音取り音源の正しい使い方
音源係というのは、新しい曲を練習するにあたって、その楽譜をDTMソフトで打ち込んで、各パートの音取り音源を作る係である。団員はその音源を聞いて各自音取りして練習に臨むことになる。
楽譜が読めない人は音取り音源が頼りなわけだが、楽譜を見ずに音取り音源だけ聞いて覚えてくるのはダメである。算数ドリルに例えるなら、答えを見て丸暗記してるだけ。書き写してすらいない。ただの数字の羅列を記憶してもなんの意味もない。それではいつまで経っても楽譜の読み方を覚えられるわけがない。
いや、楽譜が読めない状態で入団したなら最初は仕方がないが、なるべく早く楽譜の読み方の勉強をはじめるべきで、勉強をはじめたなら音源丸覚えはダメである。
楽譜の読み方の勉強をはじめたなら、まずは楽譜を読んでみて、音を想像してみて、あるいは実際にドレミで歌ってみて、それから答え合わせで音源を聞くのが正しい音源の使い方だと思う。
最初のうちはドレミを全部楽譜に書き込んでもいいだろう。時間がなくて曲全体はムリでも、とりあえず音源を聞いて自分のパートが主旋律になっている部分とか、部分的にでもいいので楽譜を読んでみるべきである。算数ドリルでいえばきちんと解いて答えを書いてから答え合わせをしている状態である。
もちろん、転調や臨時記号が大量に出てきて難しそうなところは最初のうちは丸覚えていい。そういうところは丸覚えでも難しいことが多いし、算数ドリルでいえば足し算・引き算の勉強中にいきなり掛け算が出てきたら、そりゃ解けませんわな。
楽譜が読めるようになったら、パート音源はすっ飛ばして全体音源を聴きながら楽譜を見るのがいいと思う。楽譜をまだ読めない人も、結局は全パート一緒に歌うのだから、仕上げとして全体音源を聞きながら歌って確認するとよい。
音取りの初期の段階で意識しておくといいのは、オクターブやユニゾンになっているパートの把握と、逆に「ぶつかっている」パートの把握である。これはパート音源では把握できない。
オクターブ・ユニゾンはきちっと揃っていないと他のパートが路頭に迷ってしまう。ぶつかっている部分を把握していないと、他のパートと合わせて歌った時にビビりがちである。これで正しいんだ、と自信を持って演奏できることが大切。
音源は音源係の中で確認を経てから配信されることになっている。私の場合、原譜を見ながら音源を聞いて確認する。速い曲とか、転調しているところとか、臨時記号バリバリとか、そういうのではない限り、だいたいパートごとに一回聞けば間違いはすぐに分かる。
この方が原譜と打ち込んだ楽譜をにらめっこして比べるよりもよっぽどはやくて正確である。楽譜を読める人というのはそういう世界にいる。算数ドリルでいうなら、暗算しながら解答を確認してる感じか。
そして、全体を聞くことでドの位置が判明するため、臨時記号だけで転調している部分の調性や、教会旋法のモードなどがはっきりする。
私ごときのレベルだと、初見の曲を全パート同時に聞いて確認はさすがに無理である。せいぜい簡単なdivisiまでだ。ピアノのコードも読むのに少し時間がかかる。転調前後や複雑な臨時記号はさすがに鍵盤で確認する。この辺が移動ドの限界かもしれない。