楽譜は読めなければダメなのか?
楽譜が読めなければいけないかどうかは団の性質によると思う。
たとえば学校の校内合唱大会の場合。各クラスで1日に1時間、平日に1カ月練習するとすれば、本番までの練習時間は20時間だ。課題曲と自由曲が1曲ずつとして、1曲10時間で歌えるようになればいい。
楽譜は読めなくとも10時間全てを音取りに当てて、本番で8割くらいの生徒が歌えれば御の字なのではないか。生徒の中からひとりでもふたりでも音楽に興味を持つ人が出てくれば大成功といってよい。
コンクールには出るが、定期演奏会はないような部活動の場合、本番が8月ならば新入生が入ってきてから3カ月はあるので、平日に2時間練習するとして120時間くらい練習時間がある。この時間で課題曲と自由曲を1曲ずつならば1曲に60時間もかけることができる。
音だけを頼りに暗譜で歌い、その上でさらに完成度を高めるのに十分な時間だろう。しかも毎日2曲だけをひたすら歌うことになるので、忘れてしまうこともない。
定期演奏会があるような部になると、例えば1年間で20曲近くを歌えるようにならなければならない。平日1日2時間の練習なら480時間くらいだから、1曲24時間くらいである。
暗譜して完成度を上げるには十分な時間だが、毎日20曲を歌えるわけではないので、時間が空くと忘れてしまうことがある。だから、完全に楽譜は読めなくとも楽譜を見てある程度は音を思い出せるようになっておく必要がある。
これが社会人の団体になると、週1回3時間みたいな練習時間になる。1年は52週で、年末やお盆に練習がなければ150時間くらいしかない。毎週4時間練習しても200時間だ。20曲やると1曲にかけられる時間は7時間ないし10時間しかない。
クラス合唱レベルの練習時間で演奏会で披露できるレベルに仕上げなければならない。そのためには練習初期の時点で団員全員が当たり前のように音を取れていなければ無理だ。
しかも、1曲完成したら次の曲、という練習形態にならざるを得ず、半年以上歌わずに放置になることも多々ある。曲数も多いため、楽譜が読めなければ思い出すことはほぼムリで、もう一度音取りをやり直しということになれば色々と絶望的である。
こういう団体では団員全員が楽譜を読めるかどうかが演奏の質に確実に影響する。上を目指すならば楽譜は読めるようになっておくべきである。というか、お願いですから読めるようになってください…
誤解しないように一応書いておくと、楽譜は読めないけど合唱団で歌ってみたいという人を否定するものではない。最初は楽譜を読めなくても、例えば1ステージだけ乗るところからはじめて、徐々に楽譜を読めるようになればいい。
好きこそ物の上手なれ、で、本人にその気があれば普通は1年もあれば難しい楽譜でなければ読めるようになると思う。次の年は全ステージ乗るぞ! と思えば勉強にも身が入るだろう。