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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#36

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第六章 時の流れと共に


迷い込んだ街

 一番手前の家の前まで来たが、通りを歩いている人はいない。しかし、家の灯りはついているようだ。家の中をちょっと覗いては見たが、人の姿は見えない。まるでゴーストタウンのようだった。勇気を振り絞って大きな声を出してみた。ケンが立ち止まって覗いた家は、日本人旅行者だったケンの家だった。そしてその隣がメリーのお母さんの家だったのだ。そう、ケンにとってはおばあちゃんだ。

「すみませーん、誰かいますか。僕はふたつ山の向こうのワイン工場から来たケンといいます。もしだれかいるなら声をかけてください」

 ここの住人は人間には見えない。この街に住んでいる人同士でしか姿を確認することはできないのだ。通りからの声に気づいたメリーのお母さんは、隣のケンの家に行った。扉が開いて閉まる音は、やって来たケンにも聞こえていたし、扉が開閉するのもぼんやりと見えた。しかし、人は見えない。少し背筋が凍りつく思いになりつつあった。

 フワフワと揺られているように飛んでいた小さな蝶のような妖精がメリーのお母さんの肩に止まった。

「メリーのお母さん、私はハーサ。お久しぶりです」

「えっ、どうしてワインの妖精がここにいるの。メリーたちを守ってくれているはずなのに」

「はい、他の二人はちゃんと守っていますよ。ご心配なく。私は死んでしまったのです。葡萄畑を襲って来たトルネードの進路を変えるために力を使い果たしてね。それよりも、今外にいる青年は、メリーの息子よ。きっと神様が呼び寄せたんだと思うわ。たぶん、お母さんの寿命の時なんじゃないかしら。声をかけてあげて」

 メリーのお母さんは興奮気味に隣人のケンに話しかけた。

「妖精の言葉、聞こえた?」

「ええ、妖精にも家の前にいる青年名前がケンだということにも驚きました。こんな偶然、とても信じられません」

「ケンさん、表にいるのはメリーの子供なのよ。私の孫よ。なぜかあなたと同じ名前。きっと訳があるわね。わたしの寿命がやっとやってきたのね。ああ、今起こっていることが信じられないわ。神様、ありがとう」


つづく


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