第6話「【簡単】OKをもらう確率を上げるデートの誘い方、してる?」
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鬼、壁に刺さっている。
メガネをかけて、ぶあつい本を読んでいる。
うさぎのミミ子がそのそばで座って、虫かごを持っている。
ミミ子、虫かごの中を木の枝でつついている。
(メガネを取って、本をとじる)
今日は、
デートの誘い方を教えたる。
当然、普通に誘う方法ちゃうで。
誘い出せる確率がかなり高くなる方法や。
……(鬼を見る)
デート、ちゃんと誘ってるか?
デートは行かんと
なかなか親密度が上げられへんで。
……(うつむく)
親密度が上げられへんままやったら、
おまえは一生
さみしい一人ぼっちのメスウサギやで。
……ううっ……ううううう……
でもちゃんとデート行って、
オスウサギたちとの親密度を上げたら、
おまえの周りには
いつもオスウサギがおって、
ちやほやされて、
まわりのメスウサギどもに対して
優越感が得られるで。
ごごごご、
500人のオスウサギと
500本の高級ワインに囲まれながら、
ホスト界のナンバーワンウサギに、
シャンパンまみれの赤いオープンカーを
500台プレゼントされてまうような
キャバ嬢になれるか?!
なれる!
ウワア……!(鬼に近づく)
だからおまえは
オスウサギをデートに
誘わなあかんのや!
……(うつむく)
どないした?
……(虫かごの虫をつついている)
見た目に自信なくても大丈夫やで……?
……(虫かごの虫をつついている)
その虫も
つれてってもええで……?
……(虫かごの虫をつついている)
簡単やで……?
ハ!
ミミ子、虫かごを抛り捨てる
いそいそとポケットからメモ帳と鉛筆を取り出す。
なんや!
難しいと思って思い悩んでたんか!
ところでさっきの虫は、
投げていいんか?
はよう!
お、おお。
まず1つめの方法は、
候補を3つ挙げて誘うんや。
候補を3つ、挙げる?
例えば、
「パフェでも食べに行くか〜」って
流れになったとしてさ
えええっ?(食いつく)
「どこに行く?」って聞いたりしてもうたら、
相手はどんな店があったっけ~とか、
どこにあったっけ~とか、
いろいろ考えなあかんくなるやん。
ほんでなんかめんどくさくなって
「もういいや、今日行かんとこ」
ってなってまうかもしれへん!
ハアアア!?
だから、
最初っから候補を3つぐらい
挙げてあげるんや!
「パフェでも食べに行くか~」
って流れになったらすかさず
「鶴橋のカナリヤか、
上本町(うえほんまち)のなかたに亭か、
桃谷のマンデリンかどれがいい?」
っていう風に聞いてあげるんや!
カナリヤがいい!
たとえば、やから。
おまえ選ばんでいいから。
ていうか、おまえが聞くんや。
候補を3つぐらい挙げてあげたら、
相手は想像しやすいし、
選ぶだけでいいから、
どれかを選んでくれるはずや。
「それやったらマンデリンがいいな~!」
とかな。
ほんならおまえは、それを逃さず、
「いいやん! そこ行こ!」
って誘うんや!
うーわ、話合わんヤツやった。
絶対、カナリヤやのに。
アカン。
もう、候補からカナリヤはずしとこ!
自分の欲が出すぎてまうからな!
「上本町のなかたに亭か、
桃谷のマンデリンか、
森之宮のほのか」
のどれかにしよ!
……んー……
一気に興味を失わんといて!
これは、相手に選ばせるところに意味があるんよ!
行く場所を相手に選ばせて、
「選んでもうた手前、行くしかないか」
って思わせるテクニックやねんから!
ああー……
もっと興味持って!
他の店もおいしいよ!
ほんで鬼は、
誘うときにもう1つ、
技を使ってたんやで。
それは、
ダブルバインドっていうテクニックなんやけどな……
ダ、ダ、ダブルバイ、ダブルバイ、
ダブルバイ貝の煮つけや……!
ダブルバインドって、
《二重拘束》って意味でな、
選択肢を与えているようで
与えてない状態のことやねん。
選択肢を与えてない?
最初に鬼は
「上本町のなかたに亭か、
桃谷のマンデリンか、
森之宮のほのか、
どれがいい?」
って聞いたやろ。
これは、
どれかを選択させてるようで、
相手から
「NO」っていう選択肢を奪ってるんや。
だからもう相手はどれか選ぶことで
「YES」って言うしかなくなってるんや。
ななななな……!
これがもし、
「上本町のなかたに亭か、
桃谷のマンデリンか、
森之宮のほのかで、
パフェ食べに行かへん?」
って聞いてもうたら、
「今日は行かへん」
って言われてまう可能性があるからな……!
……
どないした?
パフェ食べに行こう~って流れなんか……
ん?
ならんもん……
ミミ子、
ほうり投げた虫かごを取りにいく。
虫かごの中の虫を細い枝でつつく。
おい……
もう一個いい方法教えたる。
……(虫かごの虫をつついている)
……そんなにめちゃめちゃ
仲良くなってなくても使えるで!
……(鬼を見る)
……誘い出せる確率、高いで!
……(鬼を見ている)
簡単やで!
ハ!
ミミ子、虫かごをほうり投げて、
メモ帳とえんぴつを、かまえる
お、おお。
あの虫、大丈夫?
ほんで!?
お、おお……
あんな。相手にな、《おすすめのごはん屋さん》を聞くんや!
……ごはんやさんを、聞く?
例えば、
「文太郎くん、
おすすめのお好み焼屋さん知らん~?」
って聞くやろ?
ほんなら、
「やっぱ鶴橋の風月ちゃう?」
って教えてくれるやろ?
そしたらまた、
「鶴橋の風月な!
風月って、
どのメニューがおすすめなん?」
って聞くんや。
ほんなら
「意外とキムチポッカがうまいんや!」
って教えてくれるわ。
そこで、おまえは言うわけや。
「え! キムチポッカ!?
良さそうやん!
ほんなら風月、
今度一緒に行こうや!」
ってな!
こういう風に誘うんや!
……(鬼を見る)
ほんなら相手は、
おすすめした手前があるから、
なかなか断りづらいんや。
だから結果、
オッケーされやすくなるで!
……(うつむく)
どないした?
……お好み焼、
昨日食べたから、
そういう気分じゃない。
いや、今から行くんじゃないねん。
それに、
お好み焼屋じゃなくてもいいんや!
これは例やから!
パスタ屋でも定食屋でも焼肉屋でも、
いいんや!
でもおまえの場合は
「オスウサギ」に
聞くことになるやろ?
だからその
オスウサギが答えてくれそうな種類の店
がいいし、
行ったときに雰囲気がいい店やったら
2人のムードも良くなるやろから、
そういうジャンルを選んで
聞いた方がいいで。
……
どないした?
クレープ屋でもいい?
ええよ!
ハア!(うなずく)
な!?
普通に
「今度どっかごはんでも行かへん?」
って言うより、
だいぶデートにつなげられそうやろ?!
……(メモ帳を下げる)
どないした?
ミミ子、ほうり投げた虫かごを
取りにいく。
細い枝で、虫かごの中の虫をつつく。
お、おい……どないしたんや?
簡単ちゃうかったか?
恥ずかしい技やった。
え?
我は、
一緒に行きたいから行く、
ってなってほしい。
断りづらいから行く
ってなんか、恥ずかしい……
……!
鬼、その虫かごをつかもうとする。
が、刺さっているため、届かない。
くっ……!
くく……!
ちょ……!
それ、貸して……!
なんで?
ええから……っ!
ミミ子、虫かごを鬼に渡す。
フン!
鬼、虫かごを、ほうり投げる。
アッ!
おまえは!
なんもせんと
相手に「一緒に行きたい」って
思わせられんのか?!
虫つついてて、
相手に「一緒に行きたい」って
思わせられんのか?!
しかも、
おまえの目標は
「一緒にパフェ食べに行く」
じゃないはずや!
オスウサギにまわりを囲んでもらって、
ちやほやされて、
メスウサギたちの優位に立つことやろ?!
さらには、
500人のオスウサギと
500本の高級赤ワインに囲まれながら、
人気ナンバーワンオス芸人ウサギさんに
シャンパンまみれのハイヒールを
なめてもらえる
キャバ嬢になりたいんやろ?!
その目標のためには
まず一緒に過ごす時間を増やす!
自分のことを意識してもらう!
そこからやっと
気に入ってもらえるか、
気に入ってもらわれへんかの
戦いが始まるんやろが!
「一緒に行きたいから行くって
なってないからな~…」
何様のつもりやー!
……
自分の虜(とりこ)にしたら、
なんぼでも
「一緒に行きたいから行く」で
一緒に行くようになるやないか。
その状態になるための
作戦を立ててるんちゃうんか?
……
……鬼が手助けしたるやんか。
ミミ子、鬼の頭をチョップ!
うえっ!?
虫取ってこい!
えっ……
虫取ってこな
我は許さんぞ!
えっ、ご、ごめん……
で、でも……
鬼、動けない。
知らん!
ミミ子、出て行く。
ああ、ああ……
鬼、動こうとするが、動けない。
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今日のまとめ
★デートに誘いだせる確率が上がる方法
①選択法
=3つぐらい候補を挙げて
その中から選んでもらう!
※選択肢が少なければ相手は選びやすい!
②ダブルバインド
=どれを選んでも「YES」になるよう
質問する!
例)
「月曜か水曜、もしくは
それ以外やったらいつがいい?」
③オススメのごはん屋さんを聞く!
→教えてくれたら、
「じゃあその店行こう〜!」って誘う!
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