第８話「恋愛上手が多用する心の距離を一気に縮める8つの話題！（前編）」

鬼の人生攻略テクニック

2021年1月12日 13:34

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　鬼、壁に刺さっている。
　ぶあつい本を読んでいる。
　うさぎのミミ子がそばで蚊取り線香に火をつける。

（本を閉じる）今日は、
相手が心を開いてくれて、
一気に距離を縮められる方法を
教えたる。

エッ……？（鬼を見る）

結構しゃべったのに、
「なかなか心開いてくれへんな～」
とか、
「よそよそしいな～」
とか思ってる相手、おらんか？

ハア……！（うなずく）

やっぱりなぁ。

あいつらな、
ほんま
めちゃめちゃ人見知りの
恥ずかしがり屋さんなんやで！

ちゃうんや……

え……？

それ、話す話題がアカンねん……！

わ、わ、わ、話題……？　
（メモ帳とえんぴつを取り出そうとする。
が、何かに気付いて、手をパンッと叩く。
手を見る。
なにもいない。）

くそが！
（天井を見る。
蚊取り線香の煙を仰ぐ）

ゴホ、ゴホ。ゴホ、ゴホ。

……（メモ帳と鉛筆を構える）
話題とかなんとかかんとか言うてた？

言うてたよ。
おまえ、
仲良くなりたい相手にも
天気の話とか、気温の話とか、
してるんちゃうか？

そうやで。
天気とか気温は
誰にでも共通する
世界のエレメントやからな。

お、おお……せやな……。

でも、
天気とか気候の話ばっかりしてても、
いつまでも距離は縮まらんねん！

えええ？！

距離が縮まらんかったら、
話もすぐ続かんくなるし、
すぐ気まずい感じになるし、
仲良くなんかなられへんし、
延長料金ももらわれへんど！

え、えええええ、延長料金？

キャバ嬢になったときや！

ハア！

話も続かん気まずいヤツと
長い時間、一緒にいたいと思うか？　
そんなもん、すぐお会計や！

アア……！　アア……！　アアア……！

でも、
お客とおまえの距離が縮んだら、
いろんな話をおまえとしたくなるやろ！　

いつまでたっても話は尽きへん！　
まだまだしゃべりたい！　
時間になってもまだしゃべりたい！　
一緒におりたい！　

そうなって
「延長で！」
って言われるんや！

ヒョオォォォ！　
フゥフゥ！
（立ち上がって、小躍り。
蚊取り線香の煙が拡散される。）

ゴホ、ゴホ。ゴホ、ゴホ。

……フウー（座る）

だからとにかく
相手との距離を縮めて、
好感度の高い会話がしたいわけやな？

したい。

せやろ？　
相手との距離を縮めるためにはな、
相手に自己開示をしてもらわなあかんねん。

じ、じこ、じこかい、じこかい、
じこ海藻サラダや……！

自己開示っていうのは、
プライベートとか、
そういう深い話をすることや。

仲良くなりたい相手とせなあかん話題は、
天気とか気候じゃなくて、

《自分の大切な部分に関わる深い話》
なんや！

ふかい、はなし……

おまえさ、
自分のプライベートな話ってどんな相手にする？

え？　んーーー、鏡。

ほほう……なかなかやな。

夜。
ろうそく一本置いて、見つめ合うねん。

ほほう。すごいな。

まあ普通はな、
そういう深い話する相手って、
「仲がいいやつ」とか、
「信頼してるやつ」とかやねん。

変なヤツ……

おまえほどではないで。

とにかくさ、
信頼もしてない人に
自分のプライベートな話って、
まあせーへんやん。

だからおまえも鏡にするんやろ。

もちろんそうよ。

だから、
仲良くなりたい相手とも、
仲良くなって信頼関係ができてから、
そういう話しようって思ってるやろ？　

もちろんそうよ。

でもそんなん言うてたらさ、
仲良くなるのにも時間かかるしさ、
思い通りに仲良く
なられへんかも知れへんしさ、

ほんなら、

「いつになったら
　プライベートな話
　してくれるようになるん？！」

って思わん？

は……ほんまや！　
どうすんねん？！　
鬼、どうすんのや？！

だから、
こっちからテクニック使って、
仲良くなる前にまず
自己開示させてやろうや
っていう話やねん。

ななな？！

まだ仲良くなってないうちから、
自己開示させる……
きひひ……。

これ、させたらどうなると思う？

…………自殺。

は、せーへんねん。
脳の中で
《認知的不協和の解消》
が働くねん。

に、に、にん、にんちて、にんちてき、
にんちテキサスバーガーや……！

《認知的不協和の解消》っていうのは、
《一貫性の法則》っていう、
自分の行動、発言、態度、信念とかを
一貫したものにしたいっていう
人の心理の１つやねん。

ん、んん？

例えば、
自分が考えてることと
行動に
矛盾が起こったときにな、

この矛盾の不快感を
解消したいと思って、

脳は、
自分の考え方を変えてしまうんや。

今の場合で言うと、

「ミミ子さんとはそんなに仲良くない。
　なのに自分は自己開示をしている。
　なんでや？！」

この矛盾を
脳みそが解消しようとして
こう考えるようになるねん。

「そうか。
　きっとワシは
　ミミ子さんのことを信頼してるから、
　自己開示してるんや！　

　ワシはミミ子さんのことを信頼してる！」

ななな？！

だから、
相手に自己開示させることができて、
それが続いたら、
自分に対して
距離が近くなったように
思わせることができるんや！

ななな……！
（しりもちをつく）
ののの、脳みそが……！　
そんなことを……！

すごいやろ？　
で、
この自己開示の内容が
よりプライベートで、
深ければ深いほど、
一気に距離も縮められるし、
特別な存在に近づくんや！

ヒョオォォォー！
（立ち上がる）

ご指名ありがとうございまーす！　
フゥフゥ！
（小躍りし、蚊取り線香の煙が拡散する）

ゴホ、ゴホ。ゴホ、ゴホ。

……フウー（座る）

だから今から、
相手の
《より深いプライベートな話を聞きだせる話題》を
８個も教えたるわ！　

この８個は、
社会学者のゲイリーウッドさんが
研究によって導き出したものやからな。

より深い、プライベートな、
話を聞き出せる……？

話題の１つめはな……

ぬあ！（鬼の頬を平手打ち）

ぎゃ！　なんや？！

そんな話題、
まだ仲良くない段階で
喋ってくれるわけないやん！

「そんなことまだおまえに言いたないわ、
　きしょいイモメス、
　踏み込んでくるなや」

思われるやないか！　

すごいネガティブな想像するやんか！

ごめんなさいぃ……
もう二度と踏み込みませんからぁぁぁ……
イモメスに許しを……
この汚らしいイモメスにお許しを……！

おい！　おい！　
誰に謝ってんねん。
大丈夫や。
その話題について
先におまえがちょっとしゃべるんや。

我が、ちょっと、しゃべる？

それから相手にも話を振ったら、
返報性の法則が働いて、
相手もしゃべってくれるわ！

へ、へ、へん、へん、へんぽう、へんぽう、
へんポーランド料理や……！

返報性の法則は、
なんかしてもらったら、
こっちもなんか返さなあかんような気になる
心理のことや。

例えば、
毎日隣のおばさんがキュウリを
持ってきてくれるとするやん。

おばさんは

「キュウリの畑あってね、
　毎日とれるんで、
　全然気にしないでくださいね」

って言ってくれてたとしても、
なーんか、

「えー、でも、
　なんか返さなあかんのちゃうかなー」

って気になるやろ？

キュウリ、食べたなってきたなぁ……

だから、
おまえが先に
ちょっと話さなあかんのんやけど、
長々しゃべりすぎたらあかんで。

「アタシはな」
「アタシはな」
って自分のことばっかり
しゃべりたがるヤツはモテへんからな。

いけるか？

……（少し考えて、うなずく）

よし。
じゃあ、もう話題を聞ける準備できたな？　

できた。

じゃ、話題の１つめは、
「お金や健康の心配」や。

お金や健康の心配……（メモする）　

こんな話、
信頼してる人ぐらいにしかせんやろ？　

これが聞きだせたら、
相手が今抱えてる不安を共有できるで。

鬼、刺さってるとこ、
大丈夫か？

お、おお。
さっそく健康の心配してくれてありがとう！　
これは、大丈夫や！　

で、
この話題で
自分がちょっとしゃべって
質問するんや！

「鬼、
　今月ぜんぜんバイト入られへんくて
　マックブックプロ、
　また遠のいたわ～！　
　おまえ、わりと働けた？」

とか

「鬼さー、
　子鬼の頃から目悪くてな、
　今度とうとう
　レーシックしよう思ってねん。
　おまえ、目は良いほう？」

って感じや！　

我は視力２３．０や。

なんか怖いな！　
それ、靴のサイズちゃうか？

靴のサイズは２４．０やんか～！

お、おう……。

な？　
鬼が先に話したから、
しゃべりやすいやろ？　

それから、
「小さい頃」の話するんもええで。

相手も同じように
子供の頃の話してくれたら、
より深い話も聞けるかもしれへんで。

おい、やってみ。

えっ……えっと……。

我、
子ウサギの頃、
左手の小指の骨折ったことあってな。

今でも左手の小指、
良く折れるねん。

おぬしは、
よく折れる骨はどれや？　

ふふ、ふふふ……

なんでそこで笑うんや？　
折られそうや。
それに、ほとんどの人、
よく折れる骨とか
あんまりなさそうやけどな。

あ、鬼、ええの思いついたで。

「鬼、
　ここに子鬼のころから
　アザがあってな、
　ちっちゃいときから嫌いやねんー。
　なんかそんなアザとかある？」

とかどうや？！　
アザがなかったら、
ホクロにしても使えそうやな！

……うっ、ううううう……！　
うううううう！（メモする）

いいの取られたからって
泣いて悔しがらんでいいで。
ここで出たやつ、
実践で使っていいんやで。

使う。

じゃ、２つ目の話題。
それは「人生において幸福になれること」や。

人生において、こうふくに、なれること？

これは、
自分が何をしている時が
一番楽しくて幸せを感じてるか、
って話や。

例えば
「鬼な、
　おにぎり食べてるとき、
　ほんま時間忘れてまうし、
　めちゃめちゃ幸せなんやー」
とかやな。

時間忘れて、おにぎり？

せや。
ちょっとずつ
いつまでも噛んでまうんや。

白いお米は
噛めば噛むほどうまいからなぁ。

こういう風に
《理由》も添えれたら、
相手も
理由付きで話してくれるかもな。

やってみ。

えっ……えっと……。

我、
木の皮をめくって
そこにおる虫を集めるのが
子ウサギの頃から好きやねん。

なんか、
布団引っぺがして子供を起こす
親の気分が味わえるから。

へへ、へへへへ……

なんやその話……

おぬしはどんなことが好き？

お、おお。
えらい角度で急にボール来た！　
みたいな気分になるな。

……ちょっと、
こうしてみたらどうや？

（ミミ子の声真似で）
「夏になったら思い出すねんけどさ、
　我、
　子ウサギの頃
　よく木の皮をめくって
　そこにおる虫を集めてたわ～。

　なんか、
　布団引っぺがして子供を起こす
　親みたいちゃう？　
　
　虫ってかわいいから
　今でも結構集めてまうねん」

って、
子ウサギの頃の話やって強調したら
ちょっとマイルドになって、
相手、答えやすいんちゃう？