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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#24

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第四章 ワインの販路


メリーの白ワイン

 フランスから届いたメリーの白ワインのボトルのコルクが抜かれ、テーブルに置かれた大きめのワイングラスに少しだけ注がれた。女性はそっと手を伸ばしワイングラスを手に取り、顔に近づけた。フルーティな香りの中に爽やかさも感じる透明度の高いワインだった。一口含みテイスティングする。その爽やかさが口の中いっぱいに広がり、太陽の暖かさのような心地よい温もりが身体中に広がる。アルコール度数が低いので問題なく一本飲めそうだ。テイスティングで満足し、一旦テーブルに戻した空になったワイングラスに、今度は十分な量のワインが満たされていく。液体がゆっくりと流れて落ちていきワイングラスのカーブに沿って争うようにワインが弾けていくのを女性は見つめた。一瞬のことではあるが、注ぎ込まれる瞬間が好きだった。

 それから次々と順番に運ばれてくるフランス料理のフルコースを素早くスマホに収めながら、舌鼓を打ちながら食事を楽しみ女性は感じていた。

「このワインなら魚料理だけじゃなく肉料理の油でも口の中をさっぱりしてくれるわ。この白ワインさえあれば問題なしね。というよりも赤よりいいかもって感じ。料理もとってもおいしいわ。これは女性に取っていいプランね。そのうちにカップル用プランに発展しそうな気配だわ」

 女性は取材目的ということは知られることもなくホテルを後にした。まだ余韻が残っているうちに帰りの電車の中でタブレットを出して記事の原稿を手早く打ち込んだ。あとは、自宅に帰ってから写真と合わせた記事にして投稿するてはずだ。もっているバッグにはお土産用のワインもしっかりと入っている。帰ってから自宅で旦那様と一緒にゆっくりと楽しむつもりである。

 都内のマンションに帰って来て、ほっと一息ついているとすでに夕方近く。夕飯の支度がちょっと疲れているし面倒だなと思い、ふと思い立ってデリバリーのお寿司を注文した。ちょうどその時「これから帰るよ」というラインが入って来て、「グッドタイミング」とガッツポーズをした。

 その夜、もらって来た白ワインのコルクを抜いた。コルクを抜いた瞬間に小さな白い透き通るような蝶がヒラっと宙に舞って消えていったような気がした。一瞬のことだったのでそれほど気にすることもなく夫婦での食事に戻った。そして、お寿司と共に夫婦水入らずで東京の夜景を見ながら食事とワインを味わった。とても幸せな気分となり、それまで以上に仲良し夫婦になったような気分になっていたようだ。


つづく


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松浦 照葉 (てりは)
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