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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#22

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第四章 ワインの販路


妖精のいたずら

 最初の試飲用ワインには、ワインの妖精が入っていた。その数三人。妖精たちは意思疎通を図りながら、なんとかメリーを助けようと動き回っていたのだ。キヨシとヨウジがホテルの担当者と打ち合わせをしていた時は、窓枠のところを飛び回って妖精の羽から溢れる見えない粉で目の前のワインにとても興味を示すように誘導をしていた。そしてある程度の効果を確認したところで消えていたのである。

 キヨシたちはとんとん拍子に進む順調な交渉を疑いもせずに対応していたが、実は妖精の貢献が大きかったのである。この妖精たちは、一度葡萄畑が水不足でダメになりかけた時、メリーの両親が街までトラックで何往復もして水を運び、なんとか葡萄畑を守り抜いたことで死なずに済んだのである。妖精であるが故に、葡萄畑が死滅すると妖精も無くなってしまう。だが、葡萄畑が延々と生き続けてくれれば、妖精も生き続けられるのだった。

 メリーの両親が生きている時に、妖精たちはメリーの両親にお礼の言葉を伝えていた。ちょうどメリーが生まれたころだった。そしてその時に、誓ったこともあったのだ。

「私たちは、この葡萄畑が続く限りワイン作りを応援します。私たちの命を救ってくれたことは決して忘れることはありません。今生まれたメリーが後を継ぐことになれば、私たちはメリーが困った時にはなんとかして助けたいと思います」
 妖精たちは、メリーの両親にそう告げていた。でも両親はそのことをメリーには伝えることなく他界してしまった。交通事故に関しては妖精たちは何もしてあげられずに悲しんでいたのである。

 三人の妖精はアーサ、ケーサ、ハーサという名前を持っている。アーサはホテルでのワイン付き宿泊プランの最初の一人旅の女性客のそばに行き、ワインを口にする前に小刻みに羽を震わせて粉をまいた。そして、ワインを口にした途端、このワインの虜になってしまったのだ。その時の女性はネットにホテルなどの感想を投稿しているライターだった。そして、この女性が書いた記事が多くの女性に読まれることになり、次々と予約が舞い込むようになった。

 キヨシたちが喜んでいた影には、実は妖精たちの支援があったのだ。キヨシはそうとは知らず次の一手を打つ時期に来ているようだと判断していた。


つづく


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松浦 照葉 (てりは)
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