もへもへ「あんまり政治思想はないです」←ガッツリあるだろ
今回はTwitterで活動している「もへもへ」(@gerogeroR)というユーザーに対して抱いているモヤモヤにまつわるお話です。
もへもへ氏は政治に対する「ご意見番」的な立ち位置を獲得しているユーザーで、5万人ものフォロワーを抱える彼のツイートには万単位のいいねが付くことも珍しくありません。
以前に取り上げた黒瀬深と同じ、いわゆる「ネット論客」であり「政治系インフルエンサー」の1人です。
ですが、彼は明確に「右寄り」な黒瀬氏とは異なり、自らの政治思想についてはかなり曖昧な立場を表明しています。
本人曰く
「実はあんまり政治思想はないです」
とのことですが、はっきり言って全くそんなことはありません。
もへもへ氏はどう考えても右寄りです。
もっと正確にいえば、野党や左派に対しては言動を小馬鹿にしたり問題点を逐一指摘する一方で、安倍政権や自民党の不祥事や問題発言にはことごとく甘く、擁護する傾向があるのです。
一言で表すなら「右に優しく左に厳しい」という感じでしょうか。
良い例があるので紹介します。
昨年4月、もへもへ氏はコロナ禍の初期に政府与党が感染拡大防止策として打ち出した公立学校の休校措置について一部野党から懸念の声が上がったことを挙げ、それを理由に野党を遠回しに非難するようなツイートを投稿しています。
はっきり言って自分も野党が休校措置に反発したことは完全に悪手だったと考えているので、彼のこの主張自体には賛同します。
しかし、彼が休校措置反対に絡めて野党を批判した9日後の4月18日、かねてより反自民党の立場を明確にしている「法學院狂魔」氏(@Adepteater029)が以下の2枚の画像を用いて当時の安倍政権を痛烈に批判します。
当該ツイートは1万4千件を超える「いいね」を獲得し、政府与党に否定的な層を中心に多くの賛同を得ますが……
「あんまり政治思想はない」はずのもへもへ氏はどうやらこのツイートで安倍政権が袋叩きにされている状況に納得いかなかったらしく、わざわざ件のツイートを引用RTして持論を展開します。
言うほどしゃーないか?
まあ、とりあえず「しゃーない」という前提で話を進めます。
確かにもへもへ氏の言う通り、この時点では世界中に「さすがにパンデミックは起こらない」という雰囲気が漂っていたことは事実です。
だから日本の政府与党が対応を見誤ったのもしゃーない、という主張も理解できなくもないです。
ですが、それなら何故、政府与党や世界中の国々と同じくコロナの影響を甘くみて休校要請に異議を唱えた野党に対しては「しゃーない」論を適用しなかったのでしょうか?
当時はまだ、安倍首相も含め与党内からは「オリンピックを年内に完全な形で開催したい」という意見が出ていたような時期です。
「コロナの流行は近いうちに何とかなる」
そんな雰囲気の中で判断を誤ってしまった政府与党への批判を「しゃーない」と許容できたのに何故、野党の失敗はわざわざ蒸し返してまで嫌味を書く必要があったのか。
理由は一つしか考えられません。
彼にとって野党は「なるべくディスりたいもの」であり、安倍政権や自民党は「なるべく擁護したいもの」だから。
この「右に優しく左に厳しい」傾向は、彼のツイートを1週間も遡れば誰しもが感覚的に理解できるはずです。
これほど顕著に「あんまり無い」はずの政治思想が溢れ出してしまっているにもかかわらず、彼が本音を誤魔化し続ける理由は何なのか考えていきましょう。
まず、既に何度も取り上げた「あんまり政治思想は無いです」という一文。
これはネット右翼ご用達のワードとして知られる「右でも左でもない普通の日本人」と通ずるものあるものと考えます。
Twitterには「右でも左でもない普通の日本人」を自称するアカウントがいくつも存在しますが、そのほとんどが政治的には極端に右側に偏った主張を支持していることは周知の事実です。
そんな普通ではない人々が「普通」を自称する理由は概ね以下の2つで説明できます。
これら普通の日本人ムーブについては、そもそも本当に普通の人がわざわざ「普通」を自称するわけないだろ、というツッコミが入りがちです。
もへもへ氏がやっていることもこの普通の日本人ムーブの延長線上にあるもので、本当に政治思想があんまり無い人はわざわざプロフィールに「あんまり政治思想は無い」などと書く必要性もあんまり無いですよね。
政治思想を持つこと自体は悪いことではありませんから、彼も日頃の投稿内容に沿って「このアカウントは自民党や右派に寄り添い、野党や左派を積極的に茶化します」とプロフィールに書けば良いのです。
実際のところ、フォロワーのほとんどは彼のそういった言動を期待しているわけですから、既に見え見えの本音を改めてさらけ出したところで「騙された!」と怒ることもないでしょう。
しかしながら、それでもなお当の本人が頑なに政治思想の濃さを認めようとしないのは
「中立アピール」
を行うためだと考えられます。
この中立アピールこそ、もへもへというネット論客を価値あるものにする重要な鍵となっているのです。
先ほど少し触れた「普通の日本人」の話に戻りますが、我々が何かを主張する際には、それが政治的か否かに関係なく「発言者の立場」というものが非常に重要視されます。
例えば「首都機能を東京から岐阜県の東濃地方へ移転しよう」という主張をする人がいたとします。
個人的には極めて優れた提案であり今すぐにでも実行に移すべきだと思いますが、残念ながら岐阜県の魅力を知らない層が圧倒的多数を占める現在の日本国内では賛否の嵐が巻き起こることでしょう。
さて、ここで重要になってくるのが推進派となる人々の立場です。
この計画を岐阜県と何一つ縁の無い政治家が東京一極集中の是正や災害時の備えを理由に推進しているのであれば、有権者からも一定の理解と支持は得られるかもしれません。
しかし、岐阜県の、それも東濃地方を地盤とする政治家がこの計画を積極的に推進していたならば「地元への利益誘導ではないか?」と疑われ、かえって首都機能移転反対論を盛り上げてしまうことになるでしょう。
要するに、何かを主張する際、とりわけ一般には理解されにくい内容を広めるためには、発言者が「直接の利害関係者ではない」もしくは「中立的な立場に居る」という設定にしたほうが受け入れられ易いのです。
「右でも左でもない普通の日本人」と「あんまり政治思想は無いです」はこれを最大限活用するために存在するかのような文句です。
明らかに偏った主張であっても、その発言者が自らを「右でも左でもない」「あんまり政治思想は無い」とカテゴライズしてしまえば、自民党に対するアクロバティック擁護も野党に対する嫌味も全て
「政治思想の左右とは無関係で、ただ感じたことを書いただけの非政治的なツイートです」
と言い張ることができてしまうのです。
さらに、もへもへ氏はプロフィールで「選挙では共産党に投票している」ことを公言しています。
実際に彼が日本共産党に票を投じているかについては定かではありませんが、これも中立アピールの大きな武器となる要素です。
先ほど「発言者が直接の利害関係者ではなく、中立的であるという設定にしたほうが主張が受け入れられ易い」と書いた通り、彼は自民党と真っ向から対立する共産党の支持者を名乗ることで自民党との関係性を否定しつつ、アンチから「コイツは自民党信者だから自民党を熱心に擁護するのだ」と指摘されないように予め予防線を貼っているのです。
とは言うものの、普段の投稿内容や「集団的自衛権には賛成で共産党とは考えが真逆」というプロフィールの一文から察するに、彼はあくまでポーズとして共産党への投票を行っているだけで、本心では共産党を含む左派勢力を支持していないのは明白でしょう。
現に、2021年3月末に共産党支持者が作ったハッシュタグがトレンド入りした際には、彼はすかさず六全協以前の武装闘争路線を蒸し返すことで共産党への間接的なネガキャンを行い、ライトなフォロワーの期待に応えました。
翌2022年には広島平和記念式典で街宣活動を行った中核派系の労働組合(動労千葉)を事もあろうに「立憲や共産の支持団体」として扱う内容のツイートを投稿しています。
どうやら彼は共産党の支持者を名乗っているにもかかわらず、中核派が共産党の不倶戴天の敵であることを知らないばかりか、立憲民主党や共産党を支持している連合系労組や全労連と、新左翼系の独立系労組との区別すらついていないようです。
単純に彼が労組や新左翼系セクトの知識に疎いのか、それとも労組や左派系野党のネガキャンのために敢えてデマを広めようとしているのか……それは分かりません。
ですが、彼は上記のツイートの内容が誤りであることを複数のユーザーから指摘された後も訂正や削除といった対応をとらず放置し続け、自身の流したデマを信じたフォロワー達が共産党をバッシングし始めても止めようとする素振りすら見せませんでした。
この姿勢こそが、彼が本心では共産党を応援するどころかデマを流してまで足を引っ張りたいと考えていることの確固たる証拠と言えるのではないでしょうか。
さて、こんな記事を書くと彼の熱心なフォロワーから「いや、もへもへさんは中立だ。自民党を批判することもあるし共産党を応援することだってある」などとイチャモンをつけられそうですが、個人的にはこう聞きたい。
「では、何故皆さんはもへもへ氏をフォローしているのか」と。
皆さんはもへもへ氏が投稿する右派に都合が良い解釈や擁護、左派への非難や嘲笑を目当てに彼をフォローし、常日頃から彼のそういったツイートを積極的に拡散しているのではないか、と。
中立を自称するためのアリバイ作りにしか見えないあっさりした自民党批判よりも、野党や左派を嘲笑するツイートのほうが嫌味とやる気に満ち溢れていることは、彼の投稿を楽しみにしているフォロワーの皆さんの方がよくご存知でしょう。
結局、もへもへ氏本人がどれだけ自らの頭髪と政治色の薄さを主張したところで、彼のフォロワーのボリューム層をネット右翼が占めているという事実がある限り、彼の言動の偏向性を否定することなど不可能です。
個人的には、いい加減そんな見え透いた噓をつくのはやめて堂々と自らの立場を表明しろと言いたくなります。
彼の戦略は大したものですが、中立を自称しつつ偏った主張を繰り返すのはフェアとは言えませんし、見ていて気分の良いものでもありません。
ところで
「フェアではない」と言えば、過去に書いた記事でもへもへ氏の「とある疑惑」を追求したのですが、結局のところ彼はあの件をどう説明するつもりなのでしょうか?
今後のもへもへ氏には見苦しく中立を自称したり、存在しないフェミニストを捏造して叩いたり、中途半端な知識で萌え絵アンチを煽って反撃を食らったりしない立派なネット論客を目指して欲しいものです。
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