「お粗末様」と、言いたい。
あいさつことば
私は今は育児中の身で、母として主婦としての役割が、生活の中ではとても大きい。
その中で意識して口にするあいさつの言葉がある。
「召し上がれ」と「お粗末様でした」だ。
なんとなく古めかしいこの言葉が、意外と私は好きで、積極的に使っている。
なんでそんな言葉を使うのかと言うと、私の伯母への思い出がある。
伯母の言葉遣い
伯母の家(つまり私の母の実家)は商売人の家だったため、いつも忙しそうだった。伯母はお店での仕事の合間に家事をしていた。
私はいまでこそ人並みに料理ができるけれど、昔は全くできず、あまり好きではなかったけれど、人が料理をしている姿を見るのは好きだった。だから、帰省中には伯母が料理している様子を時々見ては楽しんでいた。
どちらかというと「昔ながらの家」という家柄で、今で言うとやや古い習わしも大事にしているような家だった。
その伯母が、食事が終わるといつも言っていた。
「お粗末様でした」という言葉を。
私の実家ではその言葉を使うことがなかったので、いつも帰省中は新鮮な気持ちでその言葉を聞いていて、とても印象的だった。
そのため幼心に「ごちそうさま」と「おそまつさま」はセットなんだなと思っていたけれど、伯母以外からは言われたことはなかったので、なんか誰も知らない特別な挨拶な気がしていて、自分でもいつか使ってみたい言葉として、ひっそりと心にしまっていた。
おそまつさまが、言える喜び。
大人になり、家庭を持ち、人に料理を振る舞うようになった今。私は「お粗末様でした」と言うようにしている。
実は私は、あまり食べることに興味がない。作ることが好きなのだ。作って、振る舞って、「美味しい」と言ってもらえることが好きなのだ。
そしてその最後に「ごちそうさま」と笑顔で言ってもらえることが幸せであり、その幸せな気持ちのお礼として「お粗末様でした」と言う返事をする。
この一連の流れが、実は日々のわたしの楽しみでもある。
将来わたしが歳を重ね、いろんなことが出来なくなると思う。食べられなくなることもあるだろう。
けれどきっとわたしにとっては、食べられないことより、作れないことの方がストレスになると思っている。
「おそまつさまでした」をいつまでも言える自分でありたい。
「食」への想いをことばにしよう
「食」に対しての想いは、本当に人それぞれなんだな、とこの仕事を通して感じている。
さまざまな人の経験をとおして、それぞれの「食」に対する想いがある。それを尊重し、ひとりひとりに合わせた生活を最期まで送ることが、どれだけ難しいかも、感じている。
だからこそ、みんな言葉にしよう。
あなたが大切にしていることを、言葉にして伝えよう。
あなたの中にだけひっそりと仕舞っていても、いざという時はそれに気づいてもらえない。
それなら、今からでもいい。伝えよう。
あなたの「食」に対しての思いを。
誰と食べたい?
何を食べたい?
どんな食事が好き?
どんな場所が好き?
どんな景色をみていたい?
あなたの思い描くだんらんはなんですか?
だれもが自分のだんらんを最期まで大切にできる。
そのために、私たちのような食支援活動があるのだと感じている。
誤嚥ケアを社会の当たり前に。
一般社団法人オンライン臨床では、専門職にとっての当たり前を広めるため誤嚥ケアの10個の基本をまとめた「誤嚥ケア検定」を作成した。
この記事の第1章「とろみ剤を一歩進めよう」の記事は無料で公開している。その理由は至ってシンプルだ。
誤嚥ケアを社会の当たり前にするため。
ぜひ大切な方とのだんらんの時間を過ごすためにも、読んでもらえたらと思う。