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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#19

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第三章 奈落の底から


ワインの未来

 ケンはまだ結果は分からないけど、もう少しメリーのお母さんを安心させたいと思い、自分の母親にできない分メリーのお母さんに気持ちを向けた。

「メリーさんの家に泊めてもらった時、ワインの手入れの大変さや村人たちの手伝いを受けていることを聞きましたが、一番のネックはアルコール度数が低いワインしか作れていないということが不振の原因だと聞いたんです」

「そうね、アルコール度数がある程度ないと国内での販売は難しいものね」

「はい、でも、僕の生まれた国である日本ではもしかしたら売れるかもしれないと感じたんです。根拠はあまりありませんが、女性を中心にアルコール度数の弱いワインが逆に売り文句として使えそうだと感じたんです」

「ええ、そんなことがあるの? フランスでは考えられないわ」

「多分、売れるんじゃないかと思います。それで、実は僕の友人日本で酒屋を営んでいるので連絡を取ったんです。メリーさんのパソコンを借りて」

「まぁ、そんなことまでしてくれたの。あなたっていい人ねー」

「ありがとうございます。それで、友達も試してみるということになり、ここに来る前に試飲用のワインを日本に送ってもらいました。今頃は、日本から連絡が入る頃かもしれません。上手くいけばいいなと思っています。そうすれば大切なワイン工場を手放さずに済みますからね」

「まぁ、おどろいたわ。ありがとう、ありがとう。そうなのね。よかったわ、メリーがあなたに巡り合えて。まるで救世主に見えて来たわ。あっ、そうそう、あなたは世界を回っていたのなら、ここの街の中を歩くことで世界旅行ができるわよ、それでここの住人といろんなお話をすればいいわ。きっとあなたがやりかたったことができると思うわ」

「そうなんですね。僕もここに来たからには有意義な時間を過ごしたいと思います。お隣さんにもなったことなので、これからよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくね。ケン」

 ケンは、案内役に言われるがまま連れてこられたこの場所が、そんなに悪くないなと感じ始めていた。自分の死を自覚することはなかなか出来ないけど、これまで同様に話もできるし楽しめそうだなと感じていた。自分が住んでいる場所で世界の人たちと話ができるなんてことは、生きていたらできなかったことだなと前向きに考えることにしたのだ。


つづく  次回から第四章に入ります


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松浦 照葉 (てりは)
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