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【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#40

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第七章 両親との再会


静かな帰宅

 日本にいるケンの両親はフランスの田舎で行方不明になったと知らされフランス警察にも捜索願を出してはいたが、見つかることはなかったため、十年を待って失踪のままお葬式をしたのだった。当然、キヨシもその連絡を受け、放心状態になりながらもメリーに話をしてフランスから日本にお花とワインを両親に向けて送ったのだった。それからさらに十年が経ち、自分たちの子供が不思議な体験をしたことを知った。

 その後、キヨシはフランス警察に連絡して裂け目から転落して亡くなっている友人がいるはずだから探して欲しいと依頼した。警察と一緒に息子のケン、そしてキヨシも同行して、裂け目のあたりまで行ってみた。この辺りまで来る人はいないのでこれまで気づくことがなかったのだろうと言われた。そして、裂け目の近くに一人用のテントの朽ち果てた残骸が半分土の中に埋まった状態で発見されたのだ。

 その後、レスキューの専門部隊が呼ばれ、裂け目の下に降りて捜索することになる。かなりの高さがあるため二次災害を引き起こさない様に慎重に捜索活動が実施された。期間は一週間と限定され、捜索隊は三人一組となり三日分の食料が入ったリュックを背負って裂け目の中に入っていった。途中途中で無線がつながることを慎重に確認しながら一番底まで降りた。底には小さな川が水路の様になって静かに水を運んでいた。太陽の光がほとんど届かない場所で湿気も高く気温は低い。まるで冷蔵庫の中にいる様なひんやりとした暗い場所だった。

 捜索開始後二日目の昼ごろ、捜索隊は白骨化した遺体を見つけた。完全とまでは行かなかったが、頭蓋骨や肋骨、それに大腿骨あたりが半分土の中に埋まる様になっているのを発見した。長い年月なのに雨や水に流されなかったのは落ちた時に岩が崩れてその下敷きになったからではないかと推測された。その後、見つかった遺骨が無事回収され、日本にいるケンの両親の所へ送られることになった。残念ながら一部分は流されてしまったようで捜索は断念された。

 キヨシは弟のヨウジにも連絡して、ケンの静かな帰宅を見守って欲しいと依頼した。同時に、息子が経験した内容を手紙にしてケンの両親に送った。もしかすると、これでケンはやっと天国に行けるのかもしれないなとキヨシは思っていた。無意識にキヨシは星空を見上げながら手を合わせた。

「ケン、ありがとう。お前は俺にとってやっぱり大親友だったよ」


つづく


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