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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#13

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第二章 見知らぬ旅行者


期待するメリー

「ケン、あなたって本当にいい人ね。声をかけて正解だったわ」

 ケンから説明を受けてメリーは、飛び上がって喜び、ケンに抱きついてその嬉しさを身体中で表現した。ケンはそんな状況に慣れていないせいもあり、ただ、されるがままでニコニコして時折メリーの背中をポンポンしていただけだった。

 しばらくしてケンを解放したメリーは、早速、明日日本に送る準備をするといって喜びながらフロアをクルクル回って喜びを隠せきれないとばかりに踊っていた。人助けができたような気になったケンもなんとなく気分もよくなり、ワインの力も借りてその夜は気持ちよく眠りにつくことができた。

 夜が明け、ケンも日本に送るサンプルのワインの荷造りを手伝ってから、このワイン工場を発つことに決めていた。ちょっぴり別れが悲しくもあったが、また帰りに必ず立ち寄ることを約束して出発した。再び戻って来た時に、ワイン販売が軌道に乗っていることを願いながら。

 メリーは、「送ったワインの評価が分かるまで此処にいてくれないの」とちょっと悲しげにケンに言っていたのだが、ケンは逆に心地よさに甘えてしまいそうになることを恐れて旅を続けることを選択したのだった。しかも頼んだ相手は、ケンの親友なので絶対に騙すようなこともないし、丁寧に対応してくれると信じていたから。あとはここのワインを受け入れてくれる顧客がいるかどうかだろうと思い、自分ができることはもう無いと判断したのだ。

 知り合ったばかりで親切にしてくれたメリーにさよならをするのは心苦しかったが、帰りに立ち寄るほうが喜びも大きくなりそうな気がして旅を続ける決断をしたのだった。それに、一緒にいるとメリーのことをもっと大切な人にしてしまいそうな自分を心の中で感じ、その心を必死で抑えて先に進むことを選択した。仕事も決まっていない男がこれ以上居候してはいけないと自分に言い聞かせてしまったのだ。ケンは、笑顔で大きく手を振りワイン工場を後にした。メリーも手を振って送り出していた。

 メリーは、心の中でケンの存在が大きくなっていただけに、ケンが見えなくなるまで我慢していた気持ちが一気に吹き出し、大粒の涙が頬を伝って流れ落ちた。必ず戻ってくると言った言葉を信じるしかないと自分に言い聞かせ、ワインが売れることを期待し日々の仕事に没頭しようと決意していた。

 ケンは、この後待ち受けている運命を知る由もなかった。

つづく  次回から第三章に入ります


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