレスホルモンを分泌させないこと。
これは前述したとおり、血糖値の低下で脂肪や筋肉を異化させないのが重要です。
糖質のエネルギーの枯渇が低血糖になり、異化を起こすので、低血糖を防止するためです。


ふたつめは、甲状腺機能を低下させないこと。
ブドウ糖の代謝と甲状腺機能には密接な関係があります。[1]


マウスの実験では、砂糖を与えたマウスは甲状腺機能が回復しています。[2][3]
逆に高脂肪食では複数の動物が膵臓破壊と糖尿病で死んでいます。[2]
また違うマウスの実験でも高脂肪食で甲状腺機能が悪化しています。[4]


人間を対象にした実験では、ケトジェニックダイエットと呼ばれている高脂肪・低糖質食を12週間続けたところ、甲状腺機能の低下が確認されています。[5]


同じく高脂肪・低糖質食を3週間以上続けた実験では、甲状腺機能が低下(活性型の甲状腺ホルモンT3が減って、非活性型のT4が増える)しており、反対に高炭水化物食では甲状腺機能に変化がありませんでした。[6]


甲状腺機能が低下した人に、糖尿病の有病率が高いことが明らかとなっています。[7][8][9]
甲状腺機能が低下すると、うまくブドウ糖が代謝できなくなるからです。


そして高脂肪食で甲状腺機能が低下する理由は、血中の遊離脂肪酸が甲状腺ホルモンT3の細胞への取り込みを阻害するからです。[10]
(これが血中に多い=過剰に分泌されていると誤認している)


また血中の遊離脂肪酸濃度が高いほど、インシュリン抵抗性と膵臓の破壊が関連していることからも[11]、ひとつめの異化による脂肪分解や高脂肪食には注意が必要です。


関連記事のやせた女性は糖尿病になりやすい!?(アメブロ)を参照して下さい。

みっつめは、タンパク質を同化するにもエネルギーが必要なこと。
ATPというエネルギーの産生そのものに、甲状腺ホルモンが関係しています。[12]


甲状腺から分泌される甲状腺ホルモンT3には『同化』という重要な役割があります。
同化とは、外から取り込んだものを自分の身体の一部にすることです。


筋肉をつけるにはタンパク質をたくさん食べろと言われていますが、タンパク質をたくさん食べても、エネルギー不足では筋力が低下します。[13][14]
それは、ATP不足でタンパク質の合成が低下してしまうからです。[15]


タンパク質を食べ過ぎると低血糖が起こりやすくなり、エネルギー確保のためにタンパク質分解が起こりやすくなります。[16]


糖質はタンパク質の量に対しておよそ3倍を食べると、低血糖が起こりにくくなります。


糖質には直接的にエネルギーになりやすい単糖類と二糖類がオススメです。
ただし食べ過ぎやでんぷん質も適度に摂るなどの工夫が大切です。
糖質を摂ると病気になると言われていますが、僕は糖質を摂らないことで病気になる人をたくさん見てきています。


僕も糖質制限ダイエットで身体がやせ細ってボロボロになった一人です。


詳しく解説すると、この記事だけでは書ききれませんので、関連記事をご覧いただければ幸いです。

【関連記事】

【外部関連記事】

【参考文献】

[1]Links between Thyroid Disorders and Glucose Homeostasis.
Diabetes Metab J. 2022 Mar; 46(2): 239–256.

[2]Overnutrition in spiny mice (Acomys cahirinus): β-cell expansion leading to rupture and overt diabetes on fat-rich diet and protective energy-wasting elevation in thyroid hormone on sucrose-rich diet.
Diabetes/Metab Res and Rev.vol16,issue 2;p94-105.

[3]Sucrose feeding effects inhibition of gamma-glutamyltranspeptidase in the liver of the rat: possible mediation by thyroid hormone.
Int J Biochem Cell Biol . 2003 Jan;35(1):51-60.

[4] High-fat, simple-carbohydrate diet intake induces hypothalamic-pituitary-thyroid axis dysregulation in C57BL/6J male mice.
Appl Physiol Nutr Metab . 2018 Apr;43(4):371-380.

[5]Effects of modified Atkins diet on thyroid function in adult patients with pharmacoresistant epilepsy.
Epilepsy Behav . 2020 Oct:111:107285.

[6] Could the ketogenic diet induce a shift in thyroid function and support a metabolic advantage in healthy participants? A pilot randomized-controlled-crossover trial.
PLoS One . 2022 Jun 3;17(6):e0269440.

[7] Frequency of thyroid dysfunction in diabetic patients: value of annual screening. Diabet Med. 1995;12:622–7.

[8]Thyroid dysfunction in patients with diabetes: clinical implications and screening strategies. Int J Clin Pract. 2010;64:1130–9.

[9]Type and extent of somatic morbidity before and after the diagnosis of hypothyroidism: a nationwide register study. PLoS One. 2013;8:e75789.

[10] Inhibition of thyroid hormone binding to the nuclear receptor by mobilization of free fatty acids.
Horm Metab Res . 2001 Mar;33(3):131-7.

[11] Recent Insights Into Mechanisms of β-Cell Lipo- and Glucolipotoxicity in Type 2 Diabetes.
J Mol Biol . 2020 Mar 6;432(5):1514-1534.

[12] Thyroid Hormone Mediated Modulation of Energy Expenditure.
Int J Mol Sci. 2015 Jul; 16(7): 16158–16175.

[13] Pronounced energy restriction with elevated protein intake results in no change in proteolysis and reductions in skeletal muscle protein synthesis that are mitigated by resistance exercise.
FASEB J . 2018 Jan;32(1):265-275.

[14] Hypoenergetic diet-induced reductions in myofibrillar protein synthesis are restored with resistance training and balanced daily protein ingestion in older men.
Am J Physiol Endocrinol Metab . 2015 May 1;308(9):E734-43.

[15] A hierarchy of ATP-consuming processes in mammalian cells.
Biochem J . 1995 Nov 15;312 ( Pt 1)(Pt 1):163-7.

[16] Insulin Regulation of Proteostasis and Clinical Implications.
Cel Metab . 2017 Aug 1;26(2):310-323.

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