【ファンタジー】ケンとメリーの不思議な絆#31
第五章 新しい関係
勢いのプロポーズ
葡萄畑に被害がなかっことを二人は奇跡が起こったと共に喜んだ。村人たちもしきりに「奇跡だ」と叫んでいた。トルネードがなぜ葡萄畑を回避して進んだのかは誰も知る由もなかった。知っているのは、残った妖精のアーサとハーサだけだった。その後はそのまま平穏な日々が過ぎていき、収穫期がやって来ていつものように村人たちが手伝いに来てくれた。
みんなで葡萄を収穫し、皮や種を除いて絞った果汁を樽に入れ発酵させるまでが大変な作業となるので村人の助けがないととてもできない作業なのだ。樽の数としては百五十樽を有に超えるくらいの量がある。ボトルにすると、五万本くらいは出荷できるはずだ。しかし、実態としては街に出荷する分とキヨシの店に出荷する分を合わせても二万本にも満たない。キヨシはここで覚悟を決めることにした。収穫期の作業が終わって、手伝ってくれた村の仲間たちとの盛り上がる打ち上げの場でキヨシは思い切ってメリーへのプロポーズに踏み切った。全員に聞こえるような大きな声で言った。
「メリー、君のひたむきさと優しさに惹かれてしまった。ワイン作りを君と一緒にこの場所でずっとやっていきたい。結婚してください」
仲間同士で話をしてざわついていた周りの村人たちは一瞬で静寂さを醸し出し、全員の視線がキヨシとメリーに集まった。静まり返った打ち上げの場でメリーは口を開いた。
「えっ、このタイミングで。。。でも、うれしい。喜んで受けるわ」
「おおー、いいぞ、いいぞ。やっと一緒になる気になったなぁ」
「いやー、こっちまで嬉しくなっちまうなぁ。おめでとう」
村人たちからいろんな言葉が飛び交った。そして大きな拍手が沸き起こり、打ち上げの場は、いつしか結婚披露宴の様に変わっていた。二人は村人たちが作った丸い輪の中でかけられた音楽に合わせて楽しそうに踊った。そうなると、手伝いに来ていなかった村人たちも何事だということで集まってきて、盛大なパーティに変わった。その後、街から神父さんまでも駆けつけ、文字通り、あれよあれよという間に結婚式まで執り行われたのである。最高に幸せの瞬間だった。オンラインでつながっているパソコンの向こうから弟のヨウジがパーティの様子をみて拍手していた。
「兄貴、メリーさん、おめでとう。こうなるんじゃないかって思ってたよ」
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