舞台『SHELL』で観た人マニアがおもしろかったので感想を書く日記
ということで、『SHELL』を見てきました。観劇体験は3回目。めちゃめちゃ面白かった……!!ので、日記を書きます。とりとめがないです。
見にいった経緯を書く。
少し前に映画『リバー、流れないでよ』を見てきたところこれが大変大変大変に面白く、同じ映画を見ていたフォロワーの演劇有識者から「演劇的な作風」という視点でアツい語りを頂いた。
演劇って今まで触れたことがない。もしかして私「演劇的」なのが好きか……?なら本家本元を見に行くか……?。と思った。リバーを作っているヨーロッパ企画という劇団の公演がたまたまチケット販売を開始したところだったので、それを見にいったのが1回目の観劇だった。『切り裂かないけど攫いはするジャック』という作品。
これがまあ、しっかり刺さった。私は生まれてこの方ボーカロイドのオタクなので、「人間が人間のまま表現をしている」様子を見ることそのものが新鮮で、人間のくせに他人に成っていて面白いな……なんて感じ方をしていた。この面白かったという感情が『切り裂かないけど攫いはするジャック』に対して向いたものなのか、演劇という形態に向いたものなのかに興味が湧いたので、ひとまず場数を踏むことにした。
なにせ初心者なのでたとえばボーカロイドで言う「とりあえずニコニコでVOCALOIDタグをおすすめ順で見る」みたいな初心者向けの正解的なものが分からない。ひとまず、こういうのは出会いだから……という感情から、会場で貰った大量of大量のチラシから気になる公演を1つ選んでチケットを取ろうとした。そうして選んだのが『SHELL』で、理由は音楽担当に知ってる名前があったから。『人マニア』の原口沙輔さんだった。
めちゃめちゃおもしろかったです。
演出もお話も音楽もぜんぶ面白かった、というか刺さった。今年触れた物語作品の中で一番だったかもしれません。ただ、ただ、私はまだこの面白い!の先がどこに向いているのかがとっちらかっていて…………異様に奥行きが広い舞台構造も、すべての大道具や床や壁や象徴的な衣装を緑で作りグリーンバックを想起させることでそこに任意の風景を嵌めさせようとする(そう受け取っただけでそう説明されてはないけど)攻めた演出も、黒子と実在を認知されるキャラクターの境目を常に行き来するひとびとも、好きです。本当に良かった……!!
でもその面白さをこれ以上に詳細に語るのは私にはまだ出来ないと思って、だから今私に出来る話として、とりあえず『人マニア』の話をします。
流れたんですよ、人マニア。多分そんなつもりじゃなかったと思うんだけど。そんなつもりじゃなく流れた人マニアがむしょうにおもしろかったって話をします。
あ、再度ですけどとりとめがないです。日記なので。
チケットを取ったのが、9月20日くらいの話。
『人マニア』という楽曲の立ち位置や私から見た印象は、そこから今日まででかなり変わったと思う。楽曲が投稿されたのは今年の8月だが、『人マニア』が今の、TikTokバズミュージック的な立ち位置になったのは9月末あたりからの話だ。実際にはもうちょっと前から流れがあったんだろうけれど、ニコニコでボカロを見てるボカロオタクから人マニアが「ボカコレで出てきた初投稿作品で、なんか作者がすごい人らしい、今めっちゃアツいアングラボカロ曲」という見え方から「なんかこの曲非ボカロ界隈でめっちゃウケてるぞ……?」という見え方になったのは、9月末ごろだったと思う。きっかけのひとつは緑仙/月ノ美兎による歌ってみた投稿だと認識している。(話は逸れるけれど、『リバー、流れないでよ』を見にいった理由は月ノ美兎が配信で遊んでいたヨーロッパ企画作のゲームで"ヨーロッパ企画"という名前を認知していたことにあったりする。ありがとう月ノ美兎……)
ということで、私がSHELLのチケットを取ったときはアングラボカロ曲だと見ていた人マニアは昨日の観劇の時点では今もっとも流行りのポップミュージックになっていたし、それは舞台を作る側としてもそうだったと思う。企画から発表にどれくらい間が空くとか、よく知らないけど……「裏方系の活動の仕方をしていた新進気鋭のアーティストに頼んだら、しらない間にボカロPデビューしてた上に、それがなんかやたら売れてる」みたいな状態になってたんじゃないか。
そうして立ち位置が想定と変わったところで、作品そのものは変わらない。原口沙輔の音楽はアーティスティックな電子音楽で、舞台もアーティスティックな不条理系のすこしふしぎ青春物語だった。音楽と舞を軸にした演出も多く、ぱっと意味が呑めない、何度も咀嚼することを前提にした作品だと受け取った。だけども、「立ち位置と関係なく作品そのものを見る、のが普通」である立ち位置はアンダーグラウンドだけで、だからこの舞台はアンダーグラウンドに立っていて、だから「人マニアの作者であるという情報」から放たれる"ポップカルチャーの匂い"が作品にうつることは避けたい。避けたいと思った。だってたまらなくノイズになる。私なら避けたい。
でも、流れたんですよ、人マニア。物語が始まる前、プロローグのプロローグにあたる部分で。『人マニア』でTikTok撮影をする、そんな高校生たちの日常風景として。
現代を生きる高校生の日常を表す記号として使えるほどの立ち位置にこの曲があるんだなとか、それを原口沙輔自身(なのか、演出の方なのか)も自負しているんだなとか、今流れている人マニアにボカロ文化の文脈は一切乗っていないんだなあとか、なんかいろいろなことを思ったんだけれど、ああこれって物語から人マニアという記号であらわされる日常を切り離すと共に『人マニア』を切り離しているんだなあ、ということを一番強く感じて、それがなんだかむしょうにおもしろかったんです。
11/26までやってます。まだチケット売ってるので、ぜひ。
あと、もしこれを読んでる演劇畑?舞台畑?の方がいたら、SHELLが面白かった私におすすめの公演か監督か演出家か演者かなんかそういうのを教えてください。
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