【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#23
第四章 ワインの販路
ワインプラン最初のお客様
まだ試飲用のワインしか届いていない最初の頃。女性専用プランとして限定提供した宿泊プランの最初のお客様は、ホテルを利用した感想などをブログにあげたり、雑誌社の依頼を受けて記事を書く二十六歳の主婦ライターだった。大学から付き合っていた男性と結婚するも、自分自身も何か発信し続けたいと思い主婦ライターとして活躍している女性だった。結構辛口の評価の記事を書くことで有名なひとで、ペンネームで香辛(こうしん)と名乗り性別不詳で通っていた。まだ子供がなく夫婦二人だったので取材での一人旅も問題なくこなしていたようである。
そんな彼女は常に新規企画をチェックしていたこともあり、今回のプランもいち早く見つけ申し込み、誰よりも早く予約していたのだそうだ。特に、女性に的を絞るためにアルコール度数の低いワインを準備したというところが彼女の興味を引いていた。
彼女は事前に取材であるということは告げずに、女性の一人旅で観光という装いで山の上のホテルにバスに乗ってやって来た。ホテル側のスタッフも通常のお客様として接していたので、何も気づくことはなかった。ホテル内をスマホで撮影しているのは見ていたが、みんな「今時の女子だね」ということで特に気にする様子もなかった。もっとも、スタッフがお客様を監視するわけにもいかないので自ずとそんな空気感になっていた。
やがて日が落ち夕食の時間になり、楽しみのディナータイムとなり、案内されたテーブル席に着くとスタッフが女性に近づいて話しかけて来た。
「本日はお越しいただき誠にありがとうございます。また、本日から提供を開始させていただきました女性限定ワインプランにお申し込みいただき誠にありがとうございます。お客様はこのプランの最初のお客様でございます。その記念に、本日お召し上がりになられるワインと同じワインをお土産としてご用意させていただきました。お帰りの際に、お荷物になるとは思いますがお持ちくだいませ。では、お食事とワインをごゆっくりとご堪能ください」
「まぁ、ありがとうございます。私が一番最初の利用者だったんですね。光栄だわ。それにお土産まで、ありがとうございます」
女性は上機嫌となり、スマホをとりだし、ワインの写真や料理が運ばれる前のテーブルの写真などを撮っていた。横ではワインの準備がなされていた。
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