うちの弟は戦闘民族
うちの弟は戦闘民族
弟Kは戦闘民族だ。
今でこそ落ち着いた中学生になったものの、保育園や小学校の低学年の頃などはよく友達と喧嘩をしていた。それも口論ではなく、手が出るタイプの。
兄弟の中でも年下のKは、上の兄弟に比べるといくらか甘やかされて育った節があり、兄に対しても小生意気な態度ばかりをとっていた。
そんなある日、保育園のお迎えに行った母は保育士さんから「K君がお友達と喧嘩をして」と聞かされる。何やら心配そうな様子である。
「上の学年のこと喧嘩したんです。でもトラブルがあったわけではなくて……」
保育士さんは、もうすぐ小学校に入学するKの将来を心配しているようだった。
「理由を聞いたら、『オレは強いやつと戦いたかったんだー!!』って」
Kはたまにそういうことをしでかすが、一方で普段は天然で可愛らしい言動が多かった。
「オレはピンク」
私の兄弟は、一人ずつイメージカラーがある。年賀状に書く名前の色や、色違いでお揃いの物を買う時、カレンダーに予定を書き込むときの色分けなどにはこのイメージカラーを使っていた。
上の二人は色違いの商品が多い赤と青。三番目は黄色。Kはその次、4番目の兄弟だった。
ある日のこと、幼児のKが母の名前を知らなかったことが分かり、皆で教えてやろうとした。
「お母さんはね、みどりなんだよ」
それを聞いたKは、さも嬉しそうに宣言する。
「じゃあ、オレはピンク!」
「そうじゃなくてね、K君の名前はKでしょう、お母さんは名前がみどりっていうの」
「じゃあオレはピンク!」
その日からKのイメージカラーはピンクになった。
へんちょこりん
上の兄弟がヘッドライトを買ってもらったのを羨んだKに母は、ゴムベルトに100円で買った壁用小型ライトを張り付けたヘッドライトもどきを与えた。(もちろんすべてピンク色だった)
Kはおおいに喜んだ。はしゃいでそこらを踊りまわった。
そして「へんちょこりん」と叫びながらライトのスイッチを入れては消しという謎の儀式を繰り返すようになった。
兄弟も母も面白がって「へんちょこりん、やって」とリクエストをするようになった。
それから数カ月は「へんちょこりん」のリクエストが絶えなかった。