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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#05

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第一章 不思議な街


住民の家

 街にある家は住民にゆかりのある家に近い住まいが準備され、毎日の生活で利用する様になっている。ただし、水道やコンロなどは見かけ上ついてはいるが機能しない。そう、魂だけの存在なので、飲食することもないし眠ることもないのである。この街の住民の唯一の楽しみはおしゃべりだけだった。新しく入ってきた住民との情報交換や、いなくなった住民のことが日々会話されていたのである。ある時、生前フランスでワイン工場を営んでいた女性の家の隣に小さな木造の家が出現していた。女性は、また新しい人が来るのだろうと近所のインドで亡くなった住民と話をしていた。インド出身の女性は興味津々で出現した家を眺めていた。フランスの女性は自分に言い聞かせる様に話した。

「新しい人がきたらお隣だから私が訪ねていってこの街のことを教えてあげなくちゃね。今度はどこの国の人かしらね」
「木造で不思議な形をしているわね。それに小さいから多分アジアのどこかの国かしらね。インドの家とは違うわね」

 この街に新しく入ってくる時は、事前に新しい家が突然出現するので、隣近所にいる住民は気づくことができるが、新しい家の住民はすでにできている家に案内されることになり、急に家ができたということに気づくことがない。なので、近所の住民が教えてあげるのである。そして、その反対に消えていった住民が住んでいた家は一瞬にして消滅するのである。誰かが新しく入ってくるし、誰かが天国に召されていなくなるということが日常茶飯事で発生するので、毎日街の家々は変化するし住民も変化し続けている不思議な街だった。

 そうやって、この街の人口も一定数が保たれ続けていたが、最近は少しずつ増加傾向になって来ていた。世界的に少子化になっているにも関わらず、若いうちに死んでしまうケースが増加しているのだ。虐待、交通事故、戦争、災害、無差別殺人などの犠牲者がどんどん増加しているので、この街の人口も増え続けている。もっと平和な世の中になれば、長生きできる人口も増えるのだが人間のエゴがそうならない世界を維持していることは悲しいことだった。きっと神様も嘆いているに違いない。

 さて、視点を人間界の方に向けてみよう。どうやら旅をしている一人の青年がいるようだ。


つづく 次回から第二章に入ります



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松浦 照葉 (てりは)
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