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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#29

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第五章 新しい関係


同居生活

 メリーは、突然やって来たキヨシの申し出にかなり驚いていたが、ケンの友達だということもあり、安心するとともに、それまで一緒にいた時間での打ち解けた会話から親近感も抱いていた。いや、親近感というより愛情に近いものが芽生え始めていたのかも知れない。

「いいわよ。私一人だから。ケンのお友達なので信頼してまーす」

「やったー、ありがとう。実はワイン作りにもちょっとだけ興味があるんだよね」

「わぁ、そこはケンと大きく違うところね。彼は一晩だけ泊まってまた旅行に出ていってしまったもの」

「あいつは、昔っからそんなやつなんだ。でもすごくいいやつだよ。僕の大親友だしね」

「ええ、それは私も感じたわ。とっても優しくていい人だって」

 他愛もない話で盛り上がり、メリーとキヨシの距離も少し縮まったような感じだった。突然押しかけてから数日間滞在している間は、収穫期ではなかったので、葡萄畑の手入れや樽に入ったワインのボトル詰などがメリーの仕事だった。それをキヨシも手伝いながらこのペースでは厳しいなと感じていた。収穫期には村の人が応援に来て葡萄を収穫し、ワイン作りをするので十人くらいが手伝ってくれるのだということも聞いた。ワイン樽はかなりの量がストックされているように感じたが、一人でボトル詰の作業、ラベル貼りなどを実施することになるから年間の出荷数が増やせないということも薄々わかって来た。それに、本音で言えば、メリーから離れたくなくなっていたということも後押ししていた。

「メリー、僕を次の収穫期のワイン作りまでここに置いてくれない。給料は当然要らないしこれまで通り、部屋と食事だけ提供してもらえれば問題ないから」

 突然の再びの申し出にメリーは一瞬驚いたが、自分自身の心の中でもそうなることを望んでいたようなので、快く承諾することにした。毎日の夕食で一緒に飲むワインの時間がとても心地よくずっと続けばいいのにと思っていたのだ。この日から二人の距離は一気に縮まった。

 ワイン工場の奥の方では、妖精たちが微笑んでいるようにも思えた。


つづく


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松浦 照葉 (てりは)
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