【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#44
第七章 両親との再会
永遠の別れ
すでに話すことも見ることも叶わないと諦めて生活していた両親にとっては、まるで夢を見ているような時間だった。このまま時間が止まってくれればいいとさえ思える時間だった。ほんの一瞬の時間ではあったが、本当に時が止まっているかのようにいろんなことを回想する時間だった。生まれてからスクスクと成長し、人との関わりを大切にしたい、いろんな文化を見てみたいということを思う青年にになり、その意思を尊重して送り出したことを以前は少し後悔していた両親だったが、そのこと自体、本人に後悔はなく天国に行く準備をしていたということを知り、両親共に後悔することなく見送ることができたようだ。
「父さん、母さん、ありがとう。もうそろそろ消えてしまうと思う。これが本当に最後だ。今まで迷惑かけてごめんね。。。そして、ありがとう。。。さようなら、さようなら」
「ケーン、ケーン、さようならー」
ケンの父と母はその場に崩れ落ち、お互いに抱き合ってしばらくそのまま固まった様に時間だけが過ぎていった。気がつくと、覆っていた雲が晴れて周りにはいつも見ている景色が広がっていた。さっきまで目にしていた、あの懐かしい家もどこにも見えなくなっていた。それでも、とうに諦めていた自分たちの息子に会えて声をかけることができたことで、ケンの両親はこれまでのもやもやに一区切りつけることができた気持ちになっていた。これでやっとケンは天国に行けたんだという安堵感が両親にとっては一番大きな安心だった。
「よかったな。最後の最後に会うことができて。これで安心して我々も余生を送れるな」
「あなた。ケンのお墓を掃除しにいきましょうね。お盆には帰ってくるわよ、きっと。孝行息子なんだから」
「そうだな。空っぽだったケンのお墓にやっと遺骨も入って安らかになったからな。綺麗にしよう」
「ええ、お花もいっぱい供えましようね」
ケンの両親は、明るく光る月明かりの下を静かに手を繋いで帰っていった。その顔はくる時とは違い、笑みが溢れていた。この二人も今後は明るく残りの人生を楽しむことができるだろう。
つづく 次回から第八章(最終章)に入ります
🌿【照葉の小説】短編以上の小説集
🌿【照葉の小説】ショートショート集
☆ ☆ ☆
いつも読んでいただきありがとうございます。
「てりは」のnoteへ初めての方は、以下もどうぞ。