鍵盤とドレミと調号

音楽をやっている人はピアノを弾けるとまでいえなくても、だいたいはピアノのCの位置くらいは知ってることが多いだろう。やはり知っていた方が便利なので、知らない人はこの機会にぜひ覚えるといいだろう。

ピアノの鍵盤は白いのが手前、黒いのが奥に並んでいて、黒いのは山のように上に出っ張っている。ちなみにピアノ似にたチェンバロという楽器は白黒が逆である(見たことないけど)。

山、つまり黒い方は二つと三つに分かれている。どんぐりさんのおうちという歌にあるように、二つのお山の左手前がド(C)である。右手前はミ(E)に、三つのお山の左手前はファ(F)に、右手前はシ(H)になる。

右に行くほど音が高くなるので、二つのお山の左手前から白いのだけを順番に右に弾いていけばドレミファソラシドになる。つまり、黒い方はシャープやフラットに対応するわけだ。白いのを白鍵、黒いのを黒鍵という。

さて、ヘ長調を弾く場合、Hにフラットが付くから、F、つまり三つのお山の左手前から右へ向かって白いのを引いていき、ドレミ(F G A)と弾いたら、次はBを弾かなければならないから、黒い方を弾く。つまり、普通は調号の数だけ黒いのを弾くことになる。 

ピアノは鍵盤を押すとそれにつながっているハンマーと呼ばれる部品が弦を叩いて音が出る。もし、二つのお山の左手前が弦のFの位置に来るように鍵盤と弦の位置関係を変えると、このピアノは二つのお山の左手前からドレミファ…と白い方だけ弾けば、ヘ長調の音階を奏でてくれるわけだ。

鍵盤と弦の位置関係を変えるのは大変なので、もう少し楽にできないか考えると、三つのお山のどちらかを、二つのお山の方に移してしまえばいい。そのためには、たとえば三つのお山の右端の黒いの、つまりBを白鍵にしてしまい、その右下にあるHを黒鍵にしてしまえばいいだろう。

この先は鍵盤の絵を描きながら読んだ方がいい(電車の中で書いてるので、「お前が描けや💢」というのはなしで)。

この二つの鍵盤の白黒を入れ替えると、今まで三つだった山が二つ山になる。ドの位置は二つのお山の左手前なのであった。この位置は元々三つのお山の左手前だったのだから、Fだ。だからおそらくF durの音階が弾けるはずである。

ここから白いのだけを弾いていくと、Hは黒くなってしまったので弾かれず、代わりにBが弾かれることになる。これは、楽譜の上ではHにフラットが付いた状態である。Bは新しい鍵盤では三つのお山の左手前になってるので、これはファだ。つまり、元の調でシだった音にフラットが付き、その音が新しい調でファになるわけだ。これが楽譜に書かれた調号の一番右側のフラットがファになる理由でもある。

そして、この鍵盤の入れ替えは繰り返し続けることができる。そのたびに元の調でシだった音にフラットが付き、その音が新しい調でファになる。だから、フラットはファソラシ、と4度上の音に次々と付いていくことになり、音名を順番に書くと

H E A D G C F

になるわけだ。

お山の数を変える方法はもうひとつあって、三つのお山の左端をその左側の二つのお山の方に移してもいい。この場合はFを黒鍵に、Fisを白鍵に変えればいい。ド、つまり二つのお山の左手前の音はGの位置に動くからG durで、ここから白いのだけを弾くと、Fが弾かれずFisが弾かれることになる。つまり楽譜ではFにシャープが付いてFisになり、三つのお山の右手前になるので新しい調ではシになる。

これはやはり繰り返すことができ、元の調のファにシャープが付いてその音が新しい調のシになる。これが調号の一番右のシャープがシになる理由でもある。繰り返していくとシドレミファ、と5度ごとにシャープが付いていくので、音名を順番に並べると

F C G D A E H

になる。

順番がシャープとフラットで逆になるのは偶然ではない。フラットを付ける=三つのお山の右端を右側の二つのお山に移す、だった。この入れ替えで二つのお山の左側に黒いのが増えて三つのお山になっているが、この左端のお山を左に戻すとフラットが減ることになる。

これは三つのお山の左側を左の二つのお山に移している、と見ることもできる。この場合はシャープが増えるのであった。つまり、フラットをひとつ増やすのと、シャープをひとつ減らすのは同じ意味だということである。だから順序もちょうど逆になるのである。

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