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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#08

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第二章 見知らぬ旅行者


明るい話題

 ケンは、何もできないのにとんでもない時にやって来たなと思いながらも、少しでも明るくしようと話をした。真っ先に思いついたのが、女性の名前がメリーと呼ばれているということで、日本のレトロな車で日産が販売していたスカイラインという名前のかっこいい車のことだった。父親がスカイラインを大好きだったと言うこともあり、小さい頃から何度も聞かされたり、見せられたりしていてスカイラインのことを知っていたのだ。

「そういえば思い出したんだけどね。日本にはね、僕たちの名前がついたかっこいい車があったんだよ。だいぶ昔だから実際に見たわけではないんだけど。ケンとメリーのスカイラインっていう車なんだ。若い人たちにすっごい人気があった車なんだよ。その車のコマーシャルで使われていたのは日本の北海道というところなんだけどちょうどここみたいに広大なところにヒョコンと立ってる木のところでコマーシャルが撮影されていたんだ。もちろん、ケンとメリーが恋人みたいに出演してたんだよ」

「すごーい。じゃあ、私たち恋人同士だね」

「あっ、いや、そういう意味じゃないけど」

「もう、冗談よ。よく見るとあなたは若そうだわね。きっと私の方がおねえさんでしょ。今大学生くらいかな」

「やっぱり日本人って若く見られちゃうね。これでも二十九歳なんだけど」

「えーっ、嫌だ、ごめんなさい。じゃあ、おにいちゃんだ。びっくり」

 二人は打ち解けて大きな声で笑いながら歩き、話をしている間に、メリーのワイン工場についていた。どうやら、自宅と繋がっているようだった。凄まじい樽の香りに包まれている場所でワイン樽がものすごく沢山並べられているところだったが、ケンは嫌いではなかった。むしろいい香りだと思っていたくらいだった。

 元々ケンはアルコールが好きで蒸留酒でも醸造酒でもなんでも飲む方だった。日本にいる時はもっぱら日本酒か焼酎が多かったが、ヨーロッパに旅行に来てからはワインを飲むことが多かった。スペインやイタリアのワインも美味しかったので、ここのワインも飲んでみたいなと思っていたところだった。

 気を効かせたかのようにメリーは一人で奥のワイン樽のほうに歩いて行った。

つづく


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