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かわいい
ねえねえ、死ってかわいい? だってそうだろ、みんなに与えられるものだもの、昔はかわいいことが男女ともに正義であったもの
成長して体のあちこちが動かせるようになって膨れて醜くもなって、どんどんかわいいなんて言われなくなってきたぼくたちは、
ずっと初潮のまま眠っている。それに疑問を持つことはない、いや持てない、それが歯車でメッキ加工されていると知っているから
ぼくは永遠にかわいいといわれていたい、自分を認めるということは他人の視界に入り込んでなにがしかの情報を刻み込むことだ、
不快に思われて耳垢と一緒にほじくり出されてティッシュとのうえにあけられて、罵倒と心地よい汚い言葉を受けながら空気に挟まれるそれは嫌だからぼくは不細工にはなりたくなかったの
に、思えば思うほど肌はがさつき、涎が臭い、唇が腐った苺のようにふくらんでいく。消毒をしなくてはいけない。癌がここまで転移している。技術の進歩だ、いずれ機械がなりかわって世界はどんどん可愛くなる。そのときにはぼくは笑ってやる、食べれなかったバターケーキを頬張りながら
「あなたはどこにもいないのよ」