【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#48
第八章 未来への希望
巡る絆
メリーはこのお嬢さんとの出会いがケンにとって運命となるのかどうかを早く知りたかった。でも、妖精の話をするわけにもいかない。ちょっと焦りも感じながら心配していた。
「ちょっと父さん、母さん、お客様の前で失礼だろ。何のろけてんだよ。さぁ、ワインでも飲んでください。僕はさっきも言ったけど、ケンです。そして、父がキヨシ、母はメリー」
「こんにちは、お嬢さん。私は日本人でキヨシといいます。ここで日本人にあったのは私がここに来てからはじめてかなぁ。でもメリーは三人目だな」
「あぁ、そうね。私は三人目。。。思い出すわ。ケンのこと。三十年くらい前にね、あなたみたいに歩いてここに来た日本人がいたのよ。名前がケンというひとなの。ケンがこのワイン工場に立ち寄らなかったら私たちが巡り合って、日本にワインを届けられるようになることはなかったのよ。そうなっていたら、お嬢さんもここに来ることはなかったのかもしれないわね。不思議ね~」
「さっき、表でケンと話しているのが聞こえて来たんだけど、日本のホテルでの白ワインをあなたのお母さんが飲んだという話をしていたでしょう。実はそのプログラムを仕掛けたのが私と私の弟だったんだよ。メリーと一緒になる前のことだけどね。その時私は日本で酒屋をしてたんだ。当時ここに立ち寄った友人のケンからメールをもらって、このワイン工場のワインを扱ってくれないかという相談を受けてね。それで急遽ホテルと相談して宿泊プランを作ったら、それが大反響を呼んだということなんだよ。もしかしたら、あなたのお母さんの記事が起爆剤となってくれたのかもしれないね」
「えー、そうだったんですか。すごい。何だかもの凄い運命を感じてしまいました。お母さんにも話したい内容です。泣いて喜んでしまうかもしれませんよ。すごい繋がりです。それに、母は持ち帰ったワインを開けた時にまるで妖精みたいな白い小さな蝶が一瞬だけ見えたような気がしたとロマンチックなことも言ってました。妖精が宿るワイン、とっても素敵だと思いました」
メリーは、自分の頬に涙がつたって落ちていくのを感じていた。間違いない、妖精が言っていたことは今日のこの出会いのことだったんだと感じた。その瞬間嬉しさと不思議さと絆を感じ涙が溢れて来たのだった。
「そういえば、まだ名前を伺っていなかったわね」
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